傘を差す
晴れていない朝は
天気予報をみる。
傘マークがあったら、
玄関で傘を持って出る。
今朝はそんなことを
しなくても良かった。
初めから雨降り。
わかり易い朝になった。
何も気にせずに、
勢いよく傘を差した。
冷たい雨粒に濡れて、
寒くなり震えた。
山の上の方は
濃い灰色に消えていた。
眩しかった緑が
吸い取られていた。
今年も秋らしい秋は
あまり無いのかも。
夏は痛いほど燃えても、
冬は切ないほど燃えない。
傘を差して歩くと、
通りの街路樹の枝に
先を引っ掛けた。
それほど枝は伸びていた。
この街路樹ももうすぐ
土木事務所が切って
切り株にするんだろう。
古い木は疎んじられる。
傘の骨が少し歪んだか。
いや、気のせいだ。
雨に濡れ、差し直す。
傘とはありがたいものだ。
冬、古木、傘、それに、
ありがたさを思えば、
ひっそりとした人になる。
ひっそりとした父になる。
雨降りの朝に出かける。
父の様子を見にゆく。
傘を差しているのは、
そのためだった。
父はよく働いていた。
体が弱かったのに、
家族のためだったのか。
夢のためだったのか。
父は老いても聡明で、
道理をよく知っている。
あまり何も言わないが、
言葉は胸にある。
何を思っていたのか、
よくわからないまま、
もうあと何年かと、
考えるようになった。
世話をしに行ける。
ちょうどいいくらいの、
介護を用意してくれた。
そんな父にありがとう。
雨は一日中降るらしい。
何ができるわけでも
ないけれど、着いたら、
一緒に何か、食べよう。




