133th カルビオとCCを捕まえる段取り
ガウスと約束をした俺たちは、先に換金をするよう促される。
どうやらこの賭博場のオーナーは、俺たちの盛り上げを大層気に入っており、VIP会員にした
上で一度全部のチップを巻き上げ、再度下で盛り上げさせようとしていたらしい。
ガウスの取引相手となった以上下手な事ができなくなり、無事大量の金貨へと替える事が出来た。
だが、この金貨の使い道は、暗躍するCCとカルビオを捕まえる事に利用することとなった。
「あーあ。それだけあればお気に入りの服、買って届けられるのになぁ」
「ニッキィはそもそも自分の両親に買ってもらえば済む話だろ?」
「もう無理だよぉ。連絡取ったら居場所ばれちゃうでしょぉ!」
「別にばれてもアルバメデスには戻れないぞ……にしてもこれだけの金貨だと
重たいな」
「そのお金、結局どうするのぉ?」
「ガウスが取引用のヘリを買えって言ってたな。それで半分は無くなる。
後は諸々……殆ど残らないかもな」
「そんなに使うのぉ!? 凄い金貨量なのに」
「随分と警戒心が強い相手だ。無理もない。地下室付きの家も買う必要がある。
この辺はガウスが手配してくれるみたいだけど」
「家……三人で暮らす家になるの」
「設定だとそうなるな。偶然手に入れた核を処分したいが困っているという顧客を装い、それを
ガウスの下っ端ずてに手配してもらったという設定になる。
ジェフさんには連絡済みで、その家近辺に精鋭を手配。相手が地下室に入ったら上を抑えてもらう」
「逃げ道なしだね。うまくいくかなぁ?」
「ニッキィが上手く子供役を演じてくれればうまくいくんじゃないか?」
「なんでニッキィが子供役なの! ニッキィがお母さん役でしょぉ!」
「どうみてもレットちゃんが子供役は無理があるだろう……」
「私は子供でもいい」
「ほらぁ!」
「ダメだって。我慢して子供役を演じてくれ。ええと名前は……」
ガウスが残していったメモ書きをみる。
Eシティ二番通りの六。
夫の名前はモーテ・ナーイ。
妻の名前はオー・メガーミ。
子供の名前はオジョー・サーン。
「……今からでも戻ってあいつ引っぱたいてきてもいいか? なんで子供とファミリーネームが別なんだ」
「同感! 名前がオジョー・サーンて何よぉ! 絶対おかしいじゃない! それに何でレットちゃんだけ
女神なのぉ!?」
「オー・メガーミが私の名前なのね」
「さすがレットちゃん。無反応だ……仕方ない。俺たちもレットちゃんを見習うとしよう」
「ニッキィの名前、オジョー……」
「私の名前はオーね」
「俺の名前はモーテ……これって変じゃないか?」
「すっごく変」
どうせ登録まで済ませてるだろうから、今更ガウスにどうこういっても無駄だろう。
まずは指定された場所へ向かう事を優先する。
向かった先は賭博場があったエリアとは大違いの住宅街。
その中でも高層ビルが並ぶような住宅街ではなく、落ち着いた雰囲気の民家街だ。
こんな場所で危険な取引が行われるとは想像もつかないような場所。
だからこそねらい目なのかもしれない。
「こんな一角に地下室つきの一軒家なんてあるもんなんだな」
「惑星シドーは地震とかも多いから、結構地下室を持ってる家はあるみたいだよぉ?」
「地震か。月だと地震は全然なかったな。地球は凄い頻度で地震が起こる惑星だったみたいだけど」
「自転する惑星で地震が起こらない惑星なんてないよぉ! でも今の建築技術なら、地下室なんて
作らなくても平気だけどねぇ……」
「そうすると、使用用途は限定的になるよな。それこそ……」
「着いたみたい。あれかな」
レットちゃんが指さす建物は、どう見ても新築の一軒家だ。
まずは建物の中を確認し、計画を実行に移そう。