オレ達付き合ってます
間違って『野性的な愛をあげる』に載せてしまった内容と変えました。
もしタイムトリップできるとしたら。過去の自分を見たくない。
もし異世界にトリップできたら。違う自分になりたい。意思が強くて、女の子らしくて、自分を持てる人。
だから、他の世界にトリップしたいと思ってた。
「そろそろ帰るで。」
幻想の世界での両想い。それとも、私の幻想の世界は元の世界になっちゃったのかな。私の手を握る蒼の手が温かくて、リアルすぎた。
「せっかくの両想いやし。同じ部屋で寝るか?」
悪戯っ子みたいに笑う蒼のエクボをつついた。
「なんや!?気にしとんねん。奏に触られるなら嬉しいわ。」
「いいなぁ。エクボかわいい。」
「可愛くはないねん。オレのはカッコええの。」
キリッとした顔で、言われたからちょっと笑っちゃった。
「何で笑うねん!」
「あははっ!もう一回キリッとして?」
「イーヤーや。オレのキメ顔は貴重やねーん。」
「あー拗ねてるでしょ?ほっぺた膨らんでるよ?うりうり。」
蒼のほっぺたの空気をつついて抜き出した。あんまりふざけ過ぎかなと思ってたら、蒼に手首を掴まれた。
「不安なんやろ?」
「蒼といたら、楽しいよ。」
「今哀しい目しとるんやで?」
蒼の手に指を絡め直した。
「私本当は、現実逃避ばっかしてたの。他の世界に行けば何かが変わるって思ってた。」
「間違っとったんかい。そう言われんのも複雑やな。」
「空気が綺麗だし。植物も新鮮。龍も魔王もいて、冒険だらけ。」
私は、ゆっくり歩き出した。蒼もつられて歩く。
「ぐちゃぐちゃ考えすぎやないん?」
「スランプかなぁ。」
「スランプ?」
この先どうしようってそればっかで、前に進めない。
「マジック教えよか?」
ポンっと何も持って無かった手から薄紫色の花をくれた。
「すごい綺麗な花!ありがとう!」
「こうやって、髪にさしてみいや。」
髪と言うより耳にかけてくれた。
「でもすぐ枯れちゃうよ。だから、嫌い。」
「花を見た時は素直やったやん。似合うで?オレのセンスばっちしやな!」
確かに、悲しい事や嫌な事をすぐ嫌いって言う癖がある。苦手な事も苦しい事もすぐ投げ出してた。
もっと真面目に授業受けたら良かった。
本当は苦手な人とも話したかった。
もう。できないんだ。
ばったり楓ちゃんと蔵刃と会った。
「見つかったんかいな。楓あんま心配かけんなや。」
「本当に心配してた?奏とお手て繋いじゃって何してたんだか。」
「楓!二人にもあやまれ。」
「いいよ。楓ちゃんが無事で良かった。」
私がいなかったらみんなにチヤホヤされてるはずだもんね。
「奏ちゃん蔵刃が好きなんじゃないの?」
「楓行くぞ。」
まだ繋いだままの手をはなしたら、蔵刃が好きって言ってる気がしてギュッと蒼の手を握った。
「違う。楓ちゃんと蔵刃の邪魔しないよ。お似合いな二人が羨ましいだけ。」
「もうええ。あんま奏をいじめるなや。楓でも許さへんで。」
蔵刃の腕にしがみつく楓ちゃん。妹キャラに変わってるし。
「蔵刃はな、楓を妹としか思えへんのや。」
私にだけ聞こえる声で蒼が呟くように言った。
「でも本人が楓ちゃんを好きって…。」
「あいつは自分にはいつも鈍感なんや。奏は渡さへんけどな。」
「二人がリアルな兄妹ならちょっと禁断の愛だね!」
「禁断やないで。籍も入れられるし。そっちの世界は無理なん?」
古代エジプトか!衝撃的すぎて声が出なかった。
「せやから、奏と兄妹でも結婚できんねん。」
蒼が私の手の甲にキスをした。
「私の世界で願う人たくさんいそう。血縁の血が混ざるの良くないんじゃないの?」
「オレらの世界では、魔法があるの忘れとるな?」
私の服の色を濃い青に変えた。ディズネィーのお姫様みたい。
やっとアジトに到着した。蔵刃と楓ちゃんは先に着いたみたい。
「さすがに朝から魔物は出なかったね。」
「残念や!ええトコ見せたかったのに!」
レディーファーストとか言いながら、蒼がドアを開けてくれた。瞬間、大和が蒼を突き飛ばし私に抱きついて来た。
「俺のそーうー!どこ行ってた?変な事されてないか?ん?」
「大和より変な事する人いないよ。」
「姉ちゃん、結局そうなったのか。安全策だね。」
私の青い服を眺めて李里が意味ありげに言い放つ。
「せやから、今日から奏と付き合う事になったわ。邪魔せんといてや?特に大和は要注意や。」
「認めねぇよ。俺のプリンセスは、奏だからな!」
「大和先輩サムいっす。」
「良かったね!ねー蔵刃!」
「…。」
斬兎に伝えてない事に誰も気付いてなかったらしい。
次の日。
「二人で手を繋いで何してるんですか!?」
「オレら昨日から付き合うとんねん。」
頬染める奏。
「聞いてません!恋愛禁止です!」
寂しい斬兎くんだった。




