128th 恐ろしき動体視力
「私、やめるわ」
「え?」
「無理よ。あなたに権利を譲る。だからそのチップのうち半分をもらえない?」
「わかった」
「なんとーー! 釘紅スリー選手。チップ十万枚で権利を譲渡! これはつまり、尻尾ワン選手の
権利が三つに!」
「うひょーーー! これもしかしてジャックポットいけるんじゃね?」
「ジャックポット、ジャックポット、ジャックポット!」
「おーしーずーかーにーー! 会場がこれだけ盛り上がった以上、認めないわけにはいきません!
権利の譲渡を認めます! それでは尻尾ワン選手! うん?」
「いい? ジャックをねらうんだよ? あの変な顔のやつ。わかるでしょ?」
「わかった。あれね」
「その後は七を狙え。それできっとうまくいく」
「わかった。やってみるね」
「そろそろよろしいでしょうか? それではリールを!」
先ほどと同じくリールが回転する。
が……明らかにさっきより速い! 再び会場にどよめきが走る。
「おいおいさっきよりリール早くないか?」
「卑怯だぞー!」
「お静かに! 既に集中されていますのでお静かにー!」
回転するリールが明らかに早い。だが……レットちゃんにそんなことは関係なかった。
ジャックポットの絵柄をあっという間に七個までそろえてしまう。
そして最後の一コマ。全員が見据えている中……ぴたりと八コマ目が揃う。
【woh You're crazy! jackpot!】
全てのジャックが揃うと、リールが勝手に動き出す。
百カウントと表示され、どんどん絵柄が止まり、払い出しゲージがどんどんと上がっていく。
最後の百個目が止まった時点で……総合計獲得チップの枚数が表示された。
「い、一億二千五百七十二万六千七百枚……です……」
『うおおおーー! すげーーぜ! ここ潰れるんじゃねえか?」
「惜しい。七がもう一個揃ってたら跳ね上がってたぜ」
「すげーもの見れたわ。今日ほどテンションあがった日はないわー!」
会場からの大歓声、そして……全員期待するもう一回。
レットちゃんは俺の指示した通り、見事に七を揃えて見せた。
七が八個揃う。これもまた破壊力抜群。
「い、一億枚追加……ああ、なんということだ。信じられない」
「合計二億二千五百七十二万六千七百枚ね。あんた、凄いわねぇ。チップ十万じゃ安すぎたかしらね。ふふふ」
「これって、金貨二百万枚越えってことか?」
「そうじゃなぁい? まぁまぁなお金だね」
「まぁまぁって……ニッキィの会社からするとまぁまぁなのか……」
「尻尾ワン選手には奥でチップの受け渡しをいたします。それでは奥に……」
「二人も一緒じゃないと嫌。無理ならここへ持ってきて」
「わかりました。それではお二人もどうぞ奥へ……」
司会に案内されて奥へ進むとき、釘紅スリー選手に呼び止められた。
「あなたたち、後で少し話をしたいのだけれど、時間取れる?」
「え? 俺はいいけど、レットちゃんはどうだ?」
「構わない。うまくいったのあなたのお陰だし」
「うふふ、素直な子は嫌いじゃないわ。それじゃまた後で……ね」
ようやく潜入できそうだ。明らかに司会の顔色が悪い。
にしてもレットちゃんは本当に凄いな……。