131th 悪の組織と接触
女性に取引を持ち掛け話を聞くと、商業界隈の重鎮と思われる社名と名前の者ばかりのようだった。
ニッキィが知ってる者も多くいるようで、彼らは名前を伏せていない。
悪事を働く賭博というなら伏せる可能性もあるが、まっとうな取引現場としても
使われるのだろう。
だが……「この会社、この人とかは知らない、こっちも、こっちも……結構いるね」
「取引内容まではわからないのか?」
「……申し訳ありません。これ以上は」
「そうか。俺たちも騒ぎを起こしたくてきてるんじゃない。いい取引相手がいたら
その方が高値で取引できるだろうし、それこそこのチップを換金する以上の利益が出る」
「でしたらガウス様が一番お取引相手に相応しいかもしれません。お客様は現在支配人が
取引相手と連絡をとっているようなのですが、連絡がつかないとのことで……」
「ガウス? そいつはこの中にいるのぉ?」
「はい。奥の青色のスーツを着て女性と話している方がそうです」
遠目に見て、やり手のビジネスマン風の男だとわかる。
ニッキィに聞いても知らないというし、この星のものじゃない可能性もある。
社名も聞いた事が無い。
「もしそちらで商談をなさるようでしたら、今回の事は……」
「いいだろう。そっちも商売なんだろうしな」
といってもここでこれらの取引を行う奴がいる事が確定すれば、ここは取り壊しだろう。
……というよりほぼ間違いなくここにいるはずだ。
先ほどの話だと、紹介したとあれば関わりがあるのがばれてしまう。
だからこそ、紹介ではなく、自分たちで行けと仕向けられたか……。
「どのみち考えてる時間はない。行こう」
女性と熱烈に話してる男の前に立つ。
黒髪細身の鋭い目つきの男だ。
身なりがよく、スーツも特注品だろうか。
いかにもやり手といったオーラが出ている。
「何か? 今大事なお話をしていましてね。忙しいので後にしてもらえませんか? ……おや。
美しい花を二凛もお持ちのようで。ですが私は一凛の花を愛でるので一杯です。
シャリナ。君の事だよ」
「まぁお上手ですわね。ですが何度も申しますように、わたくしとあなたではそのような関係は
築けませんわ。ちょうどよかった。あなたたち、この男性を引き取って頂けると助かるのだけれど」
「なっ? ……君たちのせいでシャリナとの会話が途切れてしまったじゃないか。
どう落とし前つけて……美しい。お嬢さん、お名前は」
レットちゃんに近づき全身を見る男。
こいつは……色ボケしているようだ。
「それ以上近づかないで」
「ええもちろんですとも。この距離でもあなたの美しさを十分に堪能できますからね。どうせなら
ソファに腰をかけ、ゆっくり話し合いましょう」
「よかったね紫電。話をしてくれるって。私とニッキィは食事をとりにいってくるから」
「また? さっき食べたばかりだろ?」
「いいのいいの。細かい話は男同士、仲良くね? ニッキィを無視したお・じ・さ・ん!」
俺と取り残された青スーツの男。
暫く沈黙が流れる。
「おいどうなっている! なぜ私が男と二人きりにならねばならんのだ!」
「お前、多分バカだよな……まぁいい。それよりこいつの取引をお前なら請け負ってくれるかもと
聞いてきたんだが……ええと、ガウスだったか」
「なぜ俺の名前を知ってる。お前何者だ? アポなしで取引だと?」
「ちょっと訳アリでね。俺の名前は怖いヨーンだ」
「ふざけてるのか? 何が怖いヨーンだ! 話になら……」
ちらりと取引用の偽核を見せると、男はぴたりと止まり、こちらを凝視した。
「……そいつをどこで手に入れた」
「それを聞いてどうするつもりだ? まず応じるつもりなら、段取りがあるだろう」
「くっ……取引に応じよう。ここじゃまずいよな。商談中は各部屋で
絶対安心の条件で行うルールだった」
「お、おう。その通りだ。場所とかは任せてやる」
「条件が一つある。俺は男と密室で二人きりになる趣味はない。先ほどの美しい女性が戻ってきたら
商談開始だ」
「……いいだろう」
危ない。全然知らなかったがノリでうまく流せた。
それにしても……女好きの奴だな……。