147th パワーアップした専用艦【アッシェンM改】
出発一日前となった。それまでの間ゆっくりと休みが取れ、セイソーの補充なども十分すんだ。
セイソーに素材を保存しておく拡張バックパックがあるのだが、こちらをミシーハ博士が改造してくれたおかげで、さらに容量を詰め込めるようになっていたようだ。これで新しい形態装備も可能だろう。
現在は専用艦が置いてあるドッグへ向かう通路だ。
ここアルバメデスの秘密基地で、俺たちは活動を続けている。
俺とレグアとニッキーの分かれての行動に、フラーもカンカンだったようで、こっぴどく文句を言われた。
……仕方がないだろう。任務なんだし。フラーはこういう時理不尽だな。
レグアなら気にしないだろうに。
今、そのフラーをようやくなだめ終わったところだ。
「ふんだ。エレットが遊んでる間に私なんかアルバの調整ばっちりなんだからね」
「っていってもアルバは乗せていけないだろ? 今回の任務に」
「はぁ? 何言ってるのよ。乗せてって現地で試験するって聞いたわよ。
もう積み込んじゃったんだから」
「積み込んだ? あんなバカでかいアルバをアッシェンMに搬入したら壊れちゃうだろう」
「もうとっくにアッシェンM・改になってるわよ」
「へ? まだろくに活動もしてない艦なのにもう改造したの?」
「ええ。ミシーハ博士がね。ちゃちゃっとやっちゃったわ」
「はぁ……姉ちゃんなら出来るだろうけど、勝手だなぁ。ジョーゴンたちはどうしてる?」
「相変わらず元気にしてるわ。従順になったわね。ミシーハ博士を尊敬してるみたいだし」
「まぁ、姉ちゃんはとんでもないからな……他のみんなはどうした?」
「さぁ? レグアはトレーニングじゃないかしら。ニッキーとね」
「あの二人、仲良くなれてよかったよ」
「だからずるいんじゃないの! 私だって行きたかったわよ!」
「やべ、蒸し返した。悪いけどちょっと先に専用艦まで行ってくる」
「ちょっと待ちなさいよ! まだ話は……」
怒り始めたフラーを置いて、駆け足でドッグまで向かった。
どれくらい改造したんだろう。そこまで日時があったわけじゃないだろうけど、作業員はそれなりにいるしな……。
「うわ……これ、本当に飛ぶのか……」
見上げる程巨大になったアッシェンM。
これなら昔アニメで有名だった某機動兵器も乗せられるんじゃなかろうか。
入り口を探そうとしていたら……後ろから首をがっつり絞められた。
「ぐぎぎぎぎ……苦し」
「もーうエレットったら。どこいってたのよ。お姉ちゃんを置き去りにしないで」
「んなこといっても、俺は仕事……苦し」
「もう。大げさね。そんなにきつくしめてないでしょ? それとも私の腕が太ったとでもいいたいの?」
「違うって! その服の腕のとこがきついんだよ! げほっ、げほっ」
「あら、これね。ふふふふ、最新式のグローブよ。耐熱、耐寒、耐衝、耐電を可能にしたミラクルモデル!
ミシーハ特製何でも耐性防護機構。その名も……守る君よ!」
「それ、名前だけで買わない人出ちゃうんじゃないかな」
「えー。いいじゃない。守る君、私を守って! って女子受けを狙ったんだけど」
「それならまだAIロボの守る君に守ってもらった方がよくない?」
「あっ……」
姉ちゃんは造る方の天才だ。だが売る方を考える力は酷い。
手助けをしないと大体酷い感じだ。
バカと天才は紙一重とよく言うが、これはバカの部類なのだろうか。
「ところで、アルバを今回連れて行くって聞いたんだけど、本当なのか」
「ええ。連れて行くアルバは一体だけ。フラーのものよ。あなたたちのはアルバとの接触回数が低い。
本当はゆっくり実験したいんだけどね。それは帰って来てからのお楽しみかな」
「フラーに随分先を越されちゃったな。しかしいいのかな? 第三種危険生命体がいる場所なんだろう?」
「ええそうね。私も行くから」
「……今何て言ったの、姉ちゃん」
「だから、私も行くんだって。その星に。私以外アルバを整備できないもの。当然じゃない?」
「当然じゃないことを当然のように言わないでくれ。頭が痛くなってきたな……」