109th 任務開始前に衣類をそろえよう
ジェフの話を食事を取りながら、内容をまとめて記憶する。
惑星シドーにおける任務はCCの活動関連情報を仕入れる事。
それにいくつかの核に関連する情報を仕入れて伝える事だ。
マトリスの酒場から数キロ離れた所にある廃ビルの中に、CCのメンバーと思われる
者の出入りを確認しているようだ。
まずはそちらへ潜入し、内部調査を行って欲しい……とのことだが、その情報受け入れ先は
マトリスの酒場ではなく、別の場所にある情報アクセス端末でなければいけない。
「潜入調査はいいけど、別の場所にある情報アクセス端末の場所が問題だぞ……これ、シドーカンパニー
の所有する建物の中じゃないか? ニッキィが入ったら直ぐばれちゃうだろ」
「大丈夫じゃない? ニッキィだし。ニッキーだったらばれちゃいそうだけどぉ」
「バレバレだろ……しかも顔も形も殆ど同じだろ?」
「ちょっとぉエレット何言ってるの? よく見てよね。全然違うでしょ?」
くるりと回転して見せるニッキィ。いや、どうみても同じだから。
「潜入調査って具体的に何をしたらいいの」
「セキュリティレベルの低い廃ビルなんかだと、単純に中で何をしているのかを探ったり会話を
拾ったりするくらいかな。セキュリティレベルの高い建物になると、そうはいかないね。
まず侵入するのが難しすぎる。セイソーたちヘッツがいれば話は別だが。
そんな事をする任務なら、BOSシステムでの任務なんてしたりしないさ」
「BOSシステムなら死ぬことはないもんね。安全、安心!」
「安全ではあるが、安心ではないな。何せ動けなくさせて調べれば、どこの軍所属とかは
わかっちゃうだろうから。個人で暗躍していた場合も、アクセス場所の特定、その経路をたどって
本人にまで辿り着ける。情報の渦だな」
「そうすると、見つからずに調べるようにすればいいのね」
「ああ、そういうことだ。目的地の廃ビルはここから遠くない。まずは先を急ぐとしよう」
「待ってよぉ。このままこの恰好で行ったら怪しまれるよぉ!」
「……それもそうか。惑星シドーっぽい服を選んでもらおう。お金はかなり用意してもらった。
近くに洋服屋とか、あるか?」
「んー、移動しないとダメかなぁ。まずは移動しよ」
再びマッピングトーチまで向かうと、目的地を検索する。
俺は服の事がよくわからないので、ニッキィの進言でアミューズという服屋に
向かう事に。マッピングトーチは基本的に距離で金額が変わるようだが、金額は四レギオン銀貨。
ここからは近いようだ。
「えへへ……レットちゃんにあれとこれとそれを着せて……楽しみぃ!」
「遊びに行くんじゃないんだぞ。早く任務を終えてアルバメデスに戻らないと。
父さんも厄介な任務を持ってくるなぁ……」
「エレヴィン中将って格好いいよね。惑星シドーで凄い人気あるんだよぉ?
グッズも出てるんだから」
「へ? 父さんのグッズ? それは見たくない……」
「最強生物っていうシリーズにいるんだよ。レアものもあるんだから。うちの会社が作ってる
んだけど、完売!」
「自分の父親のフィギュアが完売って、凄い複雑な気持ちだ……」
「お父さんは凄く強かった。完売してもおかしくない」
「確かに父さんの強さは異常だけど、それでも体は一つだからね。俺が頑張らないと」
「うんうん。あ! 服屋さんみえたよ! あれ!」
ド派手な看板が目を引く服屋が視界に入る。看板からして服を売ってますと丸わかりの
店だ。しかもどちらかというと女性をアピールしている看板で、男性には入りにくい仕様。
ちなみに看板に使われているモデルはどう見てもガマガエルのメスだ。
「刺激的な看板だな……」
「目立つでしょ! 人気あるんだよ、ここ」
「あの看板可愛い」
『えっ?』
レットちゃんの趣味はわからないが……あれは可愛いと表現できるものなのか。
――――店内に入ると中はまるでスーパーマーケットのような広さをしており、そこかしこに
異星人が目に映る。建物は全部で七十八フロアあり、いわゆる地球人向けのエリアも
勿論存在する。俺やレットちゃん、ニッキィは地球人寄りのサイズ。ニッキィはそれより
かなり小柄だが、子供服サイズなら合うだろう。
「七十二階か。あれ? エレベーター、有料なの? ここ」
「当たり前じゃんっ。無料だったらみんなずっと登って降りてをしちゃうでしょ?」
「そういうものか!?」
「そういうものなの。嫌なら階段とか飛行エンジン使えばいいでしょ?」
「確かにそうだが……まぁレギオン銅貨一枚だし、いいか」
三人分でレギオン銅貨三枚を払い、七十二階のフロアへ。
一階と同様広いフロアが広がっていた。
七十二階のフロアは思ったよりガラガラだったので、スムーズに衣類を購入して着替え終わり、いよいよ
目的地の廃ビルへ向かう事に。