103th 惑星シドーへのアバター作り
俺とレグア、ニッキーはパープラー隊長に呼び出される。
とても顔色が悪く見え、機嫌も最悪のようだった。
「……もうわかっていると思うが、エレヴィン中将より特別任務が下った。
エレット軍曹を隊長とし、レグア君、それから……ニッキー君にはこれより
惑星シドーにおける不穏分子の状況把握、情報収集任務を命じる。
レグア君に関しては、まだ惑星シドーでの登録がないはずだ。そのため疑似肉体構成
による処理を行ってもらう。平たく言えば、アバターの製作になるね。
この辺りは二人に聞くように。それと情報収集にあたって予算もおりている。
こちらは惑星シドー到着後、マトリスの酒場という場所で、受け取れる手配をしてある。
あくまで極秘任務のためアナログでの行動となる。合言葉はアイスミルク。
答えはぬるめも悪くないがギンギンに冷えたやつだ」
「ええ? 合言葉なんてあるんすか?」
「仕方ないだろう。突発事項過ぎる上、惑星シドーだ。
私も頭を悩ませているところだ。くれぐれも気を付けて行ってくれ。
何度も言っているが、BOSとはいえ攫われでもしたら大変だぞ。
逆トレースしてこちらの惑星活動情報がもれかねない。
いいな、絶対に安全第一でいくように。以上!」
パープラー隊長の指令室を後にする俺たち。
まずは着替えてBOSルームへ向かう。
「ねぇ。ニッキーはこの星の見学がしたかったのになんでこうなるのぉ?」
「それは俺が聞きたいんだよな。父さんに考えあってのことだろうけど、察するに
ニッキーを囮にして俺たちを襲わせて、そのうえで縛り上げるって作戦なのかな」
「危険ね。でも大丈夫。私とエレットがついてるから」
「ニッキーだって戦えるもん! でも、ありがと……」
「アオアシラやシロッコは別任務に着手するのかな。こっちの素材集めは二人に任せるとして……
人員補充もあるんだっけ。戻ってきたら賑やかになっていそうだな」
「ねぇねぇ、まずはレグアちゃんのアバターを作るんでしょ? いこっ。レグアちゃん」
「よくわからないから手伝ってくれると嬉しい」
「なんだかんだで二人が仲良くなってくれてよかったよ。女の子のアバター
だから俺は……」
「どこに行くのエレット。エレットも手伝ってくれるんでしょ」
「いや、その……あれはちょっと……」
BOSのアバター作成。それは細部にわたるまで細かく作りこめるのだ。
つまり成人の男の子は凝視してはいけないコンテンツとなる。
「ほら、早く行くよ二人とも。出発が遅くなっちゃう」
「エレット。お願い」
「わ、わかったよ。それじゃなるべく見ないで説明しよう」
「見ないでも出来ちゃうものなのね」
「あ、ああ。多分出来るだろう。大体ならわかるし」
BOSルームに着くと、装置の隣にある席に座る。
複雑な装置が無数に並べられており、ニッキーが手際よくレグアの全身に取り付けていく。
「これでおおまかな身体能力とか、構造を作るの。直ぐに出来るから待っててね」
「そういえばニッキーもゲームキャラクリエイト、細かくしてたな。
見た目は全然違ってたけど」
「おんなじじゃ面白くないでしょ。現実と違う事が出来るから楽しいんじゃん。
エレットはわかってないなぁ」
「これでいいの」
「うん。そのままじっとしててね。えいっ」
ニッキーがパネルを操作すると、レグアの全身データが読み込まれていく。
あらゆる角度でのデータが抽出されていき、立体的な映像が即座に映し出された。
「……エレット、見ないで」
「見てないよ! こうなることはわかってたからな!」
「ずるいー! 何このスタイルの良さ! ここをこうしてこうしてやるぅ!」
「私、こんなに横長じゃない」
「それでここをこうして、こうして……」
「私の胸が無くなった」
「それでこうよ!」
「私の足、こんなに短くない」
目を瞑っているから画面は見えないが……ニッキーが滅茶苦茶にいじっているらしい。
話の内容を聞いて、ちょっとだけ見たくなってしまった。
いやいや、これは罠だ!
我慢して目を瞑っていよう。
「ちゃんと見てニッキー。私はこんな体」
「ちょっと、エレットがいるのに服脱がないでよぉ! レグアちゃんのエッチー!
私が悪かったから服着てぇ!」