26th 妹のエレミナ
地面まで降り切ると、その不思議な風景に目を奪われる。
そこら中に派手な色の絵が描かれており、ところどころに扉の絵がある。
そして描かれた絵は全て動くアニメーション絵となっていた。
「面白いけど、家が見当たらないわよ?」
「何か凄くいい匂いがする」
「エレミナが料理してるのかな。こっちだよ」
「え? そっち壁じゃない」
「扉があるだろ?」
そういうと、描かれた扉を開けて中に入るエレット。
若干動いており、少し入り辛そうにしている。
その扉の先は広い空間となっているが、上空も地上も機械がせわしなく動いていた。
外とは大違いである。
「……ただいま。母さん」
機械がぴたりと止まり、レグアに向けてこう言った。
「おかえりエレット。帰ってきてくれて、ありがとう」
「おかあ……さん?」
「……」
「ごめん。聞いちゃまずかったよね」
「いいんだ。これが母さんの声が聴ける、唯一の方法だから」
「いい声ね」
「ありがとう。さぁ、エレミナの許へ行こう。姉ちゃん、また少し変えた?」
「やっぱ気づいちゃうかぁ、エレットは」
「言わなくてもあてるよ……ここかな。こうだろう、きっと」
床に手を置き部分的に何かを押しているように見える。
しばらくすると、部屋の構造が変わっていき、せわしなく動く機械たちも忽然と姿を消した。
「カモフラージュ装置よ。実際あったのは、お母さんの声を発する装置だけなの」
「なぜあんな風に造ったの?」
「母親の声がする場所。それが一番、家っぽいでしょ?」
「確かにそうね……そこまでしてでも大事な家を守っていきたいのね」
「そうね。お母さんが何よりも守りたかったのは家族だから。でも、私が……」
「姉ちゃん! それ以上言ったら許さないぞ!」
「ごめん、エレット。二人とも今のは忘れて」
珍しく怒気を荒げたエレット。余程の事があったのだろうと、フラーはそれ以上何も聞かない
ようにした。
カモフラージュが解けた先にはこじんまりとした小さな家が二つあるだけだった。
扉を開けるとすぐ小さな女の子がエレットへ飛びついてくる。
「兄ちゃ! やっと戻って来た! 遅い!」
「ごめんエレミナ。お客さんがいるんだ。ちゃんと挨拶して」
エレットの手を残念そうに放して、小さいスカートの端をつかみ、軽く頭を下げて挨拶する。
十分訓練された動きだ。そしてにっこりと微笑んだ。
「エレミナです! 今年で七歳! 兄ちゃはエレミナのお婿さんだよ!」
「えっ? なかなかにませた子供だけど、エレットにそっくりね……このちょっとふてぶてしい
顔が……」
「凄く小さい。そして綺麗な目。サラサラな髪」
「うちの妹、かーわいいでしょう? あげないわよ? エレミナ、ごはんまだかしら?」
「姉ちゃ。出来てる。いっぱい」
「いい子ね。本当にヘッツの扱いがうまくて将来が恐ろしい子よ。これは父親譲りの
能力かしらね」
「おや、お客さんかい?」
「エレンジュ婆ちゃん、ただいま。ああ、仲間だよ。これから地球へ向かう途中、ちょっと
厄介な事件があって」
「そうかい。ゆっくりしていくんだよ。うちのバカ息子はどうしたんだい?」
「父さんは後処理するって。父さんの事だから直ぐ戻って来るだろうけど」
「孫たちは優秀なのにねぇ……ああエレット。後で部屋にきておくれ。渡すものがある」
「うん? ああ、わかったよ婆ちゃん。さ、二人ともまずは中でくつろいでくれ」
建物の中に入ると、エレミナに少しきつい目で見られるフラーとレグア。
兄は渡さない! という決意の表れのような目だが、兄に手をわしっとつかまれ
部屋の方へと引きずられていく。
「兄ちゃ、どっちの女狙いなの?」
「ん? 何言ってるんだエレミナ。二人は大切な仲間だぞ」
「もー、兄ちゃは相変わらずおこちゃまなんだから」
「現在進行形でおこちゃまなエレミナが言うなよ……悪かったな。それより今日の飯何だ?」
「えっへへー。エレミナ特製オムラーイス!」
「おお! 本当か!? やったー!」
「あれ、どう見てもシスコンに見えるわ」
「シスコンって何。敵なの」
「そ、そうね。敵みたいなものかしらね」
「やっつければいい」
「……それができない敵だから厄介なのよねぇ。いやいや、私には関係ないけど!」
後を追うフラーとレグア。レグアは楽しそうに笑う二人を、じっと見ていた。




