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エルフとガイノイドの百合劇場  作者: B・T
モミジガサ編
282/343

リング制圧作戦 中編

 

 デュラウスとイベリスが戦闘を開始して間もなく。

 宙域内のデブリに混ざり、カルロスの乗っていた機体が漂っていた。

 ホエールによって吹き飛ばされ、機体は大破し、コックピット内も滅茶苦茶になっている。


「……クソ、あのボンボンめ……グッ!」


 機体を動かそうと、操縦桿に手を伸ばした時、腹部に痛みを覚えた。

 確認してみると、破損したパーツの一部が、わき腹に刺さっている。

 それだけではない、身体のあちらこちらにも、破片が食い込んでいる。


「はぁ、はぁ、ゴホッ!」


 吐血し、ヘルメット内を血で汚した。

 痛みをこらえながら、カルロスは機体を動かそうとする。


「……ガトリング砲は、無事か、けどッ……機体の制御が」


 武器は無事だが、肝心の機体の損傷が著しい。

 ヴァーベナへ帰投する事は出来るが、彼の身体がグチャグチャになっている。

 すぐに戻れば、治療して助かるかもしれない。

 それでも、彼の脳裏に映るのは、今も戦っているイベリスの姿。


「……ドライヴを、はぁ、オーバーロードすれば、はぁ、アイツらと同じ事が出来る筈だ」


 息を荒くしながら、カルロスは端末を操作する。

 普通の状態では、機体はまともに動かす事はできない。

 だが、リミッターを解除し、無理矢理出力を上げれば、移動と攻撃が可能になる。


「……また、お荷物は、ごめんだ」


 ――――――


「さぁ!もっと来なさい!」

「ちょこまかと!」


 次々と襲い掛かって来る、ホエールからの砲撃。

 カルロス達のおかげで、密度が薄くなっているとは言え、砲台はまだ沢山有る。

 誤差程度の違いであるが、ブラスターが無くなり、向上した速度によって、先ほどよりも簡単に回避できている。


「デュラウス、頼みますわよ!」


 バックパックのミサイルやエーテル兵装を駆使し、イベリスはイディオの注意を引き始める。


「その程度で、このホエールを落とせるものか!」

「(……やれやれ、本当にアイツしか眼中にないのか)」


 戦場において、一つの目標にばかり注目するのは悪手。

 実際、イベリスにばかり集中しすぎて、デュラウスの接近を許してしまっていた。


「その汚ねぇケツ、焼いてやる!」


 機体後方へと接近したデュラウスは、大剣を展開させ、赤い電流をまとわせる。

 狙うのは、ブースターと、その奥にあるだろうドライヴ。

 目標の場所に到達し、一撃を入れてやろうとした時。


「ッ!ウソだろ!?」


 デュラウスに、数本の赤いエーテルが襲い掛かった。

 寸前で回避するが、いくつかのドローンが、次々とデュラウスへ攻撃を開始してくる。


「(チ、向こうのサポートは優秀だな、接近しただけでこれか!)」


 砲台の動きを見る限りでは、パイロットはイベリスに夢中である事に変わりない。

 それでも、ドローン達はデュラウスの事を的確に狙っているが、デュラウスは砲撃の全てをかわす。

 それも、ジャックのおかげといえる。


「こちとらあのロリコンのおかげで、ドローン対策はばっちりなんだよ!!」


 ヘリアンやリリィであれば、回避と同時に狙い撃ちにしただろう。

 だが、デュラウスは銃を持たない主義。

 接近して切り裂くだけ。

 目標が大きいだけに、それ位は容易だ。


「そんなデカくちゃ、ドローン兵器の意味もねぇな!」


 デュラウスにとって、ドローン兵器の利点は小さい事。

 ほとんど目視できない相手からの射撃は、通常の兵士では回避行動もできない。

 対して、目の前のドローンは大きい。

 それに加えて、砲撃の直前は、ジャック達の使用するドローンより、長い貯めが必要になっている。

 その間に接近すれば、容易く撃破できる。


「他愛も、ねぇな!!」


 次々とドローンを破壊して行き、手薄となった所を狙い、ブースターを吹かせる。


「ディエイ!」


 紫電をまとう剣を、ホエールの装甲へ勢いよく突き刺した。

 そのせいか、ホエールのコックピットに、緊急アラートが響き渡る。


「な、何だ!?あれは」


 コックピット内のモニターに映し出されたのは、ホエールに刃を立てるデュラウスの姿。

 美しく、気高いホエールに突きつけられた子汚い剣。

 それを見たイディオは、顔に血管を浮き上がらせる。


「この!よくもこのホエールの気高いボディを!そんな汚らわしい剣で!!撃ち落としてくれる!!」


 我を失ったかのように、イディオはデュラウスの近くに有る砲台を総動員させた。

 しかし、ホエールは密着される事を想定されていなかったらしく、イディオの無茶な操作を受け付けない。

 砲台は旋回しきれず、仮にデュラウスを捉えられても、安全装置が働き、攻撃ができない。

 撃てたとしても、全て素通りだ。

 そんな状況を、デュラウスはあざ笑う。


「機体が良くても、パイロットがこの程度じゃな!!」


 大剣を両手で握ったデュラウスは、一気にエーテルを流し込み、紫電を発生させた。

 赤い電撃に覆われた剣を力いっぱい握しめ、スラスターを勢いよく吹かす。


「ヌルァアアアアア!!」


 掛け声と共に、一気に装甲を切り裂く。

 かなり分厚い装甲であるが、まとわせた紫電のおかげで、装甲部分は完全に斬られる。

 腕に大きな負荷がかかろうとも、剣を手放さず、可能な限り大きな切創を作っていく。


「ゲアラ!」


 全力で剣を振り抜いたデュラウスは、間髪入れず、身体の向きを変える。

 パックリと開いた装甲板を前に、一撃を入れようとする。


「もう一丁!」


 剣を構えたデュラウスは、斬撃によってむき出しになった動力系を目にする。

 そんな彼女に、残ったドローンが襲う。


「チ、まだ居やがったか!」

「デュラウス!イベリス!」


 足止めをくらったデュラウスの背後から、一機のルプスが、赤い光をおびながら接近してきた。

 片足を失いながらも、両肩のミサイルをデタラメに撃ちながら近づく。

 その機体を目にしたデュラウスは、カルロスの機体であると気付く。


「この識別……よせ!何する気だ!?」


 機体の損傷具合からして、直進しながら撃つ事が精いっぱいの状態。

 そんな瀕死と呼べるような姿であっても、カルロスは直進を続けており、イベリスも今の事態に気付く。


「あれは、オーバー・ドライヴ!?一般の機体には搭載されてない筈!?」


 身体への負荷が大きいという理由で、一般の機体にはオーバー・ドライヴは搭載されていない。

 その筈が、カルロスの機体は、ほとんど同じ状態と成っていた。

 考えられる方法は、ドライヴのリミッターを外し、オーバーロードさせたという事位だ。

 止めようにも、彼の機体は暴走しており、完全に歯止めの効かない状態。

 そんな彼を、ドローン達が見のがす筈も無く、カルロスへ向けて砲撃を始める。


「この、死にぞこないが!」


 当然、イディオも機影を探知し、砲撃を開始。

 直進しかしないカルロスのルプスは、被弾しようとも構わずに接近を続ける。

 残っていた足はドローンに破壊され、左腕もホエールからの砲撃で喪失しようと、機体が止まる事はない。

 覚悟を示すかのように、カルロスは大声で叫ぶ。


「アンドロイドだけに、良い恰好させるかぁ!!」


 降り注ぐミサイルで、頭部を失い、胸部に命中した事で、コックピット内がむき出しとなる。

 それでも直進を止めないカルロスは、デュラウスの付けた傷に密着。

 暴走したブースターを吹きっぱなしにしながら、カルロスは傷の中にガトリング砲を突っ込む。


「(俺にも恋人でも居たら、こんな気分だったのかね!?)」


 機械を操作するカルロスは、回せるだけのエーテルを、ガトリング砲へと送り込む。

 そして、密着状態でガトリング砲が火を噴く。

 実弾ではなく、エーテル弾を大量に撃ちこまれ、内部の機器は次々と破壊される。

 だが、ホエールの損傷に比例し、カルロスのルプスの限界がちかづく。

 コックピット内は、緊急を知らせるアラートが響き渡り、カルロスは最期を悟る。


「イベリス!チフユ!俺達の希望、託したぞぉぉぉ!!」


 彼の断末魔を最後に、限界を迎えたドライヴは破損。

 機体は大爆発を引き起こした。


「ッ!バカな!?」

「カルロス!!」


 デュラウスの叫びと共に、ホエールの動力系が誘爆。

 安全装置が働き、イディオの乗るルプスクリーガは、爆発するホエールから強制射出される。


「ッ、く、クソ、この、欠陥品が!」


 慌てて操縦かんを操作するイディオだが、機体は彼の意思の通りには動かずにいた。

 まともに姿勢を制御する事もできず、初めて宇宙に来たかのように、デタラメな動きをする。

 欠陥品と機体をののしるが、彼の乗るルプスクリーガは指揮官機。

 官給品と違い、頑丈で性能も高く、整備もしっかり行われていた。

 思い通りに動かないのは、単純に彼が下手なだけ。

 今の好機を逃す事なく、イベリスはバックパックを破棄する。


「……積年の、恨み!」


 背部に付けられた最低限のスラスターを使い、イディオの方へと向かう。

 その際、不要と判断したシールドも捨てる。

 彼女の姿を見て、デュラウスは持っていた大剣を投げ渡す。


「イベリス!コイツも使え!」

「どうも!」


 受け取った大剣とメイスを、普通の腕とサブアームで保持。

 殺気をむき出しにしながら寄って来るイベリスを前に、イディオは頭部のバルカンを使用する。


「クソ、我に近寄るな!!」


 そんな物は豆鉄砲であり、イベリスの握るメイスは、迫りくるエーテルを弾き返す。

 下手な操縦のせいで、イベリスから離れる事もできず、コックピットハッチにメイスの一撃を受ける。


「ドわ!」

「フン!」


 最初の攻撃で無防備になった機体へ、もう一度メイスを振り下ろし、ハッチを完全に破壊。

 機体に乗り込んだイベリスは、三年ぶりにあの憎らしい顔と対面する。


「……お久しぶりですわね」

「こ、この、ガラクタが!わ、我を、誰だと思っている!」


 彼の表情を見て、イベリスは呆れた。

 開き切っている瞳孔、流れている冷や汗に、鳴り響いている心音。

 外側からスキャンするだけで、緊張と恐怖が彼を支配している。

 所詮は、威勢だけの若造だという事だ。

 こんな小物に対して、溢れんばかりの憎悪を抱いていた事を後悔しながら、イベリスはメイスを下腹部に突き刺す。


「……」

「ガハ!あ、あああ」

「……良い事を教えて差し上げますわ」

「う、ボハッ!!」

「機体の操作も下手、射撃の腕も最低……貴方は所詮、見かけだけの臆病者でしてよ」

「あ、あああ、俺は、こんな、所で」


 物悲しい声を出しながら、メイスに手を置くイディオだったが、同情の余地はない。

 メイスを伝わって、彼の記憶が流れ込んで来るが、とても陳腐な物だ。

 高級軍人の息子として育てられ、親のコネで軍へ入った。

 何時かは父と同じ椅子に座る事を夢見て、あらゆる将校たちを手玉にしてきた。

 だが、欲を出したイディオは、父親以上の席を望むようになった。

 出世のために、こうして前線に出るようにもなったのだが、結果はこの通りだ。


「こんな所で、終われない、ましてや、こんな、ガラクタに」

「……」


 メイスを手放したイベリスは、サブアームも一緒に使い、イディオの両手をホールド。

 デュラウスの大剣を使い、両腕を切断する。


「あああああ!!」

「……汚らわしい腕ですわ」


 斬り落とした腕を捨てたイベリスは、大剣を握り直し、イディオの胸部に突き刺す。

 後は、脳への酸素供給が尽きるのを待つだけだ。


「ゴハッ!」

「……成程、よく、解りましたわ……復讐とは、虚しい」

「あ、ああ……」


 イディオの心臓が止まるまでの間、イベリスは彼の事を看取った。

 思いつく限り苦しめて殺したが、気分は晴れなかった。

 何としてでも殺してやりたかったが、その為に四人も犠牲になったのだ。

 その中には、カルロスも居た。

 カルロスとチフユの二人とは、この三年間、イベリスは仲良くしていた。

 それだけに、彼の犠牲は、再びイベリスの心はえぐられた。


「ご遺体を、ご家族に送る事も、何も、できない……こんな小物を葬った所で、何も……」

「……」


 再び涙を流すイベリスだったが、彼女の背後から、デュラウスが抱き着く。

 大剣を取り戻しつつ、イベリスの頭をなでながら、彼女はその場を去ろうとする。


「……俺は行くぜ、こんな所でへこたれてられないんでね」

「……お待ちください」

「何だ?」


 涙をぬぐったイベリスは、デュラウスの方を向く。

 今の彼女の顔には、哀しみ以外にも、覚悟のような物が芽生えていた。


「……補給が済み次第、わたくしも、ヴァーベナの護衛を行います」

「……わかった、俺は前に出る、少しでも、お前とシルフィの負担を減らさなくちゃな」


 拳を合わせた二人は、共にライラックへと帰投していく。

 その道中で、デュラウスはシルフィと交信する。


「シルフィ、聞こえるか?」

『デュラウスちゃん!?何!?』


 どうやら、シルフィの方もかなり切羽詰まっているようだ。

 彼女の耳に入っているのは、砲撃やミサイルが飛翔する音ばかり。

 シルフィ自身も、攻撃や回避にドローン操作と、大忙しらしい。


「(やっべ、タイミングミスった)」

『そうだね!ちょっと世間話してる余裕ない!』

「あ」


 彼女との交信は、文字通りの意思疎通。

 強く考えたことは、彼女にも伝わってしまう。

 その事を思い出しながら、デュラウスは要件を伝える。


「シルフィ!こっちは片付いたが、イベリスが装備の大半を無くした!補給が済んでも、たいした活躍はできそうにない!俺はそっちから外れる!やれるか!!?」

『ははは……こっちは何とかするから、補給済ませて!!』

「逞しい限りだ」

「ほんとですわ、逆境になっているというのに、イキイキしていますわ」


 交信を切ったデュラウスは、シルフィはジャックの娘であると実感してしまう。

 焦りや緊張が強く伝わって来たというのに、どこか嬉々としていた。

 ジャックの戦闘狂ぶりが、彼女にも移ってしまったようだ。


 ――――――


 その頃、ライラックの出撃デッキにて。

 そこでは、負傷したアンドロイド兵や、負傷兵たちが帰投し、手当と修復を行っていた。


「すぐにハッチを開けるわ!貴女は治療魔法を!」

「は、はい!」


 アラクネから指示を貰いながら、スノウはルプスから引きずりだされたパイロットの手当てを行う。


「(まさか、こんな事に巻き込まれる何てね)」


 ヘルメットを被っているおかげで、自分がどれだけ緊張しているか良く解る。

 息で口元が曇り、音が反射してよく伝わってきている。

 心臓も今までに無い位、バクバク言っている。

 そんな彼女に、パイロットを任せ、アラクネは修理の方を手伝いに行く。


「私はあっちを手伝うから、医療班が来るまでお願い!」

「はい!(あの蜘蛛女に指図されるのは癪だけど、こんな時にそんな事言ってられない)」


 パイロットの状態を見て、スノウは息を飲みながら治療を開始する。

 外したヘルメットは割れており、破片が体のあちらこちらに刺さり、スーツの破損個所から、火傷でただれた皮膚が見える。

 人間で言えば中学生程度の年齢のスノウには、刺激が強すぎる。

 小刻みに手が震え、集中力も乱れているが、何とか魔法を発動する。


「(確か、呼びかけながら)だ、大丈夫ですよ」


 教えられた通り、スノウは呼びかけながら魔法をかける。

 おかげで、パイロットは苦痛の表情から、徐々に開放されていく。

 徐々に治って行くパイロットを前に、スノウも心なしか緊張がほぐれて来る。


「……私ならできる、あんな能無しとは違う」


 治療を続けるスノウの脳裏をよぎるのは、シルフィの姿だった。

 先ほどのデュラウスの交信は、彼女にも届いており、話も聞こえていた。

 完全にシルフィを信用し、この艦の防衛を任せていた。

 魔法も使えないというのに、こんなにも信用されているのが、理解できなかった。


「……ダメダメ、落ち着いて、回復魔法は、平常心が大事なんだから」


 落ち着こうと深呼吸をしたスノウだが、横やりが入る。


「ッ!キャアアア!!」


 突如、閉まっていたハッチは爆散、爆風と破片が、スノウたちを襲った。

 悲鳴を上げたスノウは、治療していたパイロットに覆いかぶさるように倒れ込む。


「……て、敵!?」


 そして、爆炎の中から、一機のイーグルが出現。

 保持しているランチャーが、彼女達へと向けられる。

 それが何か解っているスノウは、目と口を開きっぱなしにしてしまう。


「あ、ああ」


 迫りくる絶対の死を覚悟するが、一発の攻撃が、イーグルを貫く。


「え!?」


 その様子を、目に焼き付けていたスノウは、脳の処理が追い付かなかった。

 コックピットを正確に射貫かれ、動きを止めたイーグルは、何者かによって蹴り飛ばされる。

 そして、二つの事をやった人物が、姿を現す。


「あれって、シルフィ?」


 リリィ達や、他の兵士達が身に着けている物とは、まるで違う鎧に身を包む少女。

 彼女は、巨大なボウガン二丁を保持しながら、イーグルを制圧できた事を確認すると、今度は被害者の有無を確認しだす。


「……よかった、中は無事みたいで」


 安心していたのはつかの間、彼女の背後から、鎧を着た複数の兵士が迫って来る。

 明らかに内部から制圧しようという魂胆らしく、シルフィに対して攻撃を行う。

 その光景に、スノウは思わず叫ぶ。


「あ、危ない!」


 放たれたロケットランチャーは、シルフィの背中に命中した。

 だが、その結果は爆炎が晴れる前に知る事ができた。

 着弾したポイントから、鈍い銀色の光が数本伸び、向かってきた敵兵を撃ち抜いたのだ。


「……うそ」

「ここから先には、進ませない!!」


 シルフィを守ったのは、彼女の周囲を漂うドローン達。

 次々やって来る敵兵に対して、ボウガンとドローンによって迎撃を始める。

 彼女の活躍によって、迫りくる敵の全てが射貫かれ、撃破されていく。

 それも百発百中と言える命中精度、外すのは牽制による射撃のみだ。


「……」


 その勇ましい姿を、スノウは目に焼き付けながら硬直していた。

 すぐに隔壁が閉じ、見えなくなってしまうが、それでも、シルフィの活躍は十分見る事ができた。


「おい!そこの君、突っ立てないで、彼を運ぶのを手伝ってくれ!」

「え、あ、はい!(信じられない、あいつが、あんなに強かったなんて)」


 やって来た医療班と共に、スノウはパイロットを連れて医務室へ向かう。

 回復魔法をかけながら、医療班と共に進むスノウは、やはりシルフィの事を考える。

 使えないと思っていた魔法を使い、金属の化け物と呼べる者達を、一瞬の内に撃破した。

 里での彼女を知っていただけに、驚きしかなかった。


「(だから、デュラウスは、アイツの事……)」


 今の彼女が感じるのは、確かな敗北感と、劣等感だった。



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