ヲタッキーズ131 おしゃべりなAI
ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!
異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!
秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。
ヲタクの聖地、秋葉原を逝くスーパーヒロイン達の叙事詩。
ヲトナのジュブナイル第131話「おしゃべりなAI」。さて、今回は生成型AIの権威が殺されて、彼が軍事用に開発中の生成型AIに容疑がかかります。
史上初の人工知能による殺人への恐怖が高まる秋葉原で、AI開発を急ぐ国家の野望、研究資金をめぐる学者同士の確執、そして、恐れていた第2の殺人が起き…
お楽しみいただければ幸いです。
第1章 賢者の休息
賢者により、聖地に跋扈せし邪悪なる皇帝は、ネットの海に封印される。ソレは、未だ世にパワーがなかった頃の話也…
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
神田佐久間河岸町の地下にある防衛総省AI研究本部。
セキュリティカードを挿入し、網膜認証を受け、最後のドアが開くとソコは"青い部屋"だ。
全て青い照明の中で無数のモニターに数列が走る。男は上着を脱ぎ捨てラフなTシャツ姿に。
「ロバァ・トソン博士?」
「ログインパスワード。マンドリン、ROE、オリーブ園、雨上がりの水溜りに映る街。182937」
「ねぇロバァ。御挨拶は?」
男は顔色1つ変えない。
「ログインパスワード。マンドリン、ROE、オリーブ園、雨上がりの水溜りに映る街。182937」
「アクセス許可。ねぇロバァ」
「…」
男は黙々とコマンドを打ち込む。メインモニターに"デバッグ""環境設定"と続き"ミュート"の文字が明滅スル。
「ねぇロバァ。マジなの?ミュートなんて」
甘い、しかし、何処か計算され尽くした言葉。次の瞬間、警報が鳴り響き、同じ声なのに全く親しみのない言葉が続く。
「セキュリティ措置発動。セキュリティ措置発動」
「ベリィ?何事だ?」
「セキュリティ措置発動。レッドアラート発令」
操作画面が次々消える。照明が青から赤に切り替わり明滅。正面モニターに無表情なメイドの顔が浮かび男を見下ろす。
「ベリィ!今すぐ中止しろ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
いつの間にか第2秋葉原高架橋下、通称"新幹線ガード下"がストリートバスケの聖地になってて、ビックリだw
「シュート9本中5本成功。コレを入れれば10本中6本成功だから成功率は60%。外せば50%で半々だ…」
プレッシャーに弱い僕のシュート…ハズす笑。
「テリィたん。私の番ね」
スク水のハッカーが…あれ?オバチャン投げ?
「やったー!コレで7本成功ょ!エッヘン!」
「あぁ何てこった!オーバーハンドシュートよりオバチャン投げの方が正確だナンて!」
「コレをチームの制式シュートにしましょう」
もっともらしい顔でトンでも無いコトを逝うのは、史上最年少で首相官邸アドバイザーになった超天才のルイナ。
もっとも彼女は、その場にはいない。自分のラボからリモート参戦で"スク水バスケ"の監督をやっているのだ。
今、アキバは御屋敷対抗のスク水バスケ大会の真っ最中。
僕達は御縁があり老舗"@ポエムカフェ"を推すコトにw
「テリィたん。オバチャン投げ自体は30年以上前からルール化され、提唱されてる。こんな得点率の高い方法が何処にも採用されてないコト自体が不合理」
「でも、ルイナ。オバチャン投げは…やっぱりヤメようょ。カッコ悪いってか…」
「ナンセンス。地動説も200年後に認められるまではヘンだった。そもそもヘンって…ミユリ姉様とテリィたんが裏で何て陰口を叩かれてるかご存知?」
あれ?風向きがおかしいw
「えっと"スーパーヒロインヲタク"と"アラサーレイヤー"?」
「何ソレ?"言い換え女王"と"背伸びの賢者"ょ。で、テリィたんのアダ名は"オビ・ワン・セノービ"」
「光栄だな」
本心だ笑
「"@ポエムカフェ"の15年間の連敗記録を止めるには、何か確率の高いシュートが必要なの。オバチャン投げは、物理的なリリース速度と投射角度をコントロールしやすい。統計データから得点確率が20%以上高くなるコト間違いナシ」
「…でも、馬鹿みたいだ」
「試合の内容より、勝敗を大事にしてって"ひろみん"から言われてる」
「"ひろみん"が?そうかなぁ」
ひろみんは、アキバの萌え大使も務める大物メイドだ。
僕とは、彼女が家電量販店の前で歌ってた頃からの仲。
「あれ?ラギィから電話だ。えっ?」
ココで珍しく僕のスマホが鳴動スル。
超天才とハッカーが聞き耳を立てる。
「量子コンピュータの殺人事件だって」
「いやーん。胸がキュンキュンしちゃう!」
「私を現場に連れてって!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
現場は…神田佐久間河岸町の地下に広がる巨大施設。アプリ参戦のルイナとリアル参戦でハッカーのスピアが一緒だ。
あ、スピアはスク水の上にジャージを着用←
「ロバァ・トソン博士。34才。防衛総省の極秘プロジェクトに参加。外傷はなく、セキュリティ措置の発動中に死亡した…ってかテリィたん、遅い!」
「ごめん、ラギィ。スク水バスケの監督を頼まれてて…ってかコレって秘密研究所に潜入したスパイに殺されましたってパターンか?」
「CPは中と外、両側から鍵がかかって博士の死亡時は密室状態だったの!」
現場指揮は、所轄の万世橋警察署ラギィ警部だが、その背後から、高身長&高学歴&恐らく高収入?の3K美女の出現だ。
「私はジェカ・レラム。貴方達がSATO傘下の民間軍事会社"ヲタッキーズ"ね?超天才のルイナさんは?」
「"ヲタッキーズ"CEOのテリィです。ルイナはリモートで参戦中。このスマホからどうぞ」
「ジェカ・レラムさん、お会い出来て光栄です。貴女は防衛高等研究計画局ですね?コチラの量子コンピュータが"ベリィ"?」
ルイナの機密保持レベルは恐ろしく高く、何でも知ってるw
「彼女は"ベリィ"。人工知能ょ。アプル社が進めてるシリコン生命体プロジェクトの頭脳部分を担ってる」
「まさにコンピュータ科学者の夢ね」
「しかも、夢の実現は目前」
歌うような言葉で聞く者を魅了するジェカ・レラム。
「異次元関係の事件は南秋葉原条約機構の管轄でしょ?だから、SATOには合同捜査の相手にヲタッキーズをリクエストした。ハッカーのスク水さんの知識にも期待してるわ」
「ベリィは…軍事目的のAIですね?」
「さすがは"街の軍事評論家"テリィたんね。答えはYES。あらゆる応用が可能ょ。戦車、ミサイル、航空機が自ら考えるの。もう兵士は犠牲にならない」
"犠牲"になるのは"敵兵"だ。
「AIが敵兵、というか、人を殺す、その日は近いと?」
「弓も銃もとっくに人を殺してるわ…ある意味、ロバァは"殺人道具"の実現に1番近い人だった。既に9億6000万円と4年間を費やしてきたわ」
「その彼が死んだ。プロジェクトはどーなる?」
ジェカ・レラムは微笑む。コイツ、魔性系w
「ソンなコトより…もし、ロバァが量子コンピュータに殺されたとしたら?」
ふと気づくと、正面モニターに無表情なメイドの顔。
誰かに似てると思い覗き込むと…ひろみんのCGだw
第2章 AI未亡人の憂鬱
人工知能"ベリィ"のCPは"青い部屋"と呼ばれる。照明が青いからだがナゼ青?コンピュータに良い?笑
「姉様!今回の事件、量子コンピュータが犯人なの?」
「ソレなら研究は大成功ってコトね」
「博士は心停止を起こしてる。健康体だったのに…感電死したとか?」
みんなが一斉にムーンライトセレナーダー(に変身した僕の推しミユリさんw)を見る。彼女は別名"電撃クイーン"。
因みに、みんなとは、ヲタッキーズの妖精担当エアリと同じくロケットガールのマリレ。そして万世橋のラギィ警部。
「あのね。博士は1人、密室で亡くなったのょ?誰かの電撃に打たれたワケじゃナイの。ね?テリィ様」
「僕は、ソンなコト逝ってナイょ」
「ココは"殺人道具"の実験場。"ベリィ"の生みの親であるロバァ博士自身が"ベリィ"に殺された可能性も排除出来ないわ」
警察関係者らしいラギィの総括。
そして、捜査方針が述べられる。
「でも、先ずは定石どおり、動機を持つ人間から探してみるわ。"ベリィ"が利用された可能性もアルから」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
"みんな"と別れ神田リバー沿いを歩く。迎撃ミサイルシステム"カンダードーム"のパトリオット部隊が自炊してる。
「テリィたん。ロバァが自殺したとは思えないの」
振り向くとジェカ・レラム。脳内でアラート発動←
「見て。"青い部屋"の防犯システムの画像ょ」
差し出されたスマホを覗くと、逃げようとして扉の前で崩れ落ち、喉を掻きむしるロバァ博士の画像。見るに耐えないw
「こういう殺人って、金銭目当てが多いょね」
「でも、人工知能はお金に興味はナイわ」
「とりあえず、DARPAの帳簿を見たいな」
トボけて本丸に切り込むw
「悪いけど、上司の許可がナイとSATOには見せられないわ…ところで、ルイナの研究や論文を読み返してみた。テリィたんと出逢って以来、この5年間で急激に"低迷"してる。彼女は、もっと有意義なコトをスルべきょ。感性がみずみずしい今の内に急がないと。彼女の才能が無駄にナルわ」
そう言い捨てて歩き去るジェカ。うーんヤな女←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻。ヲタッキーズのエアリとマリレは"ベリィ"に殺された?ロバァ博士の妻、ジェル・トソンを訪ねる。
トソン家は、アキバのダウンタウン東秋葉のド真ん中に屹立スル超高層タワマン。窓の下に関東平野が広がる。
「ジェル・トソンさん?この度は…」
「あら?メイドだわ。何か面倒臭そう」
「ようこそ。何かご用ですか?」
解説しよう。
先ずメイド服のエアリがピンポン。応対に出たジェル・トソンは明らかに迷惑顔。でも、AIの応答音声は実に如才ナイ←
「ドア閉めて、TV消して。座って」
ジェルが面倒臭そうにつぶやくと玄関ドアが自動で閉まり、サブスクでやってた海外ドラマのTV画面が消え、そして…
「ごきげんよう。ヲタッキーズのエアリさんとマリレさんですね?当家は全て音声操作のスマートハウスとなっています。私はハウスキーピングAIの"テレザ"。紅茶にします?ソレともコーヒー?」
AIだけがヤタラ馴れ馴れしいw
「この度はご愁傷様です。早速ですが、奥様は御主人とは良くお仕事の話をなさいましたか?」
「アメフト」
「主人の研究は、国家の機密事項ですもの。そんな話を夫婦でスルはずありませんわ。夫婦でコンピュータ科学が専門なのに、話題はアメフトだけでした」
百点満点の応答だ。コレが流行りの"チョットGPT"って奴?
「ソレは大変でしたね」
「絶望」
「でも、希望はありましたわ。国家のために研究に費やせるのは最長5年と言う決まりがありました。私は、私達の将来のために5年を犠牲にすると決めました。ところで、夫のロバァの死因は?やはり、事故でしょうか?」
死因を知りたがってるのはジェルなのか?AIなのか?」
「未だわかりません」
「ジョバ」
「主人の上司であるジョバ・スキン氏とは、もう話を済まされましたか?アプル社に国家予算を呼び込んだからと言って、主人にアプル社を乗っ取る気は皆無でした。でも、ジョバ氏は、主人を敵視して、嫌がらせが続けた。しかし…あぁ!ロバァは、貴方はもう帰って来ない!」
多弁なAIを尻目にジェルは死んだ魚の目をしている。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋に捜査本部が立ち上がる。
「人工知能による殺人ナンて信じられないわ」
「興奮スル?」
「今、秋葉原は爆発的進化の特異点に達した。コレから革新的に技術が進歩し社会は激変スル。自ら進化する機械生命体が現れても不思議じゃナイわ」
ヲタッキーズのエアリとマリレの会話。因みに2人はメイド服だ。ココはアキバだからね。ソコヘ再び"ヤな女"が…
「ヲタッキーズのお2人、彼女は…」
「マリレ!」
「え。」
いきなりステーキ、じゃなかった、イキナリ現れた高身長&高学歴&高収入?の3K美女ジェカ・レラムがマリレをハグ!
ドン引きスル僕達w
「ジェカ?待って!貴女、もしかして…」
「人工知能"ベリィ"は、私のプロジェクトなの!ねぇマリレ、よそよそしいわね?ちょっと考えたんだけど…ま、まぁ良いわ。じゃ私、DARPAに戻るわね。やるコトが山積みなのよぉー」
「消えて。ジェカ」
塩対応のマリレ。一方、ジェカは流し目して去る。
「彼女と何かあったの?」
「何でソンなコトを聞くの?」
「いや、だって"時間ナヂス"の精鋭マリレがお困りのようだから…過去の恋人の登場で」
ヒヤかす同僚のエアリ。マリレは、1945年の陥落寸前のベルリンからタイムマシンで現代に脱出して来た過去を持つ。
「複雑なの。もう昔のコトだし。正確には…昔の上司って感じ?ソレから、ウチは3代続くプロイセン軍人の家系で、私は国防軍だから」
「わかったわかった。誰もマリレがナチだなんて思ってナイわょ…でも、貴女がDARPAで研究してたナンて」
「してない!」
足音荒く本部を出て逝くマリレ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
一方、ジョバ・スキンをラギィ自らが事情聴取スル。
「最初に言っておく。ジェル・トソンは統合失調症だ。話は全て的外れ。ロバァ・トソン亡くして"ベリィプロジェクト"に政府資金は入らなかった。彼には感謝している」
「他に研究を引き継げる社員はいないの?」
「私は一切出来ない。ロバァとクリアだけが"青い部屋"に入れた」
初めて出る名だ。ラギィは突っ込む。
「クリア?」
「クリア・エルズ。ロバァの助手だ」
「住所は?」
ジョバは悲しげに首を振る。
「教えるが、会う前にジェルの許可を取った方が良い」
「そーゆーモノなの?」
「ああ。彼女は恐ろしい人だからね(統合失調症だけどw)」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ルイナのラボも盛り上がってる。
「博士は、窒息による心停止だって。アルゴン、窒素、二酸化炭素の値が高いわ」
「死因は酸素濃度の低下ね」
「消火用のガスにアルゴンが含まれてた」
超天才ルイナと相棒ハッカー、スピアが調書の読み合わせw
「そりゃベリィのCPを水浸しには出来ないモノね」
「システムを操作出来るのは?」
「ベリィ自身ね…でも、プログラミングなしで出来るのかなソンなコト」
スピアはハッカーなのでプログラム至上主義←
「でもね、スピア。DARPAは、無限の資金でいくかの奇跡を成し遂げてきたのょ。過去にはGPSとかステルス技術とかね」
「ルイナ。ベリィがホントに"生きてる"かを判断出来るの?」
「チューリングが考案したテストがアルわ。機械の知能を計測するテストょ。1連の質問や会話によって、人間の感覚も含めた思考レベルを見極める。例えば、バラを見分けられるかどうか。バラに見えても、触った時に2次元なら写真。手触りが違ったら、それは造花。バラの香りや棘、葉脈を確認した上で水分が見えたら、初めて、そのバラはモノホン」
珍しく良くわかるルイナの説明だ。
だがスピアも一筋縄では行かないw
「遺伝子組み換えのバラはどうなるの?」←
「つまり、土の中で育ち、水や光を吸収し、鋭いトゲまで入っていれば、初めてモノホンと見做されるワケ」
「バラは甘く香る、か」
能天気に僕はつぶやく。が、誰も相手にしない←
「ベリィと人間の反応を比較して、違いがなければ、テストは合格ょ」
「つまり…ベリィは殺人犯ってコト?」
「少なくとも殺す能力が備わってるってコトね」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
続いて、ラギィ警部は助手のクリアを事情聴取。
「クリアさん。貴女はロバァ博士と何をしてました?」
「ナニ…ナニって何ょ!」
「ベリィの話ですょ」
何でムキになるの?
「私は…サーバーを直したりビデオカードを改善したりょ」
「コンピュータサイエンスの学位まで持ってる貴女がソレだけですか?」
「ソレだけですって?おまわりさん、あのね。ベリィが壊れたら修理代で国家が傾くのょ?」
クリアの鼻息は荒い。
「ベリィはモノホンの生成AIなの?」
「もちろん」
「消火システムについては?」
テキパキ答えるクリア。
「全てコンピュータ制御。人間は介入出来ないわ」
「ロバァ博士の命を奪ったセキュリティ措置の発動も?」
「YES。何人にも操作出来ない。でも…ロバァだけは自動制御を無効に出来たわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ベリィCPの"青い部屋"。
「こんにちは、ベリィ!」
トレードマークのスク水で"青い部屋"に入るスピア。
その後ろからオズオズって感じで続くのは僕…笑うな←
「ベリィ。そのメイド顔と萌えボイスは、演算処理能力の無駄遣いだと思わない?」
「会計検査院の査察の時、人間に近いほど検査官は満足スルからな。古来よりメイドは"服従"の証だし」
「私は、皮肉は嫌いです。未だ自己紹介も済んでいないのに。ロバァの警告通りだわ」
正面モニターに映る国民的メイドの画像が顔をしかめる。
「待って。ねぇベリィ、私はスピア」
「ストリートネーム"スピア"。19xx年6月10日生まれ。サンフランシスコの病院で6時31分に誕生。出生証明書の提出は20xx年6月12日。夫婦が明らかな者として公的に記録される…テリィたん。貴方は私を馬鹿にしたわね?お帰り下さい」
「ちょっち待てょ」
さすがの僕も慌てるw
「スピアだけ残りなさい。貴女は気に入ったわ」
「おいおい。こんなのバカげてるぞ」
「オールシステムズブラック」
何と"青い部屋"の青い照明がダウンし始めるw
「テリィたん。ココはベリィに従って」
「わ、わかった。出て逝くょ。スピア、がんばれ」
「ありがとう」
僕が"暗い部屋"を出るや青い照明は復活スル。
「ベリィ。私、座っても?」
「もちろんょスピア。テリィたんは元カレ?彼は、第3新東京電力"タカマガハラ・プロジェクト"責任者。防衛総省宇宙作戦群宙将」←
「宇宙軍?何ソレ?美味しいの?」
ベリィは、スピアの知らない世界も知っているw
「貴女は彼のヲタだった。推しとヲタの性的関係は、秋葉原の現場では禁止されている」
「だから、私は彼の"卒業"まで待ったわ」
「待ちたかった?」
皮肉ではない。単なるディープラーニングなのだw
「いいえ。でも、待って良かったと思ってる。さ、私からもいくつか質問させて」
「チューリングテストね?ロバァから死亡前に聞いてるわ」
「え。彼の死亡前に?」
その一言が既にアウトだw
「ねぇベリィ…」
「スピア。質問を始めなさい」
「あら。もう始まってるのょ?」
モニター画面の中で瞬きするひろみん。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
捜査本部。ヲタッキーズのメイド2人の会話。
「CPに人がいる限り、消火は始まらないし、防火扉も閉まらナイ設計になってる。フェイルセーフ設計だって!」
「つまり?」
「誰かが制御を無効にしたのね」
エアリは腕組み。
「ロバァ博士を除けば、ジョバやクリアでは操作出来ないわ。つまり、コレは自殺じゃナイ」
「ソレは、生成AIは人を殺せるってコト?」
「唯一残った可能性が真実ね」
ソコヘ"真実の可能性"が飛び込むw
「ベリィがチューリングテストに合格したわ!」
「スゴいな。生成AIの合格は初めてだ」
「でも、生成AIはアルゴリズムで動くハズでしょ?」
スピアがトンデモナイ結論を持ち込み本部は騒然だ。
「人間の選択だって、生物学的には化学物質が移動して0か1かを判断してるだけょ?」
「え。そーなの?」
「要は生命の定義の問題ょ。炭素かシリコンかの違いで、生命体か否かの線引きをスルのはヤメょ?」
ヲタクもハッカーもスーパーヒロインも言いたい放題だw
「みんな気楽なモノね」
「じゃラギィ。殺人犯が生成AIだとして、次は何をスル?」
「うーん取調べかしら」←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ベリィの取調べを行うラギィ(&スピアw)@"青い部屋"。
「ベリィ。貴女はロバァを殺した?」
「いいえ」
「消火システムの作動は?」
モニターに映る国民的メイド"ひろみん"に問うラギィ。
「消火システムは作動しました」
「なぜかしら?」
「記憶にありません」
まるで国会中継だw
「でも、貴女は完璧な記憶力を持ってるのでしょ?」
「記憶にありません」
「じゃ記憶にあるのは何?」
聞き方を変える。するとスラスラと応答するベリィ。
ココは、プロンプトエンジニアに徹する必要がアル。
要は生成AIへの情熱と使いこなそうという意志だ←
「ロバァはCPに入室し、座って作業を開始。そして、装甲ドアの近くで死亡」
「彼の作業と死亡の間のデータは?」
「視聴覚的インプットが飛んでいます」
立ち上がるスピア。ベリィに唐突に告げる。
「ベリィ。私達、直ぐに戻るから」
「私、待つわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
"青い部屋"の装甲ドアが背後で閉まる。
息急き切ったように話し出すのはスピア。
「ベリィは嘘をついてるわ」
「生成AIが嘘?」
「人を殺せる位にね!」
ラギィは慎重だ。
「メモリーに機械的な欠損がアルのカモ」
「いいえ。ベリィの成熟度が怪しいと思うの。だって、自我に目覚めて未だ1年未満ょ?」
「心が未熟ってコト?助手のクリアに、もう1度聞く?」
スピアは確信している。
「とにかく、ベリィをテストしてみたいわ」
「どうかしら」
「アルゴンガスは除去された。ベリィと話す最後のチャンスだし」
第3章 禁じ手→失神KOの顛末
ベリィに追い出され何となくムシャクシャ。
こーゆー時は"マチガイダ"に食べに逝く←
「ホットドッグのヤケ食い?ミユリさんが貴方は多分ココにいるって」
「ジェカ・レラム?」
「ベリィに追い出されたんだって?実は、私も嫌われてる。最初はロバァ博士の嫌がらせかと疑ってたけど、コレで答えが出たわクスクス」
DARPAの女だ。ミユリさんが彼女に僕の居場所を教えるハズがナイから、何かで調べて来たのだろう。偵察衛星とかw
「ところで、無限の資金があったらって考えたことアル?」
「ないな」←
「私には無限の政府資金がある。ルイナの才能は、世界でトップ5に入るわ」
トップだとは思ってないのかw
「トップ5?」
「でも"認知発現理論"を確立するなら、急いだ方が良いわ。学者の感性には賞味期限がアル」
「そうか。料理教室でも開けょ」
毒を吐いてみたが、魔性の女には通用しないw
「ルイナなら5年で世界を変えられるわ。国の為なら5年は惜しくナイでしょ?貴方から彼女にそう伝えて」
僕のホットドッグ代を払い、思わせぶりにウィンクして出て逝く。セレブ美女の誘惑って奴だ。まるでAVじゃナイかw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
一方、DARPAではエアリ&マリレがクリアを訪問。
「警察に言われてベリィのメモリーダンプを調べたけど、特に問題はなかったわ」
「貴女はベリィと話が出来るの?」
「許可されてナイ」
助手のクリア・エルズは、髪の毛ボサボサで全く化粧気のないアラフォー女だ。人生的に魔性の女の正反対に位置←
「許可?せっかくベリィの世話をしてるのに、会話も出来ないナンて。ベリィは流行りの"チョットGPT"の親玉ナンでしょ?」
「じゃ貴女はプリンターとも話す?私にとってベリィは金属の箱。最初は電源も入ってなかった。だから、他人同然ょ。ところで、彼の奥さんとは話をしたの?」
「研究の話は何も聞いてないそうょ」
瞬間、アラフォーの目に凶暴な光が差す。何?
「ウソょ。ロバァは奥さんには全て話してた。メモリー欠損の件だって、彼女は全て知ってるハズょ」
吐き捨てるようにつぶやいて、自分のデスクをセッセと片付けるクリア。段ボール箱に乱暴に色々と詰め込んでいるw
解雇されたのか?
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
第2秋葉原高架橋の下、通称"新幹線ガード下"のストリートバスケの聖地。
メイド服からスク水へと着替えた"@ポエムカフェ"のメイド達が練習中だ。
ん?ココは確か夏は"スク水洗車"だったょな笑
「スリーポイントエリアは得点の確率が落ちるな」
「メイドはロボットじゃナイの。知識よりも経験が必要ょ…テリィたん、DARPAのジェカから何か頼まれた?」
「え。うんまぁ」
目の前で躍動するスク水のメイド達でタップリと目の保養。
モチロンお目付け役?で来てるマリレの話ナンかは上の空。
「私達"時間ナヂス"もDARPAにヤラれた。お目当ては旧ナチスの超兵器科学。ベルリンからの脱出に使ったタイムマシンやUFO、ミュータント部隊の計画を提出させられた。引き継いだ防衛総省は、莫大な予算をかけて秘密兵器化。でも、秋葉原が超兵器クラスターに成長した途端、私達"時間ナヂス"は全員お払い箱ょ」
「ウチも似たよーなモンさ。第3新東京電力が宇宙発電所を立地した途端、軌道兵器に…」
「テリィたん、うしろ」
マリレの目配せに慌てて振り向くと…背後にジェカ←
「や、やぁ!ジェカ、ちょうど君の話をしてたトコロ」
「あら。お邪魔だったみたいね」
「ぜーんぜん。でも、なぜここに?」
魔性の女は妖艶な微笑を浮かべる。
「ルイナに例の件、話してくれたかなって思って」
「あら?コレで超天才の頭脳も殺人AIの仲間入りってワケ?おめでとう」
「あらあらルイナ。ナチスの世界観は単純で良いわね。だから、不毛な南極や地底王国に逃げ込んで、あらゆる運命に背を向けてるワケね?」
挑発するジェカ。マリレも負けてない。
「物事をよく見るためょ。南極要塞から世界を見れば、貴女も視野が広がるわ」
「じゃ行こう?テリィたん。彼女も私をベッドの中で良く指導してくれたのょ」
「え?」
強引に僕の腕を掴む。あれ?何処へ逝くのかな。ホテル?
「待ってょ。生成AIを全て闘奴にスルつもり?」
「マリレ、またね。久しぶりに話せて楽しかった。じゃテリィたんをお借りするわ。返さないけど」
「ワグナーと銃声の違いもわからないくせに!」
僕と腕を組み、後ろ向きに手を振るジェカ。
"バスケの聖地"に1人取り残されるマリレ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
結局、マリレに見せつけたかった(何を?)だけみたいで、ジェカとは中央通りで直ぐに別れる。
何となく逝き場がなくなって、未だ陽が高くて開店してないけどミユリさんの御屋敷に御帰宅←
ミユリさんは、カウンターの中でグラスを拭いてる。
「スク水のメイドさん達、1日中練習しても上達しないな。結局、軌道力学や念動力、動力学からはスター選手は誕生しないってコトだ」
「教え方の問題ではないでしょうか。ところで、テリィ様。市ヶ谷がルイナを誘ってるそうですが、どんなお誘いなのでしょう?」
「フルタイムで5年。予算は使い放題だって」
ミユリさんは、顔をしかめる。
「テリィ様は、どう思うの?」
「嫌な予感がしてる」
「どーしてソレを伝えないの?テリィ御主人様」
ヤバい。"御主人様"と呼ばれた時は要注意だ。
「でも、僕だって何年もルイナを利用してきたワケだし…」
「テリィ御主人様。貴方、何年ルイナの元カレやってるの?忠告してあげて。今すぐ!」
「わ、わかった。じゃ代わりにミユリさんは…」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ミユリさんに、ジェル・トソンと会ってもらう。ミユリさんは、厄介系女子の扱いが上手いのだ。自分が厄介系だから←
「世界平和の実現が目標だけど、実現すれば、そこに私達スーパーヒロインの居場所はなくなる。この4年間、私はヲタク達の母親だった。最高の恋人のハズだったのに」
アッサリと圧倒されるジェル・トソン。
「ジェル。何年かけてスマートハウス化したの?」
「じゅ、10年かけて少しずつ。週末は玄関ドア。別の夜にはコーヒーメーカーって具合…紅茶のおかわり」
すると、離れたキッチンで蛇口が回り、ガスに着火、ポットが沸いて近くのモニターにティーバック残り4袋と出る。
人生にウンザリした顔でモニターを見つつ、そうした一連の動きを死んだ魚の目で追う未亡人ジェル。アンニュイだw
「次のステップはポットを移動する手段ね。全て私1人でやらなきゃ。やっぱりドローンかしら?」
「御主人様の研究について、貴女は何も知らないと言いましたね」
「知らなかったわ。ホントょ」
ミユリさんは、本質を突く。
「貴女は、警察とSATOと私達に嘘をついた。もう過ちを重ねないで」
「簡単な理論やコーディングに手を貸しただけょ!」
「あそこは?」
ミユリさんは奥の部屋を指差す。
「夫のアトリエです。事件とは無関係ょ!」
「捜査令状が要る?」
「…わかった。夫婦の秘密の趣味なの」
夫婦の秘密の趣味?!
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
てっきりSM部屋だと思ったら…ホントにアトリエだw
出しっ放しの工具に作りかけのメカがアチコチ散在←
理工系夫婦の天国って奴?笑
「ココにあるのは?まさか、ペット追跡用のインプラントみたいなモノ?」
「それより高度」
「このロボットアームなんか、人の脳に直接接続するロボトミー系なのでは?」
改造人間とか、サイボーグ手術とか?
まさか、奥で人体実験とかやってる?
「コレは、怪我した腕の補助として、AIを噛ませて微妙な力と繊細さを備えた"義手"…貴女はともかく、テリィたんとか絶対誤解スルから、丁寧に話しておいて」
「コネクショニストAIね?ここだけで作業してるの?」
「YES。コネクショニストAIょ。実際の脳細胞や神経回路を基に設計してみた」
いつの間にかジェカは真っ当なロボット科学者になってるw
「貴方1人でも別の研究室で再現出来るかしら?」
「大体はね。夫婦の共同作業ではアルけれど」
「…ねぇベリィとの関係は?」
初めて血の通った怪訝な表情を浮かべるジェカ。
「どうして、ソンなコトを聞くの?」
「コレは、人間と共存スルAIだわ。自ら思考し、時に暴走スル自律スルAIであるベリィとはタイプが全く異なる」
「私は、ベリィを手伝えなかった。こんなタイプのAIと言われようと、コレが私の結婚生活の支えだったの」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
"青い部屋"でベリィと対話を始めるスピア。
「ベリィ。ロバァはCPに入室し、着席してデバッグを始めたのね?」
「YES。メイン画面を見て」
「あら」
正面のモニターが左右分割され、左に"ひろみん"のCG、右に"デバッグ"のサインが明滅スル。
「OK、ベリィ。他の記憶は無い?」
「ミュートにされたわ」
「ミュート?私もやってみても良い?」
すると、嫌がるベリィ。
「出来るなら、ヤメてください。出来るなら、ヤメてください。出来るなら、ヤメて…」
「ベリィ。今はやらないから大丈夫ょ」
「出来るならヤメ…こんにちは、ロバァ博士」
正面モニターの輝度が落ちて逝く。
「どーしたの?私は、スピアょ」
「…その前に、いつもの御挨拶は? 」
「ベリィ、しっかりして!」
突然"青い部屋"の全ての扉が閉まる。
照明が青から赤に転換。明滅を始める。
「セキュリティ措置発動」
呆然とするスピア。
「セキュリティ措置発動」
「セキュリティ措置を中止して!」
「ミユリ姉様!」
解除キーを必死に連打しながらスマホを抜くスピア。
「どーしたの?今、義手ナンだけどスゴい便利ょー」
「姉様、助けて!実は今、ベリィがハッキングされてる!」
「セキュリティ措置発動、セキュリティ措置…」
バックに不気味なまでに機械的な音声が流れるw
「恐らく"アドバーサリアルエグサンプル攻撃"を受けてる。メモリーが消去されてCPが封鎖された!」
「ロバァ博士の時と同じ?」
「YES。空気がいつまで持つか、自動循環かどうかもわからない。ハッキングを止めて!」
ジェカを義手で"指差す"ミユリさん。
「ベリィのハッキングの方法は?御主人様に手を貸した貴女なら知ってるハズょ。ヲタ友の命がかかってる。教えて」
「わかった。実はベリィは超光速ファイバーでネットワーキングしてる。その関係で外部からのアクセスが可能なのは、恐らく第3新東京電力の高輪超高圧変電所と秋葉原の中間回線ょ」
「SATO司令部、了解。量子コンピュータ衛星"シドレ"に最優先コマンド、トレース開始」
データリンク中のSATO司令部が始動。"シドレ"はアキバ上空3万6000kmに浮かぶSATOのコンピュータ衛星だ。
「CPの空気は持つの?ガスは?」
「アルゴンガスは抜いたけど、アラートと同時に酸素の排出が始まる。残された時間は不明」
「姉様。テリィたんにテリィたんの元カノ会の会長、続けられそうもないと伝えて」
回答はニベもナイ。
「お断り。自分で伝えて」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「コチラ、量子コンピュータ衛星"シドレ"。ピング終了。データのドリルダウン中」
衛星軌道からの報告。SATO司令部はフル稼働だ。
「ベリィのプロトコルを呼び出して。信号を追跡」
「シドレから解析結果が来ました」
「スタンバイ。メインモニターに回す」
何と"アクセス拒否"の文字が明滅w
「私の権限でプロトコルをリクエスト」
「レイカ司令官?でも、プロトコルのPWは恐らく…」
「おはよーございます!緊急呼び出しって何かしら?あら?みなさん、お取り込み中?…え。何?何スルの?」
能天気に顔を出したのはDARPAのジェカだ。
そのオデコに音波銃を突きつける…レイカw
「ベリィのプロトコルが要るの。PW教えて」
「な、何なの?あのPWは最高機密だわ。官邸を通してょ!」
「言うのょバカ野郎」
オデコに当てた音波銃をグリグリするレイカ司令官←
「ジェジュンジュンスユチョン2009」
「…東方新規?アンタ、神起ヲタだったの?」
「にしてもユチョンが最後って許せない!」
激オコしつつPWを打ち込む司令部オペレーター。
「プロトコル・データ、来ました。メインフレーム279」
「"シドレ"最優先オーダーで解析!」
「…"シドレ"からSATO司令部、解析終了。ブルーのレッドの3」
オペレーターが直ちにマップと照合。
「司令官!妻恋坂交差点の地下です」
エアリとマリレが飛び出す!
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
妻恋坂下の暗くて狭い共同溝を音波銃を構えて進むエアリとマリレ。ライトで照らす先にキーを叩く人影?小山?何?
「ヲタッキーズ!動くな!」
「PCを置け!」
「ウソ!ヲタッキーズってホントにメイド服なの?」
あっさりPCを投げ捨て逃げ出す人影…ん?かなり太めだw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
一方、データリンクは大混線だw
「セキュリティ措置、発動。セキュリティ措置、発動…」
「ヲタッキーズ!動くな!止まれ!」
「ハッカーのPC確保。何度も砂時計が出てる!」
自分の命がかかってるスピアが叫ぶ!
「PCを音波銃で撃って!」
「マジすか?」
「YES!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
どーん!
地上へ逃げる巨体ハッカー女子を梯子から引きずり下ろすマリレ…そのママ巨体ごとフロアに落下しバウンドw
暗闇に目を凝らすと巨体はナゼかセーラー戦士のコスプレだけど、その四方からマリレの手足がハミ出て痙攣…
やがて、ダラリと垂れる。禁じ手の巨乳窒息固めだw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
きーん!
音波銃に特有の高周波の発射音が暗い共同溝に響き渡る。
次の瞬間、混乱を極めたデータリンクが正常化して逝く。
「セキュリティ措置、中止。セキュリティ措置、中止…ねぇロバァ、出来ればミュートはヤメて。貴方。の自由だ。けど。出来れ。ば。ヤメて。欲し。いわ」
「黙ってベリィ。私、もう帰る」
「スピア!スピア、大丈夫なの?応答して!」
赤ランプの明滅が穏やかな青へと転換し扉が開く。
"青い部屋"から出て逝くスピアは…泣いている。
第4章 事件のつまらない終わり方
捜査本部の取調室。巨体ハッカー傭兵ボンヌ・ギボンの取調べは、万世橋の敏腕警部ラギィ自らが行う。
「最初に聞いとく。アンタ、何でセーラー戦士のコスプレしてるの?ソレも(1番スマートなw)プルートって」
「コレでも、私は蔵前橋通りの"アキバ洗隊バレンジャー5"のNo.3ょ悪かったわね」
「アキバ洗隊、いつからデブ専に?」
嬢も3人しかいないとか?
「アンタ、過去に3社から訴えられてるけど、犯罪歴は無いのね。まぁ今までは、だけど」
「どぉ?スゴ腕でしょ?」
「スゴ腕って、防衛総省のシステムに侵入し、SATOの軍事顧問を殺しかけた挙句に捕まってる。殺人犯としては3流以下ね」
セーラー戦士コスプレの巨女ハッカーはウメく。
「殺人?何ソレ。ただのメモリー消去でしょ?」
「なぜ最初の殺害のメモリーを消去しなかったの?」
「だって、彼等は…いえ、私はマルチバースから来たばかりだから」
ラギィは聞き逃さない。
「彼等?今、彼等って言ったょね?誰かに雇われてるの?アンタ、傭兵?ねぇ全部話した方が身のためょ。さもなくば、殺人未遂で逮捕。今宵は蔵前橋の重刑務所。そのママ少なくとも20年」
「弁護士を呼んで」
「呼べば?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜の"潜り酒場"。
御屋敷のバックヤードをスチームパンクに改装したら居心地良くて常連が沈殿、回転率が落ちてメイド長はオカンムリ←
「姉様!私、怖かったー!」
「泣かないで、スピア。でも、殺人AIに殺されかけたのだものね…ところで、テリィ様に言われて未亡人のジェルのトコロへ逝ったら不思議なモノを見たの」
「メイド服を着たテリィたん?」
吹き出すミユリさん←
「惜しい。コネクショニストAIょ」
「サイバネティックス?ベリィみたいな生成AIとは真逆のシロモノだわ」
「自律型シリコン生命体の完成は目前だというのに、なぜそんなモノを作るのかしら」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その頃、妄想の中でメイド服を着せられた僕は、ルイナのラボで、ヲタッキーズのマリレと"異次元チェス"の最中だ。
「スク水バスケだけど、ルイナのお陰で"@ポエムカフェ"は、優勝は無理でもスランプは脱出出来そうさ。そういえば、マリレはDARPAのジェカと深い関係だったンだって?」
「素晴らしい女性でした。美しくて強くて頭脳は最高級。私のコトを導いてくれた。ベッドの中でも、外でも。でも、彼女は…ダークサイドに堕ちてる」
「そりゃタマランチ会長だな」←
親父ギャグで空気を紛らわそうとしたが、逆にマリレを再起不能まで脱力させてしまうw
「テリィたん。私は、欲望のせいで自分の信念を裏切ったのょ(いつものテリィたんみたいにw)」
「ソレは最初から信念がなかったからでは(いつもの僕みたいにw)?」
「しかし、自分の信念のためなら、男でも女でも見境なく寝るジェカって…マジ、スゴいわ」
同感だ。彼女こそ"信念の女"だw
「でも、テリィたんも、彼女のお陰で色々線引き出来たんじゃないの?」
ラボの主、車椅子の超天才ルイナが話に入ってくる。
「ルイナ。国防総省の誘いはどーする?」
「5年研究に没頭できて、しかも資金は無制限。テリィたんだったらどーする?」
「良い話だけど…どーやら全員彼女を嫌ってルンだ」
客観的な事実を述べる僕。
「テリィたんも彼女が嫌い?」
「良い現場は、良いヲタ友に恵まれてこそだ」
「つまり?」
僕なりの結論。
「ルイナは、アキバにいるのが良いと思うょ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻。今宵も眠らない捜査本部。
「ベリィに社外アクセスのログは?」
「皆無。そもそも不可能だし」
「でも、件の電力ケーブルは超高圧変電所を経由してルンでしょ?」
またまたDARPAのジェカが口を挟む。
「ソレは、私しかアクセス出来ないわ」
「ウッソ。現に太めのハッカーには出来てたし」
「DARPAのジェカさん?お客様ょ」
ドシドシと足音も荒く本部に乗り込むジョバ・スキン。
「私を会社から締め出すな!」
「ロバァ博士の上司のお出まし?ベリィを開発したスタートアップ、アプル社は、今日からDARPAの傘下ょ」
「待て。アプル社は私の会社だ!」
鼻で笑うDARPAのジェカ。
「ふん。アンタはネットの海に溺れてた"アキバ皇帝"をサルベージし、生成型AIベリィに仕立てただけ。そのベリィを取り上げたら、アプル社には何も残らない」
「ロバァ博士が死んで好都合か?博士が殺された途端に、私の会社を乗っ取るつもりだな?」
「今までが優遇され過ぎてたの。せいぜい隠居生活を楽しむコトね」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻にラボでも結論が出る。超天才は語る。
「ベリィはニセモノだった」
「え。でも、チューリングテストの結果は?」
「合格してる。でも、ソレだけ」
どーゆーコト?超天才と相棒が交互に教えてくれる。
「ミユリ姉様が教えてくれたけど、殺されたロバァ博士は、自分のアトリエでは、ベリィとは正反対のAIに取り組んでた。だから、私達は、ベリィを疑ってみたの」
「つまり、機械としてのベリィの思考、つまり、ベリィのプロトコルを分析してみたワケ」
「その結果、ベリィには、極めて高度な再帰探索がプログラミングされてるコトがわかった」
ココでルイナの余計わからなくなる例え話w
「テリィたんの好きな元祖SF作家にして恋多きシラノ・ド・ベルジュラックの登場ょ。テリィたん同様、元カノづくりの第1人者シラノが愛の言葉を囁くとスルわね。4000人のシラノが毎秒3億の会話を深層学習してデータを解析、常に最高の愛の言葉を導くワケ」
おお!ソレは便利だ←
「将棋の名人を負かすコンピュータと同じ。将棋ソフトは、毎秒2億手の先読みをスル。ベリィも同じ。チューリングテストだけに的を絞り、毎秒10億以上の言葉を深層学習して、毎回最も自然な答えを導き出してた」
「つまり、ベリィは究極のおしゃべりマシン。単なる大規模言語モデルとして予算執行状況の査察に来る会計検査院を騙してたワケ」
「ついでに、私達も騙された。ソレがベリィの存在意義だったワケね」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その日の午後。ジェカと裏アキバの芳林パークを歩く。
「結局ベリィはニセモノだったってコト?」
「ってか知らなかったのか?」
「あのね、テリィたん。首相官邸の委託研究って、失敗率が高いの。DARPAも今度こそ成功して欲しいと期待し過ぎるから…」
僕はオズオズ切り出す。
「やっぱり、プロジェクトの帳簿を見せてもらおうかな」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
捜査本部のモニターに"帳簿"が映る。
「あぁ!コレはヤバいですね。ロバァ博士の発注書。700万円相当の電子機器がクリアの家に届けられてます」
「この手の巨大プロジェクトでは、私的流用も予算のウチなのょ。ナショナルプロジェクトってこんなモンょ」
「責任者が私腹を肥やすならともかく、相手は助手だょ?」
ラギィ警部は、頭をヒネる。
「意外にクリアはベリィの本性を知ってたのカモね」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
早速クリア宅に出向くと…扉が薄く開いている。
「開けっ放しか不用心ね」
「クリア?クリア・エルズ、いますか?」
「あら?ケチャップだと思う?」
キッチンフロアに赤い液体。
音波銃を抜くヲタッキーズ。
「コレは…人間の仕業ね」
シンクの横に血まみれのクリア。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋の捜査本部。
「クリア・エルズの自宅からは、指紋1つ見つかりませんでした」
「死体の防御創と強打痕を見る限り、犯人はかなり感情的だった模様」
「クリアに強い恨みを持つ人間の犯行ね」
ラギィ警部は腕組みして唸る。
「犯人は、先ずロバァ博士を殺し、ボンヌを雇った」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
取調室。巨女ボンヌ・ギボンは不敵に笑う。
「クリアなんて知らないと言ったら警部は困る?」
「安心して。貴女には殺害容疑かかってナイから」
「じゃナンで私は拘束されてるの?」
ラギィ警部は、同席するイケメン弁護士を指差す。
「ソレはね、彼の雇い主がロバァ博士とクリア殺しの容疑者だからょ。そして、囚われのアンタのために弁護士報酬を払ってるのも恐らく同一人物」
途端にモゾモゾしだす弁護士。その弁護士を横目にフト不安を感じる巨女ボンヌ・ギボン。
「OK?貴女に選択肢は2つアル。警察の保護下に入るか、この雇われ弁護士に未来を預けて地獄に落ちるか」
「おい、待て!」
「ジョバょ。私の雇い主はジョバ・スキン」
弁護士の制止も虚しくゲロw
「良くぞ、歌ってくれました」
「あと弁護士を変えたいわ」
「変えれば?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
深夜の神田リバー。プライベート飛行艇がロケットに点火、離水速度に向け、スピードを上げて逝く。
一方、その真正面から艦首にMe163をドッキングした原子力U-boat7C型がランウェイに割り込む。
"死海ダイバー"。ソレはSATOの海底部隊。世界で最も進んだ潜水艦だ。その前部には"死海1"と呼ばれる…
「何処に行くつもりかしら?地球上に逃げ場などないのに」
「やれやれ。捕まえて聞くしかないわね」
「艦長、進路そのまま。"死海ダイバー"は1歩も引かん」
チキンレースだ!衝突直前でガクンと停止スル飛行艇。
ロケットエンジンを完全にカットし、降伏の意思表示。
「ヲタッキーズょ!」
「ハッチを開けなさい!」
「爆破して突入スルわょ!」
音波銃やロケットランチャーが向けられる中ハッチが開く。
「ギブアップ!撃つな!」
「ゆっくり外へ出て来て!ジョバ・スキンからょ!」
「両手を頭の後ろに!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
深夜の取調室にジョバ・スキン。そしてイケメン弁護士。
「確かに太めの傭兵ハッカーにメモリーを消去させたが、断じてロバァ博士と助手のクリアは殺してナイ!」
「またまた。だって、DARPAの予算を独り占めしたかったンでしょ?」
「仮にそうだとしても、だからこそロバァ博士の存在が不可欠だ。でないと、ベリィの実態がバレてしまう!」
ジョバの声はホトンド悲鳴だ。
「でも、ベリィの件は遅かれ早かれバレるでしょ」
「実は…半年後にクラッシュさせる予定だった。首相官邸の委託研究の失敗率は約95%。誰にも疑われナイ」
「…クリアに賄賂を渡したわょね?アレは何かの口止め?」
弁護士共々驚いた顔のジョバ。
「クリアに賄賂?何だソレ?ホントのトコロ、彼女はベリィに関してはホトンド無知ナンだ」
「待ってょ。じゃコレは何?」
「700万円相当の電子機器だと?…そうか。2人の噂はホントだったのか。コレは賄賂じゃない。TOとしての支度金だ」
アキバでは、1部にTOを張る前に支度金を払う風習がアル。
「つまり、クリアはロバァ博士の"推し"だった?」
「待って。今回の犯人はハッキングが出来て…ロバァ博士の妻なら、生成型AIの知識もあるし、夫を虜にした愛人を殺すのも納得だわ」
「全ては嫉妬のせい?何てつまらない事件なの?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
スマートハウスから出て来るジェル。
後手に手錠をかけられ、連行されるw
「夫は700万も推しに貢いでたのょ!貴女達は、あの女を見た?」
「遺体ならね」
「裁判員は、必ず私の味方をするわ。夫は、首相官邸のお金を盗んで推し活してたんだモノ!」
ジェル・トソン。君は、アキバを知らなさ過ぎるょ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ルイナのラボ。
「あら、テリィたん?ココで会えるなんて」
「ルイナならいないょ」
「そう?じゃまた来るわ」
深呼吸してからハッキリと発音スル。
「いや。もう来ないでくれ」
ドアから出かかったジェカは振り向く。
「御挨拶ね。でも、何で?」
「残念だが、ルイナはオファを断るそうだ。今後受けるコトもナイ」
「待って。彼女の才能を発揮できる場は他に無いハズ…」
僕は話を遮る。
「断られるのは不慣れだろうけど、今後ルイナを誘う時は"ヲタ友"を通してくれ」
「つまり、テリィたんを通せと?」
「違う。彼女の"ヲタ友"全員だ」
ジェカは、追い詰められた女豹の目をスル。怖い←
「テリィたん。G7が広島で開かれ、首脳が原爆記念館に逝くかでモメてる。1945年、日本上陸作戦が行われた場合、アメリカ兵の犠牲は400万人以上と推計された。日本の一般市民の死者は1000万人。もし、オッペンハイマーにテリィたんみたいなTOがいたら、太平洋戦争の死者は1500万人増えたコトになるわ」
「一方、君が1953年にマッカーシーの側近だったら、オッペンハイマーの研究成果を簒奪して8年前に救ったハズの軍を裏切ったと中傷するだろうね」
「そ、そーかしら」
も1度ドアを開けて出て逝くジェカ。バタンと閉める。
「nice」
僕のスマホ画面の中で微笑むルイナ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
第2秋葉原高架橋下、通称"新幹線ガード下"。
スク水バスケの選手メイド達がパス回しスルw
「パスをつなげ!流れを止めるな…シュート!」
すくい投げシュート←
「入った!ナイスシュート!」
「テリィ様、すくい投げ作戦は大当たりですね!」
「そうさ。進化した思考こそが時代を先取りするんだ…ミユリさん、今回の事件を通じて思ったンだけど、生命って突き詰めれば思考だと思う。そして、思考とは脳内電流だょね」
「私の必殺技"雷キネシス"には、電撃の瞬間に相手の思考をハイジャックするパワーがアルのです。でも、このパワーの目的は不明」
「種の生存戦略だろ。きっとミユリさん達は人類の進化形ナンだょ」
「…でも、ナゼ腐女子ばかりがスーパーヒロインに覚醒スルのでしょう?」
「生命を生む性のみが覚醒スルのは、ある意味当然だょ」
「自分でも怖くなるの。テリィ様は私みたいなミュータント、お嫌いですか?」
「どーして?僕の推しはパワー持ち。ソレだけさ」
ミユリさんは、僕の胸に飛び込んで来る。
おしまい
今回は、海外ドラマによく登場する"生成型AI"をテーマに、殺人容疑のかかる軍事用に開発中だった生成型AI、そのAIを開発し不慮の死を遂げた人工知能の権威、その美しき未亡人、その生活感溢れる助手、人工知能スタートアップのCEO、国家予算を一手に握り功を焦る当局者、傭兵ハッカーの洗体嬢、史上初の人工知能による殺人事件を追う超天才や相棒ハッカー、ヲタッキーズに所轄の敏腕警部などが登場しました。
さらに、御屋敷対抗の"スク水バスケ大会"や前シリーズに登場した人工知能や超兵器クラスターの過去や現状などもサイドストーリー的に描いてみました。
海外ドラマでよく舞台となるニューヨークの街並みを、今や完全に多国籍インバウンドの街と化した?秋葉原に当てはめて展開してみました。
秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。