163th 装備換装の仕組み
座り込んで話す俺と仁さん。ヘッツの機能を説明しておかないと。
「まず、ヘッツには素材を収納出来る容量が決まってるんだ。これをエルメデルの
眼って呼ぶんだけど」
「エルメデルの眼? この小さいボディー部分にそんな場所があるのか」
「ある。物体を物体そのものの大きさとして捉えるんじゃなくて、粒子単位に換算して収納する
方式」
「つまり、破壊して収納するのか?」
「いや、破壊とは違う。捕獲したものをそのまま収納したり、素材そのものを収納したりする。
そのまま解析鑑定出来るんだ。ダールダーラの角を持ってきてるか?」
「ああ。この大きさならしまえるのか?」
「もっと大きくてもしまえる。さすがにアッシェンMをしまえっていうのは難しいけど」
「難しい? 出来ないわけじゃないのか?」
「この質量ならオーバーしちゃうから、ただのヘッツじゃ無理だろうね。オルクスのような
規模なら、或いは出来ちゃうのかも」
「そんなでかいヘッツもいるのか……」
「盗まれちゃったけどね。搭乗型兵器オルクス。あのサイズのヘッツなら、どれほどの
物が収容出来るか想像もつかない。やばいのだけはわかる」
「そうか……トウヤ。試しにこれ、閉まってみてくれ」
「了解っす。これだけじゃ何も出来ないっすけど」
仁は所持していたダールダーラの角をトウヤに渡すと、しまうところをまじまじと
見ていた。
すると、渡した物質が掻き消えるようにして、素早く消滅していく。
「こんな仕組み、どうやって考え付いたんだ」
「さぁ。姉ちゃんの頭はネジが大量に外れているって他の博士たちが言ってるし。
俺にもさっぱりだよ」
「お前の姉には合格と言われた。俺にはヘッツを扱う資格が一応あるのかもしれない」
「姉ちゃんのその合格は、見た目の話だと思うんだよなー……何せ面食いだと
自負しているから」
「よくわからないが、有難く使わせてもらう。それで装備換装というのはどうすればいい?」
「セイソー。仁用に基本素材をトウヤへ渡してやってくれ。後で再補充がいるけど」
「承知しまシタ。こちらデス」
次々とトウヤに渡していくセイソー。
一通りの素材を渡すと、先ほど話していた堅甲格闘士の素材が揃う。
「必須装備、堅甲格闘士をトウヤにお願いしてみてくれるか?」
「……必須装備、堅甲格闘士……」
「了解っす! 、メインウェポン、生産惑星シドー、硬尖拳ジェネレートナックルっす。
機動ユニット、脚部、ブレイクネック社製、アンエクスプレインド未解明年製。シャダリングペースっす!
サブウェポン……オリジナル、ダールダーラのショルダークラッシュっす!」
装備換装した仁さんは驚いている。自分の体形に合わせて調節を自動でしてくれる上、装備も
自動で装着させられる。
はるか昔にはそれに近いようなアニメなどが、地球で流行っていたらしい。
戦隊モノ? とかいうジャンルで、叫ぶと少し恥ずかしい恰好に変身していたようだ。
これは変身とは違うので、装備部分以外は人のままだ。
「どうだ? 動けそうか?」
「試してみる」
仁さんはゆっくりと体を動かし始め、馴染むかどうかを確認する。
初めてにしてはいい動きだ。これなら実践形式で試してみる方がいいかな。
「仁さん。実戦形式でやってみようか。トレーニングルームへ行こう」
「相手になってくれるのか。お前と対峙するのは初めてだったな」
「艦長よりシステム時空へ。仁さんと俺をトレーニングルームへ」
「現在使用中ですが、構いませんか?」
「あれ、誰か使ってる? まぁ順番待てばいいか。頼むよ」
時空にお願いして、姉ちゃんがいるドッグを後にし、俺たちはトレーニングルーム
へと向かった。
機動水刃士じゃなく、他のにしておく方がいいよな……。