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183th 月の応援者

 レグアの足の治療を終え、片足が義足となった。

 義足といっても文明の進化は著しい。実際は生身の足と外見も機能も変わらない。

 過去の人体は非常にもろく儚い構造だったようだが、現人類は平均値の能力は高い。

 西暦二千年㈹前半における人々の寿命は長くても百歳だったが、本来人間が持つ生存能力のみで考えるなら三百歳ほど。

 月における平均寿命としては百五十歳だが、必要となる体を交換する者は多くいる。

 特に臓器関連は補強デバイスが多く出回っており、遺伝子適合率を確認するのが容易だ。

 既に移植ではなく簡易的に交換出来る仕組みが備わっており、不調であれば皆交換していくのが当たり前。

 ただ、体の構造が異なる生物も多く、遺伝子適合においてサンプルが無ければ新しいデバイスを用意できず、出来たとしても非常に高額となる。

 俺自身は肉体そのものがトップシークレットであり、パイエオンの行為自体は許されない部類に入るのだが……パインとなった以上、パイエオンは死んだに等しい扱いだろうな。

 後のことは港さんに任せると言っていたし、上手く対応する方法があるのだろう。

 そう考えていると、レグアがむくりと起き上がった。

 裸なのでそちらは見ていない。


「レグア。体の調子はどうだ?」

「もう十分歩ける。でも、今まで感じなかった痛みがある。どうしてそっぽを向いているの」

「パイン。いい加減レグアに服を」

「セイソーさん、そろそろ完了しますか?」

「はい。マスターの好む衣類型武装、さすがの発案デスネ」

「私、裸。エレットが脱がしたのね」

「違う。パイエオン……いや、パインだ」

「ふあー。よっく寝たー……あ、レグア。お早う」

「フラー。フラーはどうして寝ていたの」

「私? 私どうしてたんだっけ? ……キャーーーー!」


 ……レグアは異常、フラーは正常な女子の反応だ。

 レグアはセイソーから装備を受け取り身に着けると、体を確認するように長い足を折り曲げてみせる。

 パインは背後からレグアの体全体をくまなく触っていく。

 フラーはカプセル内に隠れた。


「これはあくまで代価品ですね。体のラインを強調していきましょう。せっかく抜群のスタイルですから、何よりも強力な男性悩殺破壊兵器になるはずですよ。うーん、私もこういったボディに換装すべきですね。さぁ次はフラーさんの番です」

「ちょちょ、ちょっとなんで裸のままなのよ! レグアと同じように……というかエレットそこにいるわよね? 出てけーー!」

「お、おい。港さんもいるんだぞ」

「はっはっは。私には男性の生殖機能はありませんよ。研究の邪魔となるものは排除してあります」

「それでも、男は出ていけーー!」


 周りの者を破壊しそうなので、港さんと俺はパイエオンをスクリーンに映した部屋へと戻る。

 そこには椅子はテーブルなどがあり、好きな飲食が出来るカフェスペースもあったので、そちらで少し空腹を紛らわすことにした。


「これ、最新のイートメーカープロ? 高性能そうだな」

「月には人類の知恵を総結集した最新物がいち早く搬入されますからね。メイドインアースでないのが残念です。マテリアラーズのリボーンアース計画は我々も期待しています」

「俺も早く見てみたいよ。地球が再び人が住めるようになるところをさ。徐々にマテリアルは集まりつつあるんだけど、難易度SSクラスはなかなか集まらないね」

「他の惑星にとっても貴重な資源となり得るものですからね。未知なる元素より既存のレア元素……例えばイリジウムなんかを見つける方が大変ですよ」

「そうだよな。鉱物採取を行ったときもそう感じたよ。鉄なんかは発見しやすいけどね」

「私もマテリアラーズに志願したことがありましたよ。ただ、単純に知識がある科学者というだけでは不合格でした。他の惑星、危険ですか?」

「惑星が危険っていうより危険な思考を持った生物と戦わないといけないからかな。港さんなら入れてもおかしくないと思うけど、選考次第じゃないか?」

「それもあるかもしれません。いえ、希望が月で活動するマテリアラーズ所属だから……かもしれませんね。臆病なんですよ、とってもね。エレットさんのように宇宙を旅して活動するより、その情報を通信を通してみているだけでも満足出来ると近年感じています。更なるご活躍を、通信を通して応援しています」

「有難う。地球を戻せるように頑張ってみるよ」

「お聞きしていいか分かりませんが、次のご予定は?」

「ああ。良質な素材のある惑星を確認したところでレグアの治療に移ったんだ。本部に連絡を送った後しばらくは自由行動になると思う。少し療養施設のある惑星、ピポットに行こうと思ってるんだ」

「それは素晴らしい。月からはかなり離れますね……ピポットには知人がおりましてね。もし彰・中山という者に会ったらよろしく伝えておいて下さい」

「彰・中山だね。分かった」


 港さんと会話をしていると、パイン、レグア、フラーの三名が派手な衣装を着たままやってくる。

 フラーは顔面真っ赤でレグアは相変わらず無表情に近いが、少し微笑んでいるように見える。

 パインは慢心の笑顔だ。

 全員で最新式調理器から提供される軽食を取り、この後の予定などを伝えると、施設を後にする。


「もう! なんでこんな派手な服しかないのよ。信じらんない!」

「可愛いと思うけど」

「これはアンドロイド用スーツの最新試作品に似せました。セイソーさんとの初コラボ作品です。身体機能向上、誘惑機能向上、ヒップライン向上、バストライン向上、その他……向上!」

「本っ当にこのイカレ科学者ついてくるわけ? パープラー隊長が許すと思えないんだけど?」

「……だから、見えないんだって。つまり外の人々の眼には俺とセイソー。派手な恰好をした二人しか見えてない」


 そういうとギロリとパインを睨みつけ、さらに真っ赤になるフラー。


「私とレグアだけこんな恥ずかしい思いしてるの、許せないわ! この女も剝いてやる! どうせ見えないんでしょぉーー!」

次の目的地は惑星ピポット。新たな装備換装、脳デバイスによる駆動は次回か、その次あたりにでも。

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