表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/38

奏の過去

誰も楓ちゃんを探さない。でも、珍しくお酒を飲んでる5人のメンズ。



「奏ー。酒だー!持って来い。」



「もう。蔵刃飲みすぎだよ?蒼たち寝ちゃったし。」



蔵刃もゴトッとテーブルに頭をぶつけて寝た。毛布をかけてあげてから、私は外に出た。


ゲェーッゲェーッ。



気味の悪い魔物の声が、森に響き渡る。こんな真夜中に一人で来るなんて、自殺行為だ。


敵に囲まれた。



「きなさいよ!楓ちゃんに会うまでは死ねないんだからー!」



最近獲得した釘を次々と魔物に投げた。急所を一発。刺さる瞬間はまだ見れない。



ギャー!と耳障りな声が聞こえる。



私は走ってそこを後にした。レベル20のバッジが空から降って来た。レベルがいくら上がっても嬉しくない。この生臭い返り血を浴びる回数が増えるだけだから。



「奏ちゃん。目をつぶっちゃだめだよ。」



「楓ちゃん良かったぁ!」



安心して楓ちゃんに抱きついてしまった。楓ちゃんのピンク色の髪が月明かりでベージュに見える。



「誰も…来てくれないと思った。」



「どうにか命がけで来たよ。」


湖の近くの岩場に座った。



「蔵刃が妹としてしか見てくれないって気付いてたの。」



「うん。」



「奏ちゃんが来た時の、蔵刃の熱をおびた目…奏ちゃんに恋をしたんだってすぐ分かったの。」



「それは、違うよ。」


楓ちゃんが不思議そうに私を見た。



「私ね、失恋したばっかでこっちの世界に来ちゃったんだ。」



「…そうなんだ。」



「相手が大和だよ?からかわれてただけなのに勝手に本気にしちゃった。」



「う…そ。大和って本気で奏ちゃんが好きだよ!」



「いもうと。」



「っ!」



「『お前は妹みたいに大事だ』ってフラれたんだぁ。」



冷たい夜風が私たちの間を吹き抜けた。



「ずるいよね。」



「でも今は、蒼がいるじゃない。」



「それは」



「奏!なにしてんねん!」



蒼が走って来た。



「楓ちゃんを迎えに来たんだよ。」



「急にいなくなるなや。心臓もたへんわ。」


「蒼…楓ちゃんの前でやめてよ。」



蒼に抱きしめられて、嬉しかったりする。安心して腰が抜けそう。


「私は先に戻るわ。お二人はごゆっくりー。」



楓ちゃんはウインクして、先に行ってしまった。



「私たちも…。」



「もう少し、ここにいようや。」



抱きしめられたまま、蒼の体温を感じた。



「甘えんぼだね。」



「何処にもいかんって約束してや?」



「でき」



蒼は私の言葉を吸い込むようなキスをした。青い髪と水色の瞳が夜に似合う。



「ほな、帰ろか。」



私の手をギュッと握りしめた。



大和の代わりとかじゃない。



「蒼が好きだよ。」



「ん。オレは大好きやで。」


蒼がいると心強くて、行きと帰りの道が全然違う道みたいに感じた。



妹とは呼ばせない。



そんな二人の女の子の恋。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ