135th ガルーシアとギフレン
地下室から通信を開始するカルビオ。
こちらに許可などは取らず、俺自身を見下しているようにみえる。
というのも、ガウスに渡された変装セットを身に着けているせいで、どうみてもさえないおじさんだ。
最初のやつもそうだが、一見したらバカにした態度をとるのは当然だろう。
それほど外見というのは判断材料になりやすい。
しかし本当に裏をみるやつなら外見に惑わされることはない。
「そうだ。許可はもらったから入ってこい」
「呼ぶのはガルーシアとギフレンていう二人だけだろう?」
「今通話中だ。少し待ってくれ……ああ、そうだ。よし、いいぞ。
待たせたな。直ぐにくる。ところでお子さんと奥さんはどちらに?」
「二階だが? それが何か」
「いや別にね。取引金額で揉めて声が漏れると驚くだろう?」
「揉める? 別に揉めるつもりはないぜ」
「ほう? こっちのいい値で引き取っていいのか」
「いい値? 値段なんてつけるっていったか?」
「どういうことだ。金で買うんだろう」
「金で買うなんてガウスにも伝えてないぜ……どうやら来たようだな。
随分と荒々しく扉をぶちあけられたもんだ」
「おい動くな。そのまま手を挙げろ」
こちらに銃口を向けながら大柄な男が二人入ってくる。
一人は覆面、一人は頬に傷のある四角い顔の男。
片方はこの辺の惑星のやつじゃないな。
銃口を向けてる男はやり手だ。いつでも発砲出来る姿勢のまま
突入してきた。だが角度が悪いだろう。俺はカルビオの後ろにいる。
「おい! 俺に銃口を向けるんじゃない!」
「何言ってんだてめぇ。てめぇの命なんざどーだっていいんだよ。
バカが」
「なっ……なんだと! 誰のお陰で取引できると思ってやがる!」
ばぁーんという銃声の音が響き、どさりとカルビオが倒れる。
「いぎゃああーーーーーー!」
「うるせえってんだろうが。何俺様に上からもの言ってやがる、小汚ぇじじいが」
腕を綺麗にぶちぬいた。致命傷じゃないが生身ならたまらないだろう。
「ゆっくり例のものを出しな。妙な真似はするなよ。おめえの家で
このじじいが死ねば、疑いはおめえにかかるだろう。
そのブツさえ渡せば俺たちは何もせず大人しくどこかへいく。
悪い話じゃねえだろ」
「悪い話だな。まずお前らの頭が悪い」
「んだと、てめぇ……俺様が引き金を引かないと……なんだ?」
「ガルーシア。上だ!」
ちっ。四角頭の男は気づいたか。
天井を突き破りレットちゃんとニッキィが男二人の真上を崩して地下へと下りてくる。
そのままレットちゃんの回し蹴りでガルーシアと呼ばれた男の銃は弾き飛ぶ。
ニッキィはすかさず四角男の顔面へ拳を叩き込み、後方へ大きく吹き飛ばした。
「いいタイミングだ。こいつ秒で銃の引き金引いてたな。
こらえ性の無い野郎だ」
「弱い、襲い」
「ぐっ。なんだこの女、強……」
レットちゃんが休みなしに回し蹴りを連打し、ガルーシアも後方へ大きく吹き飛ばす。
そして、用意していた丸い玉を二人に投げつけた。
「が、これは……く……そ……」
「ふ……か」
「超こう粘着性捕縛玉。呼吸だけはできるらしいから、よかったな、しななくて」
「そっちの汚いじじいはどーするの?」
「どれ……なんだ、弾丸系の銃じゃなく閃熱系の銃だな。
後腐れなく逃げるつもりだったか。おいカルビだっけか。
お前にはまだやってもらうことがある」
「ぎひいいいい、それより、医者へ、死んじまう。頼む! このとおりだ!」
「黙れ。こいつらを始末する後続を呼ぶ予定だろ。手口はわかってるんだよ。
レットちゃん。ガルーシアってやつがもってた銃をこっちへ」
「はい」
「ひいいいいいーー。頼む、命ばかりは、助けてくれ!」
「お前の命が助かるかどうかはこの後次第だ。外で待機してるやつらを
今すぐ通信で建物内へ呼べ」
「わ、わかった……俺だ。直ぐに建物内へ突入しろ!」
「よし……ジェフさん、聞こえたか。手筈通りに頼むよ」
上空が急に騒がしくなる。
こいつらはヘリで荷物を奪い、直ぐに空中からとんずらするつもり。
だがそのヘリを四囲みでヘリが囲い、逃げ道を封鎖する。
「な……ヘリだと? 一体何がどうなってる」
「はいご苦労さん。あんたのヘリ、売り払っていいかな。
ついでにこの家も買ってくれよ。めちゃくちゃにしたの、あんただしさ。
あ、でもあんたに財産は残らないか。悪だくみは全部露呈するし。
サテライトで焼かれなかっただけ、よかったな」
「ば、ばかな……なぜわかった。一体何者だ貴様ぁ!」
カルビオが突如暴れてつっかかってこようとするのを蹴りあげる。
伸びて動かなくなったところに先ほどの捕縛玉を投げつけた。
「マテリアラーズ出張担当の……怖いヨーンだ。
これで任務完了……か?」
「ガウスに報酬を払わないといけない」
「めんどくさいからさぁ、帰っちゃえばぁ?」
「そうもいかないだろ。あいつ裏の事情に相当詳しいだろうし、今後も
CCの動きを知るのに協力してもらえるかもしれない。
オルクス……取り換えしたいしな」
「なぁに? オルクスって」
「まぁその話はおいおいだな。ジェフさんに報告しよう」