114th ある男の足取り
「つつ……くそ、何にぶつかったんだ? 頭がいてぇ……畜生、今日は厄日だぜ……」
男は頭をなでながら、どこか怪我をしていないか確かめるように裾を払う。
開いた倉庫の隙間から風が吹いており、中へ風を通している。
「くそ。飛んだ無駄足で踏んだり蹴ったりだぜ……ん? ありゃあ……」
男が目にしたのは風で壁に貼り付いている布。
その布を見て口角が上がる。
「へっへっへ。なんだよ風で飛ばされてただけか。あるじゃねえか……」
男は布を取ると、すぐさま倉庫から出る。
するとそこに別の集団が現れる。
「あれ、ガンビスじゃん。何してんの? まさか仕事の依頼書、取っちゃった?」
「なんだよネリとナバキか。驚かせやがって。そうだよ。悪いがこれは俺がもらってくぜ」
「一人で手に負える案件なわけ? 私ら手伝ってもいいんだよ」
「んなこといって分け前ふんだくるつもりだろ、おめえら」
「……別にふんだくったりはしない」
「そうよ。分け前は事前に決めるルールでしょ。あんたが四、私らは二人で六でどう?」
「冗談じゃねえ。半分以上持っていくとか話にならねえな」
「へぇ。核兵器に関するものってきいたけど、あんたどの程度知識あるの?」
「そりゃあ……やべえブツってことくれえ知ってるぜ」
「はぁ。やべぇブツって。その程度の知識邪あんた、死ぬわよ」
「うるせえな、だからって六割もやれるわけねえだろ」
「……五割でいいだろう」
「ちょっとナバキ!」
「おれが二割、お前が三割でいい」
「それならいいわ。どう?」
「……いいだろう。だがあくまで俺が主体で命令通り動いてもらうぞ」
「別にいいけど。変な命令だと思ったら聞かないから」
「まずは暗号解読をするからよ。中いくぞ」
二人を伴い暫く歩くと、ガンビスと呼ばれた男はくるりと辺りを見回す。
廃ビル内部の三階。その一室だけ明かりがついている。
現在の惑星シドーは夜。他の部分は真っ暗で、この部屋は外からは見える位置にない。
ガンビスは扉へノックを六回し、中に一枚の身分証を差し入れる。
すると、建付けの悪そうな扉がすーっと開いた。
「こんな扉、簡単に破られそうじゃないの」
「爆弾が仕掛けてある。合図無しにあければいきなりドカンだぜ」
「小規模爆弾か。外側にだけ展開するように仕込まれてるな」
三人は中に入ると、扉を開けたと思わしき者に目が留まった。
「ロボット? かなり旧式に見えるけど」
「CC所有のロボットだ。旧型だが、暗号解読専門。おめえら使った事ねえのか」
「ないわよそんなの。解読は手数料払って解読が当たり前じゃないの」
「金がねえしもったいねえだろ。こいつを使えば無料だぜ。それに足もつかねえ」
「なぜ入り口に爆弾がしかけられてたんだ」
「決まってんだろ。ここにもやべえブツがあんだよ。そこの棚、左から三番目の本の裏」
「……麻薬ね」
「そっちがカモフラージュだ。本命はそこじゃねえ。その麻薬を抜き取ると棚事吹き飛ぶように
なってるが、重火器があんだよ」
「それを取りに来たってわけね……随分念入りな事」
「ただの重火器じゃねえからな。最新式の軍ご用たち兵器だぜ。おめえらに一つずつ渡す。
そっちは俺が準備すっからおめえらは解読に回れ。役立たずなら手取りを減らすからな」
「ちゃんとやるわよ。武器だって一人で扱うより複数いた方がいいにきまってるでしょ?」
「ちっ。わーってるよ。さっさとしな」