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【完結】りょうこちゃん、せきらら。  作者: 山田 詩乃舞
職業:会社員(試用期間)
22/94

二十 〜EIM・遠藤重工〜②


「何を! オマエ何をした! 森本課長をかい……きゅう」


 二人目も同じように実施しましょう。ポイントは先程と同じく視界から消えるという事です。


「きゅうって流行ってんの……? かい……の次何だったんだろう? 八尋ー受け取ってー」


「ご配慮ありがどうございます」


「奥で光物チラつかせてる輩は何?」


「少々ばかり、外部の良くない筋の方々が入り込んでおりまして、そちらは死ななければ結構ですので、ご配慮は無用かと。やはり良子さんにお願いして正解でした。実に的確な処置をして頂けております」


「いやまあ、それほどでも? 時給上げても良いわよ?」


「そちらは前向きに検討させて頂きます」


 ラッキー! 言ってみるもんね! まあチャチャっと片付けちゃいましようねー。


「はーい、おじ様達ー注目ー。今から刃物持ってない人は優しく眠らせてあげるからそこんとこ宜しくねー」


「君島さん! あっあっ! 鈴井くんっ! 何が……きゅう」


 えっと後二人かな。まともな社員さん。……うん、後はパンチとロン毛と髭ピアスばっかだし。こういう奴らは本当に簡単。指差してね、ぷーっくすくすっと。


「このアマぁぁっ!! おいっタケっ! ちょっと太腿あたりブスッとイッたらんかい! はよイケや!……おおいえあえあ!! あ?」


 わたしに顎を横から突かれて倒れ込むチンピラ。床にごちん、だって。痛そうな音したわね。ちょっと挑発したら相手から目を離して威嚇するなんて阿呆な醜態晒してくれるんだもん。


 綺麗に顎関節外れちゃておまけに脳震盪。優しく頭なんか支えてあげなかったから硬そうな床へ、とってもいい角度で衝突。クワバラ、クワバラ。


 さて、この人は刃物持って無かったからこれで済ましてあげるけど。後のは……取り敢えず、そこの金髪。


「ひぃっ、こっちにくるなっぁ」


 怯えちゃってまあ。そんなナイフの持ち方だと、こんな風に手元蹴られたら自分の二の腕に刺さっちゃうよ? ほら。


「ぐぇぅっっ! 誰か! 誰か! だすげでぇぇ……グベェ」


 運良く動脈切ってないから、大丈夫よ。大袈裟ね。焦って動いて動脈傷付けると面倒だし、顎先軽めに揺らしてあげるから寝てなさい。


「ヒィィァァ!……」


 アンタも。後、アンタもね。構え方ぐらい練習しときなさいよ。ほら膝蹴って、すこーんと刺さる。


「ギャァァァ! 腕がっぁあ!」


「この女っ! ……嘘だろ、ドスが砕けるなんて、アギャッァ!」


 後ろから不意打ちしたら駄目よ? つい反撃しちゃうし、大体死なないぐらいの手加減しか出来ないから痛いわよー。


「ヨシヒロ!! なんてこった! 顔がへこんじまってる、息は出来のるのか! おい!! しっかりしろ!!」


「ねぇ?」


「ひぃぁぁ!! 助けて、助けてくれ! なんでもする、なんでもするからぁ!!」


 後ろから声かけたらチンピラのズボンに染みが。まあいいや、この様子なら何でも喋りそうだし。


「誰かに雇われてるの? それと後何人ぐらいいるの? 答えたくれたら、考えてもいいわよ?」


「ここの副社長だよっ!! 俺たちを雇ってるのは! 全部で二十人はいるよっ! 組総出で雇われてんだ……た、頼むから……きゅう…」


 あっ勝手に意識失った。そんなに怖かった? あとは奥に控えてるあの二人に聞いてみよ。


「そこの二人。下っ端には見えないわね? 何だかバリっとしたスーツ来て良い時計してるしパンチって、今時珍しいアナログタイプ?」


「おめぇどこの誰だか知んねぇが、しらねぇぞ!!」


 ああ、見せ方が足りなかったみたいね。


 【転】で視界から外れて横から頭を鷲掴みっと。


「何だ!? 頭がっ……」


 私の手って小さいからアイアンクローで頭掴むと食い込んで痛いらしいのよ。こうやって持ち上げて……


「アガっ?! イテェ……ヤメロ! やめて……やめてください」


「アンタ達みたいなのに名乗る名前なんてないわよ? いい? そこの髭ピアス。あなたのパンチな兄貴の頭が変形する前に助けたいなら、今から聞かれた事だけ答えなさい」


「片手で人を……ァ……兄貴ッっ!! け、痙攣が……ひぃぃ、死んじまうっ! ひぃぃっだ、、だだのむ!だ、だ、だ、すげでぇっ!」


「ちゃんと答えてくれたら見逃したげるわよ? 終わったらそこのゴミみたいに転がってるヤツラはほっとくとホントに生ゴミになるから病院に連れて行くのよ? 救急車は呼んじゃダメよ? 警察沙汰は嫌でしょう? タクシーか自分達の車でね」


「わがりまじたっ!!」


「よろしい、貴方達は今、何チームに、分かれてる?」


「三チームです!! ここと、後、社長室、それと副社長室に!!」


 はいご苦労さん。もう聞き出せる有益な情報は無いかな? 


「分かったわ、じゃあそいつら連れて早くお行きなさいな」


 さっき落とした人たちも軽く突いて起こしとこ。


「げぇぇ……あっ! ヒイいいぃ!」


 床滑るから急ぐと危ないわよー。あっ……こけた。鼻打ったのね。鼻血が派手に出ちゃって。そうそう気付いたのね、偉い、偉い。仲間をちゃんと連れて帰りなさいね。


「ナイフはちゃんと病院行ってから抜くのよー?」


 で、これでいいのかしら八尋さんや? その顔だと、満足したようだけど。


「人死にが出ずにこの結果は最良ですね、やはり良子さんにお願いして正解でした、残りもよろしくお願いします」


「あいあい、武器持ちは後、二十人ぐらいでしょ? もうさっきの連中から連絡行ってるだろうから、さっきみたいに簡単に行かないでしょうけどまあ、大丈夫かな。社員さん達の説得は次はアンタがやんなさいよ、無理そうならさっきのコースにご案内するけど」


「もちろん善処致します、次は階段を使って十階フロアにある、社長室に乗り込み、社長を救出致します」


「救出って? 社長は何されてんの? 大丈夫なの遠藤重工? 過激派にケンカでも売った?」


 大事件じゃん、ワイドショーがヘリ飛ばして生中継するレベルじゃん。私、すんごい事件に巻き込まれ中。


「室長ぉぉ! ……貴方を信じても良いんですかっ!!」


 どうしたどうした。突然どうした。社員のおじさん、膝付いて地面に向かって。その感じだと悪いのこっちみたいな風になるからやめてよ。


「守屋さん……」


「貴方がっ! 会社を元の姿に戻すとっ! もっと早くに言って欲しかった……」


「今後、私が為すことを、皆さんに見て頂くしかありません」


 イヤイヤいやいや、八尋さん。膝に縋ってオイオイ泣かれるって……何したの? 絶対濃いめの事情があるじゃん。こんな場面見せられたのにこれから出会う人達、気絶させなきゃなんないの? 後味悪ぅ。


 おじさん落ち着いた? 八尋に強い頷き送って奥に行っちゃった。


 取り敢えず寝かせた人みんな起こそうか。


 背中押して、よっこいせっと。起きた? 何でそんなびっくりすんのよ、もしかして私の顔見てびっくりしてない? 目つきは悪いけどさ……自覚あるけど、地味にショックなんだけど……。


「ねえ、質問」


「はい、なんでしょう。」


「作戦変更しても良い?」


「何か現時点で問題でも?」


「いやいやいや、問題だらけでしょうが。私を冷酷マシーン扱いしてない? 嫌なのよ。あんなの見せられたのに、この次出会う社員さんに強制お眠りコースとかはちょっと出来ないわよ?」


 それと起こす時に毎回この死神を見たかの様な顔で見られたくないの。


「効率はとても良いのですが。ある程度分かり易い力の差があるほうが説得もしやすいので」


 説得なのそれは? 脅迫じゃ無くて?


「それはもう、某組員さん達を贄にするということでひとつ手をうちましょうよ」


 そっちなら心も痛まないし。


「では少し派手にお願い致します」


「これ以上派手に? 今日はえらく好戦的ね?」


「禍根残さずとは行きませんので。この後、元から断つ作業が発生しますが、その作業が楽になりますから。具体的にいうと反社会的組織を系列ごと消し去ります、殺したりはしませんよ?」


 さらりと何でもない風に怖い事言ってる自覚ある? 


「誰がやんのよ? いやよ私、そんなめんどくさいのは手伝わないからね」


「ご安心下さい、その後処理は私の手番で対処致します、社内にいるその筋の方だけを殺さず永遠に戦闘不能にして頂ければ良いので、良子さんに後程、火の粉が掛かることもない事を断言致します」


「殺さず永遠に戦闘不能って凄い語句よね、初めて聞いたわよ? 悔しい事に得意分野の響きだけどね」


 さっきの兄貴分も連れて逃げてったのも、もう荒事とか無理でしょうしね。暫くは誰かが挨拶で手を出してきても怯えるぐらいには気当てしといたし、昔っから便利なのよね、この気当てって、師匠に教えて貰った技でもしかして一番使ってるんじゃないかな?


 武術の覚えがあろうとなかろうと、経験した事の無い威圧感浴びたら誰でも逆らう気なんか失くすしね。ここだけの話、流派の技でも何でも無いのに一番練習したかもしんない……


 でも時々居るのよねー。気当たりとか平気でむしろご褒美みたいなやつ……例外なく強いし。


 あら……? はぁ。いるなこりゃ、面倒くさそうなのいるじゃん。かなり上のフロアから来てるわね。


 ご丁寧に同じぐらいの強さでこっちに向けて気当てしてきてんじゃん。さっきの一瞬だけでこの距離、四十メートルぐらいかしら? 斜め下だし視界もないのに感知して、同じぐらいの強さで返してきてる……結構な、実力者ね。


「良子さん、社長室に」


 八尋も気付いたのね。成程、あの方向が社長室なのね。


「いるわね。強いわよこれ? 気当ての精度、密度。中々練れてるわね」


「人間以外の存在が顕現しているか、神、悪魔を宿すものか…想定内では有りますが、依頼料は再考させて頂かないといけませんね」


「別に追加料金だとかは言わないけど」


「これは要らぬお節介であったようですね、私で有れば相打ちも覚悟する相手なので、つい」


 その言い方だと相手の詳細知ってんじゃ無いの? って事で八尋を見てみても反応無し。私、上手くジト目出来ないのよ、誰に聞いても親の仇を睨んでるって言われるし。その視線を受け流すスキル、どうやったら身につくのそれ。何も言わないって事は私に任せるつもりかな?


「まあ、いけんじゃないの? 師匠とか鞍馬のお爺ちゃんより強いなんて事も無さそうだしね、でも相打ち覚悟は言い過ぎじゃない? 八尋の雷とかで完封出来ると思うけど」


「我が君。この相手について申し上げたき事がございます」


 どしたん? 何か今日は出たがるじゃん。影からぷかっと水嶋登場っと。


 ワタシが指示してる? アクア? あら貴女最近、ペンダントトップみたいになって首から自分を下げろって言ったきりあんまり話しかけてこなかったけど。


 いつも観てるし、大丈夫? そうなの? あんまり怒らないであげて? 水嶋を? ……怒らせる様な事言わなけりゃ良いだけよねそれ。


「この相手についですが、我が一族の婆娑羅と思われます」


「水嶋」


「はっ! ここに!」


「ペナルティ」


 ホント、アウト、ダメダメやんか。取り敢えずアイアンクロー。


「ぐわぁぁぁ!! わ、我が、君! 申し訳ございませぬぅぅ!っぅ! っう! ごごご勘弁をっっ!!」


「アンタね? この八尋絡みの仕事で揉め事無くしたげるっつうから影に潜んでてもまあいっかって思うし、プライベートダダ漏れでも我慢するし、実家じゃ無い時はご飯まで作ってあげてんのよ。 ねえ? アンタの身内と闘うっていうのはどういう事?」


 これは流石に頂けない。だって絶対知ってたよね? 相談ちゃんとしようよ。教えてくれないのはダメだと思う。アンタの身内なんでしょ? それと闘わせようとするのはどういう神経なの? 主従関係とかじゃ無くて、結構信用してきてるのに……


〈怒っちゃダメ〉


 っ……分かったわよ、アクアもそんな大きな声を頭に響かせないで。えっ? 最初に言おうとしてた? はあ……ごめん。カッなってやりました。


「で、で、ですので急ぎ、お、お、お詫びしようと……どうかこの下僕の頭よりお手をお離し頂けないでしょうか……」


 放すわよ。もう。……それ(わざ)とへこませてない? 


「この良子さんアイアンクローを忘れない事ね!」


「忘れませぬっ!」


「宜しい。で? アンタがなしつけんの?」


「誠に厚かましくも、我が君のお力におすがりさせて頂きたく、お願い申し上げます。私が闘って確実に勝利を目指す場合、殺す事を前提に闘う必要があります。しかしながら同じ一族である奴を手にかけるのは……それと奴の実力が高いせいで戦闘の規模を小さく抑えることは難しく周辺への被害が大きくなると予想されます」


「最初からちゃんとそう言いな……言おうとしてたのよね、ごめん。分かったわ、私がやるわ。八尋も相打ち覚悟っていうからそれなりの強さだろうし、ちょっと本気だすわ」


 八尋さん。涼しい顔して立ってますけど貴方絶対知ってたよね? そろそろちゃんとした説明が必要よ? 見てこの不信感渦巻く私の顔。


「今回で()()()()ほぼ全ての事を良子さんにお伝え出来ると思いますから……」

 

 あら、珍しい伝わったわよ? 期待しないで待ってまーす。

 

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