159th マチュマチュノマーテ
コッペパ……ポーピルを頂いた店を後にして、仁さんと隣の隣の店に入る。
マチュマチュのマーテって何だろう? と思っていた。
お店の中に入ってすぐ……ずらりと並んだはく製コレクションのような
動物の模型? のような物が展示されている。
どれもこの星の生命体だろうか?
牙が長すぎて地面に突き刺さっている謎の生物や、どうみても布という感じの
肌のような部分がふわりとしている生物が吊るされていたりもする。
「凄い数だ……」
「いらっしゃーい。人間さーん」
「……? 仁さん何か言った?」
「いや。その吊るされてる奴だ」
「え?」
さっき見た布っぽい吊るされている変な奴を見ると……布っぽいヒラヒラ部分がめくれて
中から大きな……昆虫のような物が見えた。
「ようこそー、マチュマチュのマーテへ。お探し物は何かなー」
「武器になりそうな素材が欲しい」
「ふーん。武器かぁ。人間は武器が無いと戦えないもんねー」
「そうだ。素手では斬る事も叶わない。ただ叩いてももろい」
「不便だけど頭いいからねー。いいよー。見て行ってー」
「マスター。ここにはAランク相当の素材があるようデス。貴重デス」
「本当か? でも高いんじゃないか。いや、物々交換か」
「そうだよー。お金貰ってもしょうがないよー。この星じゃ材料になるだけだよー」
「金貨なら金の材料になるけど、金は喜ばれないのか?」
「いらないよー。森に合わないでしょー?」
「それは、そうだな。森に金があっても喜ぶのは人間くらいか。何が好ましい?」
「うーん。寝心地のいい草のベッド」
「……セイソー。あるか?」
「ありまセンヨ、マスター」
「後は、違う星の奴が持ってきた布のおいらがすっぽり入りそうなやつ」
天井に吊るされていた布のような中から地面にぽとりと落ちるそれは、甲殻類の
虫そのもの。すっぽり入るって……。
「それ、寝袋だよな、きっと。セイソー、持ってるか?」
「ありまセン。今ある物デスト、食料品、シルク布、アルバメデスの
鉱石、瓶、月のお菓子、マスターの着替え、ミシーハ博士の着替え、それカラ」
「ちょっと待った。何でセイソーが姉ちゃんの着替え持ってきてるの?」
「おー、白い布だー。それ、それ欲しい」
店主は姉ちゃんの白衣を見て、それを要求してきた。
……なぜセイソーに預けたんだ姉ちゃん。まぁいいや。新しいの上げるからこれを
使わせてもらおう。
「おい。さっき言ってたAランク素材ってのはこれじゃないのか」
店主に白衣を渡していると、仁さんが奥の方から一本のごつい角を持ってきた。
「……間違いありまセン。それデス。かなりの硬度を持っているようデス」
「ダールダーラの角だねー。イイモノだよー、それー。この布の方がもっといいけどー」
「じゃあ交換してもらっていい?」
「いいよー。他にも欲しいのがあればー、もう一つ持って行っていいよー」
「やった! 俺も選ばせてもらおう。仁さんはそれでいい?」
「……いいのか? 貴重な物なんだろ?」
「構わないって。どうせ俺たち同じチームだし」
「そうか。有難くもらっておこう。借りは返す」
もう一つ、セイソーに選んでもらう。
すると――「マスターはこれにするべきデス」
「んーと、バージアスの鱗? どういう生物なんだ?」
「バージアスは歩きながら毒を噴き出す四足歩行の生命体だよー。
鱗の表皮は毒抜きしてあってー、あらゆる毒に強い素材なんだー」
「そんな恐ろしい生命体がいるのか……」
「この星にじゃないよー。違う惑星。交換した品だけど、それでもいいよー」
「それじゃ遠慮なくもらっていく。機会があればまた来るよ」
「うーん。布、ありがとー」
「ところで、マチュマチュってどういう意味なんだ? あんたはマーテさん?」
「そう。おいらはマーテ。マチュマチュっていうのはねー。おーい」
……聞くんじゃなかった。物陰から一斉に小さいマーテさんのような虫が出てきた。
「あ、ああ。この小さいのがマチュマチュね……ははは。お仕事の邪魔して悪かった」
「いーえー。いいもの交換、ありがとー。またねー」
ここに女性陣が来る事はないだろう。
さて、いい素材も手に入った。武器と防具に加工するのは
直ぐには難しいだろうし、仁さんはヘッツも持ってない。
後で姉ちゃんに聞いてみるとして、まずはレグアたちを探すか。