184th 新しい小型艦を購入
「マスター。予定通りパープラー様カラ療養の許可が下りマシタ」
「ああ。何かメッセージに付け加えとかあった?」
「ハイ。しっかリ励むようニ。それモ隊長とシテ必要なコトだそうデス」
セイソーに依頼してパープラー隊長へ療養の許可をとってもらったが、隊長としても気がかりだったようだ。
第三種危険生命体での活動に落ち度があったのは間違いない。
我々はマテリアラーズの中でも重要な役割を担う特殊部隊。
加入させたばかりの新メンバーが命の危険にあれば、それは隊長責任だ。
あの時の隊長は俺だが、無理やりやらせたのはパープラー隊長。
思うところはあるのだろう。
「それトもうヒトツ、通信がありマス。お聞きになりマスカ?」
「ああ、隊長のだろ?」
「デハ、再生シマス」
「ちょっとぉ―――! エレットのバカバカバカバカバカー! ニッキーを置いてくってどういうつもりなの! 絶対許さないんだか……」
「切ってくれ……」
「承知しまシタ」
帰ったら酷い目に合わせられるな。
いや、連れて行かなくてよかった。ニッキーを改造されたら権力者の親に指名手配される。
「そんじゃ惑星、ピポットへ向けて出発しようか……と言いたいが、その前にパインが搭乗するなら乗ってきた小型艇じゃ人員オーバーだろ?」
「そうでスネ。こちらハ自動操縦で送り返しテ、新シイ商品を買いマセンカ? マスターのお金、かなり貯まっていますノデ!」
「せっかく月まで来てるし、そうするか。マテリアラーズ公用ショップに移動しよう」
「パイエオン様。認識阻害はありマスガ、登録証明を行いマショウ。エラー検出されると困りマス」
「私の認識阻害は完璧ですが、それでも認証完治される場所が施設内にあるのですか?」
「ハイ。間違いナク。空気中にいル微生物ノ付着度合いヲ検知シテ無差別に取り除きマス。その結果人型トシテ判断サレタ場合、非登録者は自動的ニ抹殺されマス。検討違いデあってモデス」
「非本体検知システム、マイクロオーガニズムブロックキラーAK。通称MOBさ。マテリアラーズ以外採用不可。仮に国の諜報部員が潜入して抹殺されても文句言えないどころか、多額の賠償請求をされる仕組みだよ」
「科学者としては少し試してみたくなりますね。レグアさんにぴったりと張り付いて、衣類ごと摺り寄せてみるとか」
「無駄だな。それならレグアごと射殺される。人道的判断のプログラムが介入されてないんだ。思考停止っていえば分かりやすいだろ?」
「そうですか、残念です。意向に従います」
「偽造登録といってモ、エレヴィン様から預かってイル本物のマテリアラーズ隊員データに基づクものデスから、心配いりマセン。データベースへ行きまショウ」
月面にあるマテリアラーズの利用拠点はいくつもあるが、そのうちの一つ。
最新の軍用モデルを扱う店【コンバットマテリア】。
多くのマテリアラーズ隊員が集う場所だが、この隣には小さなデータベーススペースがある。
そこでパインの偽登録を済ませてから、コンバットマテリアに入っていく。
ワンフロア目はセキュリティ部屋で何もないが、兵器がいくつも置いてある。
それらの周りにマテリアラーズ隊員が何人かいるが、こちらは気にしていない。
「んー、この空気感久しぶり。早く済ませて療養地に行きましょ」
「ああ。何階だ?」
「十七階ニ軍用小型宇宙艦が売ってイマス。マスター。宇宙艦はお任せシマス。セイソーは物資ノ補給、調達に行ってキマス」
「ああ。分かった」
「セイソーさん。お供しますね」
「ハイ。一緒ニ行きまショウ」
セイソーはパインと共に別の階へ。俺はフラーとレグアを連れて十七階に向かった。
ここは無人でロボット管理が基本。
直ぐに案内されて身分証明を受けると、五、六人乗り用の宇宙艦売り場へ案内される。
「コチラナドイカガデショウ」
「青色のポッド型か。うーん」
「それだと少し狭くない?」
「エレットの隣に乗れない」
「そこはいいでしょ! どうせ長く乗るわけじゃないのよ」
「いざというときに守れる方がいい」
「ソレデハ、スペースプレーン型デイカガデスカ?」
スペースプレーン型はいわゆる飛行機型のことだ。
軍用では最もポピュラーで値段も一番安い。
「これがいい」
レグアが指さしたのは旧型だが、足を延ばして寝そべられる円盤型のものだ。
一時期流行っていたが、登場時間の短さゆえに速度重視の昨今ではあまり見かけなくなった。
「円盤型は私も好きかも。これなら最大八人まで乗れるしね」
「値段も安いな。これにしよう。支払いはいつも通りで」
「アリガトウゴザイマス。オプションハイカガイタシマスカ?」
「ああ、そうだな……イートメーカープロ、ある?」
「ゴザイマス。付属サセテオキマスネ。スグ整備ガマイリマス」
こっちの買い物は終了。しばらくしてセイソーたちも降りて来たの。
宇宙艦購入はその日のうちに乗って帰れる。
発進は最上階からだ。あとは最上階で待機すればいい。
――最上階へ移動すると、半刻ほどで宇宙艦が運ばれてくる。
「座標は大丈夫か?」
「入力済みデス。この宇宙艦、イイデスネ。セイソーも気に入りマシタ。コンタクトがスムーズデス」
「惑星、ピポットってどんなところなの?」
「行けば分かるさ。実際体感してみる方が、聞くより何倍もいい。出発だ!」
引っ張った―!
新しい惑星は次回!