表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/343

目上の人との交流は、神経を使う 前編

 前回までのあらすじ

 旅の途中で出会ったイリス王国第一王女、レリアの提案(たくらみ)で、レリアとロゼの部屋でスタンバイする事と成ったシルフィとアリサだった。


 ――――――


 レリア達の部屋でスタンバイする事二十分、ポーションの瓶一つと、細い棒きれ四本を持って、レリア達は帰ってきた。

 まるで女子会のような状態に成るが、レリアが開催しようとしている悪魔的ゲームの内容のせいで、台無しになる。


「さぁ、今日は夜更かしして【ドキッ!!女だらけのお姫様ゲームを開催したら、なんやかんや恥ずかしい結果になったけど、面白いから、私は一向にかまわんッッ!!】開催いたしましょう!」

「(ネーミングセンスが相変わらず酷い)」

「(どこの海王だよ)」

「(酔いが回ってきた)」

「それでは、尺も圧しているし、さっそくルール説明!」


 そう言ったレリアは、さっそくルール説明を開始。


 先ず、空のポーションの瓶の中に、四本の棒を入れる。

 その棒を、『姫様だーれだ?』の掛け声と共に、一斉に引く。

 棒には、赤い印の書かれた当たりが一本と、他三本には数字が書いてある棒が入っているので、当たりを取った人が、好きな番号を指名し、好きな命令を下す。


 いわゆる王様ゲームと同じルールである。

 ルールを説明すると、レリアはデモンストレーションの為に、自分が赤い印の付いた棒を手にし、他の三人には適当に数字の付いた棒を手渡す。


「(これ、ようするに王様ゲームだろ?てか、姫様アンタ!!)」

「それじゃ、えーっと、三番の人は……お姫様に抱き着く!(三番がロゼってこと、表情で解るわ)」

「ちょ!h、カーミン様お戯れが過ぎます!」

「うふふ~お姫様の命令は絶対よ~」


 ニヤニヤとした表情を浮かべるレリアは、赤い棒を扇子のように弄び、ロゼを煽る。

 顔を真っ赤にしたロゼは、レリアの命令に従い、レリアに抱き着くと、レリアの体温や匂いが、ダイレクトに味わう。

 加えて、最低限の身だしなみは整えているので、ほんのりと良い香りが漂ってくる。

 というような状態を維持し続けた結果、とうとうキャパオーバーで気絶したロゼであった。


「ふにゃぁ~」

「(可愛い!!)」


 そんな彼女を、肌を妙につやつやとさせたレリアが蘇生し、ゲームは始まる。

 瓶に刺した棒を、全員で目を瞑ってシャッフルし、とうとう第一戦目が開始された。

 しかし、このお姫様ゲーム、実はレリアにとって非常に有利なゲームである。

 何故なら、姫の棒には、かなり見えづらく印が付いており、レリアだけが、その印を認識している。


 そして、何故このようなゲームを企画したのかというと、アリサとシルフィの仲を、少しでも縮める為。

 どう見ても、シルフィはアリサに気が有る。

 だが、見ての通り仲は進展していない。

 だったら、ちょっとは進展できるように、多少無理矢理であっても、スキンシップを命令して、少しでも二人の仲を縮めたかった。


 というのは建前で、シルフィか恥ずかしがる。

 もしくは、無表情なアリサが、表情を崩しだす所を見たいだけである。

 レリアが命令を下す準備は整っている。

 後は誰が何番を持っているか、これが問題であった。

 だが、それは割と簡単な方法で看破できる。

 ロゼはレリアのみが判別できる癖を出すので、何番かは、表情だけですぐにわかる。


「(さぁて、さっそくこのお姫様の棒を……グヘへ)」

「「「姫様だーれだ」」」

「……あ(姫様の棒シルフィさんに取られたぁぁ!!)」


 煩悩で出遅れたレリアは、機会を逃してしまう。

 そして、ちょっと酔いの回ったシルフィが言い放った命令はというと。


「私か、じゃぁ、二番の人、下着に成って下さ~い(できればアリサで)」

「(中年の親父か!?というか、もしかして今回私がツッコミ!?)」


 その命令を従う事になった人間は、その命令の通り、下着姿と成った。

 二番を引くことになってしまったレリアが、である。


「「((姫様かよぉぉぉ!!))」」


 この異常事態に、アリサとロゼは、心の中で突っ込んだ。


「チッ(アリサの下着姿が見れるかと思ったのに……)」

「(舌打ちしたよこの子、アンタ自分が姫様に何したと思ってんだよ!相変わらず酔うとろくなこと無いよ!!)」

「(マズイ、何とかしてこの状況を打開しなければ、このままでは、王家始まって以来の黒歴史!!)」

「(う~、何故このような事に……いや、二人のイチャイチャを見る為であれば、たとえ乳房をさらすことになろうとも!)」


 下着に成ったレリアを何とか元に戻す為の方法を、アリサとロゼは考え出す。

 そんな中で、レリアは煩悩まみれの思考を巡らせていた。

 レリアには勝算が有る。

 お姫様の権限を得られる赤い印の棒、それにはかなり細かく印が付いている。

 遠目から見ても、ただのシミにしか見えない棒を引けば、後はレリアの思い通りになる筈なのだ。

 しかし、順番で引こう、という事を、レリアは切り出せなかった。

 何故なら、一斉に引こうと切り出したのは、他でもないレリア自身。

 急なルール変更は、むしろ怪しまれる。

 ならば、他の三人よりも早く、姫様の棒を掴み、取り出す。

 これしか方法は無かった。


「(何としてでも、次で姫様を引き当て、アリサさんとシルフィさんをくっつける、そして次で服を回収!できればロゼの服を手に入れる!あの子の恥ずかしがる姿もみれて一石二鳥!)」


 だが、アリサとロゼの思考は、そんなレリアの考えに反していた。

 ――先ず、アリサはというと。


「(なにやってんだよバカ姫、なに二番引いちゃってんだよ、まぁいい、何とかして私が当たり棒を回収、姫様の恰好を何としてでも戻さなければ!)」


 だが、確率は四分の一だ。

 一番良いのは、本物のお姫様であるレリアに、赤い印の棒が渡る事。

 そうすれば、余興の軌道修正は叶い、更には、今後の進行次第では、一国の姫とのコネクションを構築することができる。

 だが、相手は一国の姫君。

 もしもこれ以上の阻喪があろう物であれば、今後の任務に支障だけでなく、やがて構築される予定の一つ、異世界の交易もままならなくなる。

 というか、最悪死罪もあり得る。

 エルフ達だけでも厄介だというのに、更には国にまで追われる事になるのは、正直アリサの望む事ではない。

 しかし、普通にやってはラチが開かない、それでも、アリサには勝算が有った。


「(姫様の棒であるというのは、あのちょっと変なシミの付いた棒、あれを入手できれば、何とかなる)」


 実はアリサ、レリアの仕掛けているイカさまに気付いていた。(レリアが犯人とは気づいていない)

 何としてでも、他の連中よりも先に、その棒を回収すれば、この異常事態を回避することができると、食い掛るようにして身構える。


 ――その次に、ロゼはというと


「(姫様、何とはしたないお姿に、おのれシルフィ、姫様をこんな目に……)」


 膨れ上がって来る怒りを、騎士としての精神力で何とか抑え込み、先ずは冷静に状況を整理する。

 一応衛兵になるには、多少頭もよくなければならない。

 とはいえ、ロゼは軍師に成れる素質があるほどの切れ者では無く、最低限の読み書きができる程度の学力しかない。

 それでも、ロゼはレリアの恰好を直す方法を考える。

 その為には、やはり自分が姫の棒を取る事しかないと考え、赤い印の棒がどれか探る。

 アリサはレリアの用意したイカさまに気が付いたが、ロゼの場合は、イカさまに気付いてはおらず、自分なりの方法で看破しようとする。


「(あれだ、あれから姫様とシルフィの匂いがする!)」


 鋭い嗅覚で、レリアとシルフィの匂いを察知し、姫様の棒を確認した。

 後は自分が下すべき命令を、ロゼは考え出し、一番に思い浮かんだのは、自分の服をレリアが着る事だった。

 結果、レリアが自分の私服を着ている所を想像した途端、顔が急に赤くなる。


「(ひ、姫様が、私の服を!?そしてその服を次に私が……って、何てはしたない事を考えているんだ私は!!)」

「さて、第二ラウンド、始めましょうか(次こそあの姫様棒を取って見せる)」


 レリアの一言で、アリサとロゼは利き手をボキボキと鳴らしながら、準備態勢に入る。

 謎の気迫に押されるレリアであるが、その程度では彼女の決心が折れる事は無く、レリアも戦闘態勢に入る。

 そんな中で、シルフィだけは、普通に楽しもうとしていた。


『姫様だーれだ!!』


 その叫びと同時に、三人はマジモードで棒の束に激突する。

 衝撃で、棒の全てが空中へと散り、争奪戦第二ラウンドが勃発。

 アリサは自身の出せる最高の出力をたたき出し、ロゼは騎士として鍛えた体をフル活用し、レリアは淑女の嗜みで得た身体能力を使用。

 だが、三人の交差した手に、当たり棒は弾かれ、偶然にもシルフィの手に落ちてしまう。


「あ、また私だ」

「「「ええええ!!?」」」


 ――そんな偶然有る!?


 三人は心の中で同時に突っ込んだ。

 仕方がないので、散らばった残りの棒を手に取った三人は、シルフィの命令を待つ事になる。

 アリサは、できる事であれば、次は穏便に済む感じの命令を期待し、ロゼはレリアに阻喪の無い命令を祈る。

 そんな中で、レリアだけは、アリサとハグかキスをするような命令を期待していた。


「えっと(さっき悪い事しちゃったし)一番の人、この中で一番寒そうな人に、服を貸してあげて」

「(シルフィ!さすがです、流石ツッコミ役!常識人!ツッコミしか能が無いなんて言って申し訳ございません!まぁ、私二番だけど)」

「(おお、考え無しの変態かと思えば、なかなか空気の読めるエルフだったのか、しかし、惜しくも三番か)」


 そして、一番を引いてしまい、顔を真っ赤にしたレリアが、下着を外し、ロゼに手渡した。


「(やっぱ姫様かよぉぉ!!ていうか、この展開どっかで見た事有るんだけど!大丈夫なの!?)」

「(姫様の匂いが直接来るぅぅ!家宝にしたいぃぃ!!)」

「(あちゃ~、ちゃんと見ておけばよかった)」


 胸を両手で隠し、顔を赤らめるレリアであるが、羞恥心よりも闘争心の方が勝っており、むしろ生き生きとしていた。

 ロゼは、レリアの下着の匂いを嗅いでいたが、すぐに我に返り、次こそはと、息巻きだす。

 アリサも、これ以上の阻喪をしでかさない為にも、正確に棒に狙いをつけだす。


「(次こそ、あの二人のイチャコラを見てやる!!)」

「(ふぅ、あれ?私、何を……そ、そうだ、姫様を救わなければ、私の手で!)」

「(今度こそ、今度こそ姫様をあんな辱めから救わなければ、打ち首とかそんなレベルで済むわけ無い!いや、逆に考えろ、これ以上の辱めを受けるような事は無い、民衆の前で裸体をさらす以上の事なんて、皆無に等しい)」

「(なんか眠くなってきた)」


 それぞれの思惑を胸に、ゲームは再開する。

 三度目の『お姫様誰だ』宣言が成され、再び棒の争奪戦が開催される。

 その結果、またまたシルフィの手に、当たりである赤い印の付いた棒が、ごく普通に渡ったのであった。


「……ツイてるのかな?」

「(お願い、次こそアリサとイチャイチャを狙った命令をお願い)」

「(何だ?この運の差)」

「(作者この野郎)」


 三人の変な視線を気にすることも無く、徐々に面倒くさくなってきたシルフィは、思い付きで適当な命令を下す。


「えっと、三番の人、ここに居る人全員の似合いそうな服買ってきて」

「(なんか、かなり投げやりだな……私一番だけど、この流れだと……)」

「(二番か……考えたくないが、もしかして)」


 恐る恐るレリアの方を向いたアリサとロゼは、死んだ魚のような目となってしまっているレリアの姿を、視界に映す事になる。

 二人の予想通り、レリアの持つ棒には、三番と書かれていた。

 もはや恥部を隠す事すら忘れたレリアは、何かにとりつかれたような立ち方で立ち上がり、ぼそりとつぶやく。


「行ってくるわ」

「「行かなくて良いです!!」」


 ゆっくりと扉を開けて出て行こうとするレリアを、アリサとロゼは慌てて食い止める。

 急いで立ち上がった結果、ポーションの瓶がアリサの足で蹴られ、シルフィの額に命中し、気絶してしまったが、そんな事を気にしている余裕は無かった。

 このままでは、一国の姫に露出プレイをさせることになってしまうのだから、気絶程度にかまっている場合では無い。


「離して!姫様の命令は絶対なのよ!!」

「落ち着いてください!たかがゲームなんですから!そんな本気にしないでください!」

「そうですよ姫様!貴女がこんな時間に全裸で徘徊なんて、王家の存続すら危うくなります!!」


 あがくレリアを、必死に抑え込んでいると、取っ組み合いはヒートアップしてしまい、近所迷惑となってしまう。

 しかもロゼに至っては、レリアを偽名で呼ぶことを忘れ、普通に姫様呼びと成ってしまっている。


「……ん?あれ、何処ここ?……う、頭痛い」


 アリサ達が数分間揉み合っていると、気絶と酔いからシルフィは目覚め、知らない部屋に居るという事と、頭が妙に痛む事に気が付く。

 数秒頭を押さえると、アリサとロゼ達が、何故かもみ合いになっている事に気付くが、何が起きているかまでは、覚えて居なかった。

 一先ず、止めに入ろうと、仲裁しようとしたその時だった。


「だ~か~ら~」


 レリアの背後を取ったアリサは、レリアの腹部に腕を回し、体を勢いよくそらせたのだ。

 所謂、ジャーマンスープレックスと呼ばれる、プロレス技である。


「一国の姫がそんな破廉恥な事するなぁぁ!!」

「一国の姫に何してんのぉぉぉ!!?」

「姫様ぁぁぁ!!」


 三人の叫びが木霊する部屋の床に、レリアは後頭部を叩きつけられてしまった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ