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エルフとガイノイドの百合劇場  作者: B・T
スイートピー編
306/343

教皇 中編

 会議の日から三日後。

 カルミアの町より、一機の揚陸艇が飛び立った。

 今回は外交のような物であるが、道中の魔物に備え、最低限の装備は積んである。

 その機内の小隊ルームで、シルフィはベッドに転がりながら、言葉をこぼす。


「……やっぱり、物々しくない?」

「まぁ、空の魔物の襲撃も有るでしょうし、それに、敵対心が無い事を伝えるのにも、色々と必要ですから」


 小隊ルームは、三段ベッドが二つ置かれる簡素な部屋。

 シルフィが転がるベッドの向かいに座るリリィは、シルフィの疑問に答えた。

 最低限とは言え、エーテル・アームズも数機程積んでいる。

 対空警戒用と言うのも有るが、目印として、彼らが白旗を掲げる事に成っている。

 必要無いかもしれないが、護衛の兵士も、一個小隊程連れてこられている。


「……」

「どうかしましたか?」

「やっぱり、嫌な予感が抜けなくて」


 今日になってから、シルフィの未来予知は一切働いていない。

 未来予知が使えなくなるという事は、シルフィ達が死ぬ未来も同義。

 誰かに妨害されていないのであれば、今日が命日になる危険がある。

 そのせいで、とてつもない不安に駆られていた。


「では、何か気の紛れる話でもしましょうか?」

「うん、そうして」

「(とは言ったが、何を話せば)」


 リリィは提案通り、シルフィの気がまぎれそうな話を考える。

 適当に言い出した言葉だったので、何を話すか決めていなかった。

 シルフィの目の前で、考えるポーズを取る事数秒経過し、リリィは何を話すのか決める。


「……そうだ、冒険者のランクの事、覚えていますか?」

「ん?うん、Aとか、Bとかで、上下が決まってたね」

「その事で、何か気付かれた点はありますか?」

「……そう言えば、ゲームとかのランクも、同じだった」


 リリィが思いついたのは、冒険者に使われているランクのアルファベット表記。

 基本は、AからFのランクが与えられており、最高の物はキレンのみに与えられたSランク。

 この優劣は、リリィ達の世界から輸入したゲームでも、同じように採用されている。


「……確か、私の里で見つけたコンピューターには、ジャックの世界の古代文字が有ったよね」

「ええ、それに、その文字はヴィルへルミネの研究所にも有ったとの事でした」

「偶然じゃない、よね?」

「ウム、確かに偶然の範ちゅうを超えておるな」

「またしれっと」


 またもや入り込んできたルシーラも、リリィの持ち出した話に賛同した。

 シルフィの転がるベッドの上から身を乗り出し、話に加わる気でいる。

 部屋にはこの三人だけなので、到着までの暇つぶしには丁度いい。


「以前リリィの世界の文献を読んだが、我々の世界の文字に似ておった事も考えると、何か繋がりが有ると見てもよいだろう」

「あ、そう言えばそうだったね」

「ええ、そうですね(文献って言うか、あれ、ただのラノベなんだが)」


 冒険者達のランク以外でも、シルフィ達の世界と、リリィ達の世界の文字は似ている。

 その事は、ゲーム同様に輸入されたライトノベルで、シルフィ達も知っている。

 因みに、ルシーラは勇者が活躍する王道の話をよく読んでいる。


「と言っても、文字が似ているという事と、ルドベキアの暗躍などが関わっているのか、疑問ではありますね」

「そうかな?考察するには、良い材料だとは思うけど」


 話を持ち掛けたリリィだったが、話題が以前の件と繋がるか疑問だった。

 何しろ、世界一つを見ても、似通った文化が生まれる事は有る。

 相撲やレスリング、剣道やフェンシング、形が違っても、似たスポーツが生まれるように。


「うむ、リリィの言う通り、単一の世界であっても、似た文化が生まれる事はあり得る、しかし、文字はそうも行かぬと思えぬか?」

「……確かにそうですが、文字の起源の話になると、数千年単位の時間が必要です、彼女一人ではとても」


 寝方を変えながら、ルシーラはリリィの考えを否定した。

 エルフの最高寿命と言われているのは、およそ千年。

 その程度であれば、スポーツ程度を浸透させるには十分すぎる。

 しかし文字の始まりとなると、その何倍もの昔から存在している。

 ルドベキア一人の寿命で、文字を浸透させる事は不可能だ。

 そんなリリィの言葉を前に、ルシーラは首を横に振る。


「リリィよ、その前提からおかしいと思わぬか?」

「……彼女以外にも、構成員のような物が居た、とでも?」

「え、そうなの?」

「いや、あくまでも、余の仮説のような物だ、本当に居たかは解らぬ」


 リリィ達の前提では、ルドベキアは一人で全ての事を行っていた。

 だが、彼女に仲間のような物が居たという事は、考えていなかった。

 そうなると、ジャックが向こうの世界で戦っている以前から、活動していたと言える。


「その仮定で話すとするのなら、彼女はこの付近の惑星で暗躍していて、他のメンバーは、別の惑星で活動中、という事に成りますね」

「それ以外だと……もうあの人しか居なくて、後を継いでもらう人を探してる、とか?」

「……ウム、それも考えられるな」


 シルフィの発言に、ルシーラは首を縦に振った。

 彼女の意外な反応に、リリィは驚く。


「そうなのですか?」

「ああ、天は生命を破壊する能力も有るが、その逆に、生命を誕生させる力が存在する、応用すれば、傷の手当てもできる」

「へ~、そんな事で来たんだ」

「知らなかったのか」

「うん……ごめん」


 魔法が使えないというコンプレックスのせいで、ずっと誰かの傷を治癒するという事は思いつかなかった。

 何しろ、傷を治せる属性は光のみ。

 使用者は少ないので、ヘレルスのような回復職は、冒険者達からは引っ張りだこだ。

 というか、今までの事を考えても、リリィは治癒魔法の意味が無く、軍に入ってからは、医療班に頼りっきりだった。

 状況的に言って、シルフィが治療するより、専門家に頼んだ方が確実だった。


「……生命を生み出す……という事は、惑星に生命体を満たす事も?」

「うむ……尋常でない程の量、世界一つを包める程の魔力が必要だが、可能だろうな」

「成程」

「……」


 目を合わせたリリィとマリーは、互いに何を考えているか悟った。

 世界一つを包める量の魔力は、今のリリィであれば、何とかできそうだ。

 そこにシルフィの力が加われば、荒廃している世界を満たす事が出来る。

 もしかすれば、ルドベキアの求める物は、そこにあるだろう。

 それが二人の考える事だ。

 以心伝心の如く見つめ合う二人だが、その様子を、シルフィは良しとしなかった。


「(……なんか、目の前で不倫されてる気分)」


 頭が回り、知識も豊富な、元魔王ルシーラ。

 難しいリリィの話等であっても、簡単に飲み込み、普通にやり取りを出来る。

 彼女より長く居る筈なのに、話に入る事さえできていない。

 その事に、シルフィは劣等感と嫉妬を覚えてしまった。


「(い、いけない、いけない……もう劣等感で貶しちゃ……でもなぁ~)」


 細い目でリリィの事を見るシルフィは、日常におけるルシーラの事を思い出す。

 彼女の気分で、急に出てきては引っ込む。

 そんな事が何時もの事だが、リリィと話す時は何処か嬉しそうだ。

 まるで、共通の話題がきっかけで、徐々に惹かれ合う関係の如く。


「(……時々だけど、ルシーラさんから色目が感じる気が……だ、大丈夫、リリィは私から離れたりしないから……でも、以前までのリリィの性癖って)」


 リリィ程ではないが、やはりシルフィにも独占欲は有る。

 マリーであればまだしも、ルシーラは少し複雑だ。

 とは言え、妹に手を出してしまっただけに、強く当たる事が出来ない。


「……」

「(シルフィが嫉妬してる……なんだ?ゾクゾクするな……ま、今まで散々嫉妬させてくれたんだ、少しくらい報復しても)」


 半分以上は、シルフィも不本意な事であったが、リリィは散々嫉妬してきた。

 シルフィと嬉しそうに話す、カルミア達姉妹。

 それだけであれば、何とか克服したのだが、いつの間にかマリーまで加わった。

 自分でも成長を感じる程、嫉妬を抑えているつもりだが、たまには報復したかった。


「……あの、ルシーラさん、少し」

「ん?なんだ?」

「ッ?」


 手招きしたリリィは、ルシーラの事を隣に座らせる。

 そして、何時もシルフィにやる様に、手を絡め、口をルシーラの耳に寄せる。


「……」


 そのせいで、シルフィは顔を赤くしながら睨みだしてしまった。


「(あ、やべ、楽しい)」

「フン!」

「ビュッ!」


 新しい扉が開きかけたところで、ルシーラはリリィの顔を壁に叩きつけた。

 壁にめり込むリリィの頭を掴みながら、ルシーラは赤黒いオーラを出す。


「それ以上お姉ちゃんを困らせるなら、ここで殺すよ?」

「う、あ、ご、ごめんなさい(マリーも無理矢理出てこれるの忘れてた)」


 リリィに攻撃したのは、ルシーラではなくマリー。

 マリーはリリィの事を友人のように思っていても、恋情に関する物は無い。

 どちらかと言えば、シルフィの方にその手の感情がある。

 なので、今のリリィの行動には感心しなかった。


「私じゃなくて、お姉ちゃんにでしょ?」

「う、そうですね」


 マリーはリリィの頭を壁から引き抜き、シルフィの方をむかせた。

 そして、リリィはシルフィに対して、深々と頭を下げる。


「あの、調子に乗ってすみません」

「あ、いや、良いよ別に……」


 苦笑しながら、シルフィはリリィの事を許した。

 しかし、少し顔を赤くするシルフィは目を逸らす。


「ちょっと、興奮したし」

「……」

「(……今のお姉ちゃん達の気持ちが、全然わからない)」

『(お子様には、まだ早い世界のようだな)』

「(うるさい)」


 良く解らない会話に、マリーは困惑してしまった。


 ――――――


 しばらくして。

 リリィ達の乗る揚陸艇は国境を越え、公国へと入国し、目的の町へと向かっていく。

 更に三十分程飛び、目的地上空に到着。


「……お、あれだな?」


 もはや教会というより、城ともとれる程巨大な建造物を中心に、運河や市街地が広がっている町が、モニターに映った。

 ブリッジに立つカルミアは、モニターに映る巨大な教会に釘付けとなった。

 この世界の文明でも、最先端と思える程、美しく神々しい。

 信仰心なんて物は無いカルミアであっても、思わずひれ伏したくなってしまう。

 それは、少佐とチハルも同じ事だ。


「……流石、この大陸の宗教の中心だ、あれほどの教会、我々の技術でもどれだけかかるか」

「はい、よく見ると、精巧な彫刻も有りますので、完全再現には何十年もかかると思われます」


 現在使われている技術であれば、土木面であれば容易くできるだろう。

 しかし、彫刻などを見る限り、相当な技術を持った職人が必要だ。


「少佐、センサーに感あり、市街地より、数体の飛行物体が飛び立ちました」

「ッ」


 そんな風に呆気に取られていると、クルーの一人が報告をしてきた。

 おかげで我に返った少佐は、指示を下す。


「……恐らく、迎えであろう、エーテル・アームズを一機、非武装状態で出撃、コンタクトを図れ」

「御意」


 向こうも少佐達に気付いたらしく、市街地から偵察部隊のような物が飛び出した。

 そして、それに応えるべく、エーテル・アームズ『コンドル』を出撃させる。

 もちろん武器の類は全て外し、積んでおいた白旗を装備。

 ヘレルスも同行させ、公国の航空戦力と思われる部隊と接触する。

 打ち合わせ通りの状態で、一機が揚陸艇から飛び出す。


「……しかし、こちらの世界でも、白旗が通用して助かった」

「ん?なんか有ったのか?」

「いや、少し昔のアニメでな、白旗は宣戦布告を意味する宇宙文明に対し、知らずに白旗を上げ、誤解から戦争になったという物が有ってな」

「……そうか(何時のアニメだよ)」


 少佐とカルミアのやり取りが終わった辺りで、コンドルからの通信が入る。


『こちらコンドル、公国の騎士とのコンタクトに成功、これより、揚陸艇を誘導します』

「ッ、了解した、誘導を頼む」

『は』


 通信が終わると、コンドルのパイロットは、公国の騎士たちと共に誘導を開始。

 騎士たちが乗るのは、巨大な鳥型の魔物、ハーピー。

 比較的大人しい魔物である為、魔法無しで手なずけ、馬の代わりとして扱われる事も有る。

 だが、安定性の問題や、馬代わりとして扱われるようになった歴史も浅い為、あまり普及していない。


「……鳥を使った騎兵か」

「て言っても、こっちの世界でも珍しいらしい、実際、採用されてるのこの国位らしい」

「だろうな、落ちたら一巻の終わりの高度まで、手綱やあぶみだけで飛ぼうなどと、命知らずもいい所だ」

「一応命綱みないなので繋がってるらしいけどな」


 そんな話をしながら、案内を受けていると、町の外の比較的広い場所にでる。

 そして、コンドルのパイロットの誘導に従いつつ、揚陸艇は着陸。

 着陸時の衝撃を、僅かに感じながら、少佐達はアナウンスを開始する。


「よし……各員へ通達、目的地へと到着した、指名されたメンバーは、揚陸艇から降りるように」


 揚陸艇内に声を響かせると、少佐は椅子から立ち上がる。


「チハル、留守を頼む」

「はい」

「レッドクラウン、アタシらも行くぞ」

「はいよ~」


 レッドクラウンも呼び、少佐とカルミア達は、揚陸艇を降りて行く。


 ――――――


 数分後、正装で降りたメンバーは、馬車を連れた人達と対面する。


「ようこそお出で下さいました、案内役のメフィスと申します」


 ヘレルスと似た服を着た女性、メフィスは、少佐達に対して一礼する。

 一切露出の無く、白に金色のラインが入ったローブのフードを、深々と被り、素顔も仮面で隠している。

 女性と認識できるのは、僅かに見える体の凹凸と声だけだ。


「こちらこそ、招待して下さり感謝します、私はカルミア、本日は案内をよろしくお願いいたします、メフィス殿」


 何時もの彼女からは、考えられない程丁寧な口調で、カルミアはメフィスに一礼した。

 カルミアに続き、後ろで待機するリリィ達も、頭を下げる。

 因みに、マリーだけ遅れて頭を下げた。


「これは、ご丁寧に、では、馬車でお送りいたしますが、先ずは皆様、こちらのローブをまとってはいただけますか?」

「あ、ハイ(やっぱ、スーツじゃマズかったか?)」


 メフィスは、同行している使用人達に頼み、白い無地のローブを渡していく。

 全員に着せる辺り、やはり背広ではだめだったかもしれない。

 そんな不安に駆られるが、理由はメフィスの口から説明される。


「……えっと、この服は、やはりいけなかったでしょうか?」

「申し訳ございません、この町の中では、皆さん例外なくローブを着ていただいております、教会に着くまでの間は、ご理解とご協力をお願いします」

「そ、そうでしたか」


 スーツの方は問題無いらしいが、どうやらそう言う決まりのような物があるらしい。

 そして、その話を聞いたメンバーは、白いローブをまとっていく。


「(ま、女は家族以外に肌を見せるな、なんて決まりが有る宗教も有るかなら)」

「(スーツにこれって、ちょっと熱いな~)」

「(これ着るなら、少しくらい胸のボタン開けて良いと思うけど)」


 それぞれローブに感想を抱きながら着用。

 その数分後、着替え終えたメンバーは、メフィスの引き連れて来た馬車に乗り込む。


「で皆さんお乗りになられましたね?」

「はい」

「では、出発いたしましょう」


 メフィスの声と共に、用意された馬車達は出発。

 最低限しか補装されていない道を走り、あまり良いとは言えない乗り心地を数分堪能。

 町内に入った事で、少しだけマシになる。


「……本当にみんな同じ恰好だね」

「はい、宗教国家なだけありますね」


 馬車に揺られながら、シルフィ達は町の住民が本当にローブ姿である事を確認した。

 大人は勿論、子供達は成長を見越してなのか、少しブカブカな物を着ている。

 パッと見た限りでは、それ程縛られていないのか、今まで見て来た町の住民と変わらない。

 そんな彼らを横目に、リリィは目の前に座るヘレルスに視線を移す。


「……あの、ヘレルスさん」

「ん、どうか、なさいましたか?」

「いえ、教皇様と言う方は、どのような人物なのかと」


 リリィが気になっていたのは、今から会いに行く教皇様の事。

 調べてみても、種族がエルフである事しかわからなかった。

 その質問に対して、ヘレルスも困った様子で答えだす。


「えっと、実は、あまり表に出る方ではないらしく……私も、十年以上信者として活動していますが、お目にかかれた事は、一度も」

「……そうでしたか、すみません」


 ヘレルス程マジメな信者でさえ、一度も会った事が無い。

 基本は冒険者として活動していたので、仕方がないといえば、仕方がない。

 無理な事を言ってしまったと思い、リリィは頭を下げた。


 ――――――


 数十分馬車に揺られていると、目的の教会にたどり着く。

 上空からではなく、地上から見上げるのは、また違った印象をもたらした。

 まさに圧巻、リリィ達の世界でも、世界遺産と呼べるくらいの神々しさだ。


「では、案内いたします」

「お、お願いします」


 カルミアを先頭に、メフィスの案内を受けながら、教会へと入る。

 中も清潔感を保つべく、修行僧らしき人達が、せっせと掃除をしている。

 そんな様子を横目に、教会の内部を観察して行く。

 天井の絵、壁の彫刻等、リリィ達でも教会の中と呼べる物が並ぶ。


「まるで、神話の中に入ったみたいだ」

「ああ、余程腕のいい職人が作ったんだろうな」


 驚く七美達は、教会のエントランスらしき部屋を通り、階段を昇り、更に部屋を移動。

 数分歩いた後で、部屋の奥の壁に設けられた扉を前にする。

 そこだけ、何故だか雰囲気が違う。


「こ、この扉は?」

「ここから先は、私を含めた一部の者しか、立ち入りが許されておりません、教皇様の部屋に通じる、唯一の道ですので」


 扉の説明をしたメフィスは、横にあるレバーを下ろす。

 すると、扉は自動で開き、全員が何とか入れる程の小さな部屋が出現。

 その様子に、リリィ達は見覚えがあった。


「こ、これって」

「まさか」

「どうぞ、お乗りください」


 強い既視感を覚えながら、リリィ達は部屋に入って行く。

 最後にメフィスが入り込み、扉が閉まる。

 そして、扉が閉まった事を確認したメフィスは、部屋の中のレバーを上に倒す。


「ッ、やっぱり、これは」

「エレベーター」


 わずかな部屋の揺れと、身に覚えのある浮遊感。

 明らかにエレベーターに乗った時の挙動だ。

 その事に対する驚きと、耳の違和感を噛み締めていると、エレベーターの扉が開く。

 先にリリィ達を下ろしたメフィスは最後に降り、全員の前にでる。


「教皇様、お客様を、お連れいたしました」


 ひざまずいたメフィスの言葉に、教皇様は反応する。


「……ありがとう、では、妹さんとお茶とお菓子の用意を、お願いできる?」


 立ち上がりながら、メフィスへと命令した。

 遂にあらわに成った、教皇様の姿に、呼ばれた全員は固唾を飲んだ。

 仮面を付けた、金髪のエルフ。


「な、何で」

「貴女が」

「初めまして、と言うべきかしら?それとも、久しぶり?で、いいかしら?皆さん」


 その姿を見たリリィとシルフィは、彼女の名を呼ぶ。


「ヴィルへルミネ!」

「ルドベキアさん!?」


 驚く二人に対し、ルドベキアは笑みを浮かべながら手を振った。


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