168th AN十式、S八式
惑星ギンギール宇宙域周辺。
四隻が航行するその場所では、機動兵器の実験が行われていた。
「各隊、状況報告せよ」
「悪くないですね、隊長。敏捷性、随分向上してますよ。宇宙漂流物が多いから
的にも困らない。悪くない訓練場です」
「相変わらず真面目だねぇ、隊長は。エカルラート司令に書類をまとめて直接提出出るから、張り
切ってるのか? 性能訓練でこんな場所まで……ついでに補給もしてくつもりか、ここで」
「補給? 略奪の間違いじゃないのかルーブラ」
「……君たち、喋り過ぎだねぇ。よそ見して怪我しても、おじさん知らないよ」
「ハイネズミの傭兵が。俺たちに指図するな!」
「はいはい。おじさんとしてはお金がもらえればそれで十分だよ」
【各機に次ぐ。敵機と思われる大型戦艦が接近中! 繰り返す。敵機と思われる大型戦艦が接近中!】
「おいおい冗談だろ。ただの訓練中だってのに」
「いいじゃねえか。戦闘データが欲しいんだろ。実践の方がいいデータが取れる。
このAN十式の性能、確かめてみようじゃねーか」
「ラングウェイ、ルーブラ。それ以上無駄口を叩くな。ヴィンナー、着いてこい!」
「ちっ。S式に乗る臆病者が」
「ふん。性能の違いを教えてやるよ」
「性能ねえ……戦場じゃ臆病な位がちょうどいいんだよ。坊やたち」
「なんだと!」
「貴様、後で覚えていろよ……」
「はいはい。後があればね……いやな予感がするねえ……」
宇宙域における、隊長機を含むその四機は、それぞれの戦艦より出動している
機動兵器であり、隊長機、AN十式アルファを含むAN十式シリーズと、ヴィンナーが操縦する
ステルス機体Sシリーズの改良されたS八式の合計四機。
ANシリーズは薄い白色の機体を維持しており、製造されている場所は、惑星シドーの
ある違法メーカーによる製作チーム。
だがここ数日の間に取り締まられ、既にANシリーズはCCにより独自に研究開発が
進められていた。
元々Sシリーズを開発していたCCのチームにより、性能はSシリーズ寄りとはなっているが
ビームアックスなどの出力向上を含め、より戦闘特化型の性能となっている。
【補足した敵機は所属不明、照合データ無し。機体形状推測……照合無し】
「まじかよ。どこの惑星の最新鋭艦だ? まさか未知エリアの宇宙兵器か?」
「いや。どう考えてもマテリアラーズだろう。あんなもの考えるの宇宙中探しても
ミシーハ博士に決まってるぜ。こりゃあ手に入れれば二階級特進どころじゃないぜ」
「……参ったねえ。やっこさん、どう見ても戦闘用最新戦艦だ。この四隻じゃ勝ち目は無いか……
まぁ攻撃はしてみるつもりだがね……」
「おいハイネズミのおっさん。あんたが先頭切ってみたらどうだ?」
「おお、いい案だぜルーブラ。隊長! ここは一つ傭兵のお手並み拝見といきましょうや!」
「待て……戦艦から何か出てくる……あれは……機動兵器? 新手の機動兵器四機を補足!
攻撃の意思があると推定。至急応援を!」
「何だあの機体!? 赤色で統一された機体だと? おい、あんなのマテリアラーズにあるか?」
「見た事無いぜ。最新鋭か? こりゃあ、やばいかもな」
「いいだろう。おじさんが先手を切ってやる。坊やたちはそこで少し見てな」
「ヴィンナー! 仕方ない、許可する。出来る限り捕縛を試みろ! 直ぐに援軍が来る!」
「……無茶を言ってくれる。どう考えても不可能だろう」