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182th 再難解手術終了

「再難解手術を無事完了しました。エレット。聞こえますか?」


 パイエオンにそう呼びかけられるより前に目が覚めていた。

 手術は百%成功と聞いていた。俺の片足は別の足であると直ぐに感覚で分かる。

 ……これがパイエオンの能力か。

 

「新しい足コアデバイスはいかがですか」

「驚いた。並列処理出来る人工脳だが、フィードバック処理は全て足の脳によるものか」

「はい。並列でコアを一つ。最新のものです。私がそばにいれば新たな処理技術が生まれれば直ぐに移植可能です」

「パイエオンの五か所……両手首、両足首、首の個所も同じか」

「その通りです。レグアさんの移植手術により、こちらの問題も解決しました」

「それは本当ですか、パイエオン?」


 と、この声は港さんか。まだカプセルに入れられたままだから起き上がれない。


「はい。港。あなたが彼らを連れてきてくれたお陰で、解決出来る確率は七十二%もありました。それにしても驚きました。実は五つの並列処理脳を移植して以降、この部屋までしか活動範囲がありませんでした。レグアさんのデバイスにより、脳制御が格段に向上しました。どのような信号でやり取りしているか解析中ですが、膨大な量なので時間がかかります」


 少し興奮気味に話すパイエオン。

 声しか聞こえないが自分にも何か移植を施したのか。

 

「さぁ。彼女の様子も確認しましょう。あなたの足が十分馴染んだはずですよ」

「少しだけ気持ち悪い。麻酔が切れたか」

「免疫機構適合率百%。気持ち悪いのは臓器の影響です。港。お水を」

「ゆっくり起き上がって下さい。二十二時間経過していますからね。栄養剤は入れましたが、空腹になるでしょう」

「有難う、港さん。パイエオンの状態を見れば分かるといっていたが、部屋から動けなかったんですね」

「そうなんです。四つめの移植までは問題が無かった。五つ目を首に移植するのは反対でしたが、パイエオンですからね。止めても無駄でしたよ」

「科学者として未知の行動に挑む覚悟無く、進展はありえません。エレットさん。足の使い方はレグアさんと一緒に。彼女はこちらです」


 ゆっくりと起き上がり水を一飲みすると、気分が落ち着いてきた。

 口当たりがまろやかだ。本当にただの水か? 

 起き上がって体を確かめる……前に裸だったので、港さんに白衣を着せてもらった。

 自分の隣にあるカプセル前まで行くと、カプセルがゆっくりと開いた。

 慌てて後ろを向く。


「レグアも裸じゃないか……」

「当然です。なぜ後ろを向くのですか? あなたの足移植のお陰で成功した個所をよく見てください」

「あのな。レグアは女性だろ。そんなところまじまじと見れるか!」

「これは成人男性が持つ特有の反応と推定。エレットさんもそういった反応をするのですね。その機構は人為的に抑えられていると推定されましたが、少々修正が必要ですね。ふむ……実に面白いです」

「面白がってる場合か! フラーはどうしたんだ? 部屋にはいないようだけど」

「それが、フラーさんも同じようにしろと言われまして。移植しました。特に必要無いとは思ったのですが、こちらも成人女性特有の反応が……」

「うわー、聞きたくない、聞きたくない! なんでそんなことになってるんだ……」


 起き上がった場所にもう一個カプセルがあっておかしいと思った。

 パイエオンに手をつかまれて、そのカプセル前に行くと、やっぱり裸。

 いい加減にしてくれ。


「セイソー。助けてくれ」

「マスター。昨日はお楽しみでしタネ」

「何も楽しんでないから! レグアたちの意識がないようだけど、これからしばらくパイエオンが同行しないといけないんだろ?」

「しばらく? いえ、生涯お供します」

「はぁ?」

「港。こちらは全て任せます。エレヴィンさんの息子の下であるなら、一番安全かもしれません」

「そうですね。伝えておきましょう。パイエオンの役目、果たしておきます」

「ではエレットさん。私に新たな名前を。セイソーさんのような素敵な名前をお願いします。これによりパイエオンの好感度が決まります。最低でも二十……いえ、三十は好感度を上げて下さい」

「なんの話をしているかさっぱり分からないんだが。それに俺はマテリアラーズ所属だ。パイエオンを引き込んだなんて言ったら、パープラー隊長に何を言われるか……」

「問題ありません。私が認識阻害されていることをお忘れですか?」

「そうだった……これじゃ背後霊を手に入れた気分だ。つまり呼び名はゴーストか? だが日本人なんだよな」

「……好感度、三。現在好感度三です。自爆起動確立五十二%……」

「うわ! それ冗談じゃないだろ! 今のは無し、無しだ……はぁ。パイエオンって言葉から大きくずれない方がいいか。パイン……でどうだ?」

「好感度上昇。好感度上昇。好感度五十二と推定……名前を呼ばれたら微笑むを獲得しました」

「マスター。やりマスネ。いい名前デス。セイソーは少し嫉妬しまシタ」

「それでパイン。レグアたちはいつ目が覚めるんだ?」

「これから目覚めさせます。ん……」 


 するとパイエオンは長い髪を後ろに流して首から複数の機械を飛び出させて、レグアの体をいじり始めた。

「肉体検証。推定。バスト、九十二、ウエスト、四十九、ヒップ、九十二……」

「あんたは一体何を計測してるんだ」

「エレットさん。レグアさんはもう、攻撃が通じない究極の生命体ではありません。強いのは間違いなく強いでしょうが、ウイルス耐性を持つ代わりに全てをゼロで返す存在ではありません。分かりますね」

「ああ。一を加える遺伝子を入れたんだろう」

「はい。そのためバストもヒップも一増えました」

「それを計ってたのかよ! はぁ……」

「次。フラージュさん。バスト八十一、ウエスト四十六、ヒップ八十。控え目です」

「セイソー。もう帰っていいか?」

「マスター。貴重なデータです。セイソーのメモリーに保存しておきマシタ」

「セイソーさん。これからはこのパインとデータ共有をお願いしますね。最先端のベアリングでしっかりサポートいたしましょう」

「承知しまシタ。パイン様」


 こうして新たな仲間が増えたのはいいのだが、パインは少し頭を悩ませるような存在だと記憶しておいた。

 

若干問題がありそうな最強の医学者パインが仲間になりました。

しかし……肝心な足がどうなったのかちっとも教えてくれませんでした。

次回に期待! 

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