175th 三か所の予測地点
小型機をゆっくり発進させたが、鱗粉に包まれるようなことはなかった。
そもそもこの場所へは鱗粉に包まれてゆっくり下へ落ちていったらしい。
天井部分にもびっしりと鱗粉があり、人面蝶のようなものがその天井付近を徘徊してい
るのがみえる。
しかし、一度興味を失ったためか襲って来る気配は全くしない。
「マスター。やはりあれは人型を襲ってしまう生命体のようデス。既に人格などは失われているかと思いマス」
「恐ろしいな。多分元々は女性……か」
「そうだと思われマス。対象を変異させる寄生型のタイプでショウカ」
「あの状況だけみてもよく分からないな。そもそもは人型の生命体何だろう?」
「そうデスネ。遺伝子構造はレブラ様と同じでショウカラ、ほぼ人間と同一でショウ」
「だとすると、全員ああなる可能性があるってことか。治す方法はあると思うか?」
「脳にまで侵食した場合は手がつけられマセン。つまりあの個体は厳しいかと思いマス」
「急いで地上へ戻ろう。フルバーストの許可は下りてるから、最悪の場合使用するぞ」
「星にも影響が出るかもしれマセン。よろしいのデスカ?」
「レグアたちが危険なら、それもやむなしだ」
「承知しまシタ。まもなく地上デス」
小型機で鱗粉の天井を突き抜けると、レグアたちの姿は見当たらなかった。
更に上昇を続け、上空より周囲を観察。
何時の間にか地面は一変して鱗粉の地面へと変貌している。
荷物を受け取った現地人も見当たらない。
この鱗粉地面自体が罠だったと考えるか、想定外の事態が起こっているかどちらかだろう。
まずは仁さんたちに連絡を送信……出来そうだ。
あの鱗粉に飲まれていなければ通信が遮断されることはなさそうで、ひとまずは安心だ。
「レグア様の反応を補足。三人共無事のようデス」
「方角は?」
「北へかなり移動した場所デス。そちらも仁様へお伝えしておきマシタ」
「一体何が起こっているか。そっちの把握が先だろうけど、どうしたものかな」
「救助は仁様にお任せシテ、環境把握を試みるのは如何でショウ?」
「そうだな。仁さんなら上手くやってくれそうだ。この鱗粉自体、誰かが操作していると思うか?」
「ハイ。間違いなくそのはずデス。意図的に操作しなければあのタイミングで鱗粉に飲まれることは
あり得ないかと思いマス」
「セイソー。操縦は任せる。機械を外すぞ」
「承知しまシタ。何時でも装着出来るようにしておいてくだサイ」
「分かった……よし」
機械を外し上空で待機することしばらく。
鱗粉が徐々にせりあがって来るのを目視出来る。
やはり生態に対して何かしらの反応を示しているのだろう。
ついには上空に到達するまで鱗粉が差し迫って来た。
「どうだセイソー。出どころの反応は分かったか?」
「マスター。機械装着して大丈夫デス。三か所の予測地点を発見しまシタ。そのうち最も
怪しい場所へ突撃しマス。おつかまりクダサイ」
徐々に迫り来る鱗粉が、まるで手でつかむかのように形を変えて小型機へ襲い掛かる。
それらを巧みな操縦で回避していくセイソー。
その間に機械を装着すると、鱗粉の勢いは徐々に収まり地面へと戻っていく。
一体どういう仕組みなんだろうか。
鱗粉に覆われた地面の場所から移動して、池のある場所まで出ると、セイソーは池に向
けて小型機を進ませた。
「地上の生物とみせかけて水中生物だったのか!?」
「イエ。この中に空洞があるようデス。その先に目的のものがあるようデス」
進ませた。