170th システム・エラー
「システム時空より艦長へ。敵機、撤退を開始しました。追撃しますか?」
「しなくていい。誘導の可能性もある」
「回避不能の射撃がきます。衝撃に備えてください」
「何!?」
ドーンという衝撃……は来なかったが、攻撃を食らったようだ。
一体どこから……。
「システム時空より艦長へ。味方の一機が故障。制御不能のようです。
通信を繋げます」
「ちょっとー! ちっともいう事聞かなくなったわ! どうなってるの、これー!
助けてー!」
「おい大丈夫かフラー?」
「ボロ。システム、故障。フラー、故障。ボロ」
「ルシールがおかしくなったのか。レグア。武装解除させてやってくれ。ニッキーもだ」
「ダメ。同じ力だから抑えているのがやっと」
「む。エレット。ミシーハ博士を止めるんだ。アルバで出るつもりだぞ」
「姉ちゃんが? 姉ちゃんダメだって。まだCCがいるかもしれないだろ!?」
「大丈夫よ。それにMサンディバイドが暴走したらちょっとまずいから。
調整ミスったかなー。やっぱり私オリジナルじゃないとエラーが出やすいわね」
「システム時空より艦長へ。アルバクロトビ、強制発進します」
「はぁ……これは厳罰ものだね。仕方ない。フラーの救出及び機体の確保を急がせるんだ」
「艦長からの命令。速やかにMサンディバイド四機を回収。その後ただちに帰還せよ」
「行ってくるわね、エレットーー!」
……やっぱり姉ちゃんが来るとやばい。
それにしても……「システム時空より艦長へ。アルバクロトビ、無事宙域に出て
Mサンディバイドの回収へ向かいました」
「ああ、見てるよ……本当に巨大だな……Mサンディバイドの何倍あるんだろう」
「エレット。もう少しMサンディバイドに接近する……回収後直ぐにアクシズバリエーション
で目的地付近へ移動するぞ」
「パープラー隊長。ニッキーまで出撃させてしまいすみません」
「いや。その時正しいと思う最善の判断をするのが艦長の務めだ。
君たちはまだ訓練を行っていないに等しい。それなら仲のいい四人で行動させるべきと
考えたのだろう?」
「はい……仁さんはアオアシラと仲があまり良くないので。他のメンバーは三人と行動を
共にしていませんしね」
「ならそれでいい。油断をすればこちらの命が奪われる」
「はい……」
「システム時空より艦長へ。Mサンディバイド一機の部分解体に成功」
「部分解体?」
映し出された映像を見ると……フラーの搭乗している両手、両足部分がアルバクロトビに
よりもぎ取られていた。胴体部分をわしづかみにして、それを持ったアルバクロトビがこちら
を目指している。
両手両足はレグアたちが抱えて追従していた。
いや、まったく追いついていない。
速さも段違いにアルバの方が早い。
「……恐ろしい戦力を我々は摘んでいるのかもしれないな」
「そうですね。Mサンディバイドだって、姉ちゃんが考案した最新機動兵器だろうに……」
――アッシェンMに全員戻るのを確認し、一息ついたところで状況報告を済ませる。
敵艦は間違いなくCC。指名手配中の艦を含む四隻中、三隻を撃沈。
うち一隻は逃走を確認した。
「一機、ステルス機体がいたわ。月で見たのと同じタイプよ」
「腕を分離させられた。あの動き、見覚えがある」
「無事でよかった。Mサンディバイドの乗り心地は?」
「悪くないわ。でも練習しないと上手く使いこなせそうにない」
「やっぱ接近戦タイプは強いですねぇ……遠距離攻撃は難しいですぅ……」
「仕事前に一波乱あったけど、本来の任務に集中しよう。目指すは隔離指定
された惑星ミーストールだ」