160th 女子会の暴走
素材を手に入れた俺たち。仁さんは早速それを持って加工してもらいたいようで、アッシェン
Mへ戻るという。
俺は補給物資を受け取らないといけないし、レグアたちを待ってから行くと伝え、先に戻って
もらった。
仁さんとはもう少し交流を深めないといけない。
「セイソー。仁さんってヘッツ作ってもらえるのかなー」
「難しいかもしれまセン。ミシーハ博士は可愛い女の子好きですカラ。後はマスター好きデス」
「うーん。いい加減弟離れしてほしい。そういえばエレミナに連絡取ってないけど、そろそろ
怒る頃だよな」
「お怒りのメッセージが数件溜まっておりマス。マスターは多忙と返信してありマス」
「げっ。いつも悪いなセイソー……さて、まずはレグアたちを探すか」
「どちらに向かったんでショウ? 皆さん大変グルメですカラネ……遠くまで行って
いなければいいのデスガ……」
「シェラハたちもいたから平気じゃないか? フラーあたりがきっと喧嘩を……」
と思ってたら、案の定遠くから喧嘩してる声が聞こえる。
姉ちゃん。あの人格は個性が強すぎると思うんだよ。
シェラリルやシェラノールみたいに可愛い感じの方がよかったんじゃないかなー。
でも、レグアだと、シェラハっぽい方が相性がいいのか。
ブレーキをかけてくれそうだし。
――騒がしい場所まで行くと、別に争っているわけではなかった。
そして、結果的に俺は、向かわなければよかったと後悔した。
「おーい、そろそろ戻る支度しないと。一体何の話してるんだ?」
「あ! 当事者がきましたよ!」
「エレットって本当にタイミング悪く登場するよねぇ。ニッキーいっつもそう思うなぁ」
「エレット。私残しておいたの、食べて」
「話をそらすんじゃないわよ! だいたいね。この中で一番スタイルがいいのはどう見ても
私じゃないの!」
「そうかしらね。私の主人を務める事を許したレグアが一番スタイルがいいわ。
もう少し胸筋を鍛える事ね。幾らスーツで盛ってもヘッツである私にはわかるわ」
「何ですって!? ルシール! やってしまいなさい!」
「ボロ。フラー様の胸囲は八十。決して小さくはありません。ボロ」
「ニッキー、そんなにない……」
「落ち込まないでくださいニッキーさん……」
「この中で一番胸囲があるあなたが言えば傷つくだけよ。アオアシラさん」
「もう帰るなすよ。艦長こまってるなす」
ヒートアップしているので、俺は無言でその場を離れようとしたが、フラーにつかまれた。
やばい……。
「いいわ。エレットに決めてもらいましょ。この中で一番スタイルがいいのは誰?」
「そんな爆弾を俺に投げるのはやめろ! セイソー、助けてくれ」
「マスターの回答を検討……どの回答でも爆発するという回答がでまシタ」
「じゃあノーコメントだ! 俺は回答しない!」
「はぁ!? この中にスタイルがいい女なんていないって言いたいわけ!」
セイソーの言う通りだった! どんな回答でも爆発した!
「そうじゃないって。ほら、もう戻らないと。そろそろ補給物資の確認も終わってるだろうし。
待たせたら悪いだろ?」
「でも、まだ森を探索してない」
「あっちにパン屋があるんでしょー? ニッキーパンも食べたいな」
「それなら土産で買ってあるから。アンネさんからの事前連絡も入るかもしれないし」
「ごまかさないで。さぁ答えてもらうわ!」
……こうなったらフラーはてこでも動かない。
困った……そうだ、こういう時はいい方法があった。
「俺一人で決めるのはよくない。幸い艦内部には沢山人がいる。
四人のうちだれが一番スタイルがいいかこの際はっきりしよう。
艦に着いたら全員呼ぶから」
「いいわ。そうしましょう。見てなさいよシェラハ」
「あら。私はただ正確に分析しただけよ。あなたとは違って。
八十、五十八、八十じゃ、ぎりぎりってところかしらね」
「くっ。ヘッツだからって正確に数値を分析して……それくらいルシールにだって
出来るわ!」
「はぁ……こりゃシェラハとフラーが組む任務は鬼門だな。パープラー隊長にも伝えておこう……」
どっと疲れたがひとまず落ち着かせて戻る支度をする。
喧嘩するなとは言わないが、もう少し恥ずかしくない喧嘩内容にして欲しい……というと
とても怒られる。
それ程女性にとってスタイルというのは大事なのだろうけど。
俺としては装備を自由に動かせる万全な体系であればいいんじゃないのかと思った。
そうだ。新しい装備形態を戻ったら練習しよう。
どの程度装備が充実できるか……セイソーと確かめ合いながら準備をしておかないと。
――町長さんから荷物を受け取ると、再びドレイクさんがホバーの場所まで送ってくれる
らしい。
「今回は補給で寄っただけで直ぐに帰っちゃうんだろうけど、また近いうちに遊びにおいでー。
この惑星を見て回りたいだろうー?」
「ああ。ありがとうドレイクさん! 絶対また来るよ。銀色の雪原のような場所をホバーで
走るの、楽しいし」
「そうだろー。あれはギンギールの命の源。舞い上がって元に戻る習性があるんだよー」
「あれ、生物だったんですか!?」
「意思の無い生物だー。危険な物じゃないし、勝手に元の場所に戻るからねー」
「少し持って帰ろうと思ってたけど、残念だわ……」
「浅はかね。もう少し思慮深く行動し……」
「ストーップシェラハ!」
慌ててシェラハの喋りを遮る。ドレイクさんの上で喧嘩されたら大変だよ。
行きは喋らなかったのに。フラーに慣れてきた証拠なのか?
そういえば悪気があってそういう言い方をしてるわけじゃないんだっけ。
これに……慣れてもらうしかない。
フラーで、慣れるのかなー……。