リング制圧作戦 前編
リリィとルシーラはリングへ到達後、すぐに戦闘を開始。
多少の取りこぼしは有ったが、次々と敵の機体や艦を落としていく。
『艦隊が次々と突破されていきます!』
『何なんだ!?片方は生命反応が有る、ミアナという奴でもない……一体何者だ!?』
『解りませんが、アリサシリーズと同等の戦闘力です!』
二人の力を前に、艦隊は混乱を極めた。
リリィの情報は有ったが、ルシーラに関する情報は、彼らに無い。
情報の無い相手に対して、彼らは非常に弱い。
そのせいで、二人を捉える事は困難を極めた。
『弾幕を張り、全機出撃させろ!何としてでも落とせ!』
「……やれやれ、向こうは大変のようだな」
黄金に塗装されたエーテル・ギアを着込んだ、金髪の青年イディオは、コックピット内で腕を組みながら、無線に耳を傾けていた。
混乱する彼らに、すました笑みを浮かべるが、彼は内心イライラしていた。
何しろ、部隊の花形であると自負していたというのに、待機を言い渡され、無理矢理ここに押し込まれた。
自尊心の強い彼にとっては、この扱いは不服極まりない。
「……だが、ほとんど貴様の言った通りだな……良いだろう、貴様を俺の女として認めよう、この戦いが終わったら、俺の部屋に来い」
多少不服ではあったが、今の状況は、無線相手の想定した通りの物。
その無線相手は、いつの間にか宇宙に移動していたリアマ。
彼女はこの戦いが始まる前に、彼を伏兵として潜めさせていた。
『それに関してはご遠慮しておきます……それに、この新型を扱いきれるのは、貴方だけ、これを使えば、敵の艦隊を潰す事は、造作も有りません』
「フ、そうだろうな、貴様の目利き、相当な物だな」
腕を組みながら笑みを浮かべるイディオは、自分の任務を思い出す。
リリィとルシーラが、最前線へ出て、艦隊は後方から援護する。
この構図となった後で、艦隊をイディオが潰す。
それが彼の役目だ。
「ヘビー・エーテル・アームズ『ホエール』ルプスクリーガの上に、更に重装備を重ねた機体……確かに、扱えるのは我だけだ」
『ええ、ご武運をお祈りしております』
「ああ……そろそろ頃合いか……ホエール!出撃する!!」
――――――
リリィ達がリングを潜り抜けた後。
月面より、黄金のクジラと呼べるような物が出現し、敵味方双方戦いを止めてしまう。
「な、何だ、あれは!?」
「新型か!?」
三十メートルは有る金色のクジラは、その勇士を戦場の全員に見せつける。
その正体は、金を用いた合金でできた、巨大な艦船。
姿を見せた途端に、ヴァーベナへ向けて飛び立つ。
「クソ、だが、ヴァーベナにはアイツが居る、俺達は、リングの制圧を行うぞ!」
「そうだな、俺達雑兵は、雑兵なりにできる事をやるぞ!」
見るからに異彩を放ち、強力そうなホエールを見送ったストレンジャーズ。
彼らは、自分たちの無力さを味わう。
練度が通常の連邦兵たちより高いとは言え、戦闘力は一般の兵より優れているだけ。
ジャックや七美のような、異常な戦闘力は持ち合わせていない。
それでも、任務遂行のために、彼らは戦いを続ける。
――――――
ヴァーベナの付近にて、イベリスはセンペルビレンスを駆る。
その戦いぶりは、以前のお試しとは訳が違う。
まるで、小さな艦船と呼べるような弾幕だ。
向かってくる全てを排除し、決してヴァーベナに近寄らせようとしていない。
「絶対に近寄らせませんわ!!」
増設されたミサイルポッドやエーテル兵器により、攻撃を雨のように降り注がせる。
雑兵である敵の兵器は勿論、敵艦さえ彼女が落としている。
だが、その頑張りに、歴戦の戦士であるネロは、危機感を覚えていた。
『イベリス!熱くなりすぎるな!』
「解っております!ですが、わたくしがやらなければ、わたくしが!」
『(マズイな……)カルロス!お前の部隊で彼女を援護しろ!』
『りょ、了解!』
アリサシリーズ特有の、人間らしい思考。
それが生むのは、愛憎や喜怒哀楽だけではない。
緊張や焦りのような物さえ、生み出してしまう。
今の彼女は、極度のストレスから、異常なまでの焦りが生まれてしまっている。
基本的にワンマンアーミーのイベリス達にとって、それは致命的な欠陥だ。
「ッ、え、援護なんて、必要有りませんわ!」
『黙れ!貴様は下がって補給をしろ!一旦頭を冷やせ!』
『そうだ!今のお前は、頭に血が上っている!深呼吸でもして、気を落ち着かせろ!……い、息ってするよな!?』
カルロスの部隊は、ルプスを駆ってイベリスの援護に入る。
彼を除き、三機のルプスが弾幕を張り、カルロス本人はイベリスを下がらせようと、彼女のエーテル・ギアを掴む。
だが、イベリスは補給を拒んでしまう。
「は、離してくださいませ!ッ!?」
「な、なんだ?この感じ?」
止まってしまったイベリスは、妙な気配を感じ取った。
それは、イベリスに触れていたカルロスも同じ。
感じた事のある、懐かしい気配を孕んだ敵意。
そこに交じる、全てを見下しているかのような、冷たい気配だ。
なんとも違和感のある思考が、物凄い勢いで近づいてくる。
明らかに普通ではない気配に、イベリスはカルロスを下げようとする。
「……カルロスさん!貴方は下がってくださいませ!」
「な、何だよ!?」
「来ますわ!」
「ッ!」
イベリスの睨む方を、カルロスは振り向く。
遠くてわかり辛いが、金色の何かが接近している。
戦闘中の部隊を、敵味方問わず突き飛ばしながら移動してきている。
距離からして、見かけよりも巨大な兵器が接近しており、完全にヴァーベナを潰しに来ている。
「フ、反政府勢力なんぞ、もう一度我が捻り潰してくれる!」
「……ッ」
ヴァーベナを射程圏内に捕らえたのか、黄金のクジラ、ホエールは変形を開始。
装甲に守られる形で乗り込むルプスクリーガが現れ、大量の砲台やミサイルポッド等が展開される。
イベリスのセンペルビレンと、同様のコンセプトの兵器。
予算を全て消化して良そうな物量の砲台を前に、イベリスは目を鋭くする。
「死ね!」
「やらせませんわ!!」
イディオは、ホエールより大量のミサイルを斉射。
そのミサイルに対し、イベリスはエーテル・ブラスターで迎撃。
放たれた極太のエーテルは、発生された紫電等でミサイルが焼かれ、爆発する。
その爆炎を、イベリスは一気に駆け抜ける。
「ッ!?この感じ、あの時の!!」
「あのボディ、そうか、あの時の鉄くずか!」
すれ違いざまに、互いは互いの存在を認識した。
三年前、イベリスはイディオに辛酸を飲まされた。
その時の事を思い出したイベリスは、表情を険しくしながら急旋回。
エーテル・ブラスターの周辺に、フィールドを展開させ、ホエールへと急接近する。
「あの時の雪辱、晴らさせていただきますわ!」
「フ、もう一度破壊させてもらうぞ!!」
センペルビレンスの異常な推力に乗せ、ブラスターを鈍器として振り下ろす。
数倍以上の体格を持つエーテル・アームズさえ、一撃で破壊できる攻撃を前に、イディオも近接武器を起動させる。
「あのガラクタのように、貴様もゴミ捨て場送りにしてやろう!!」
「ッ!」
チナツを守れなかった事を思い出すイベリスへ、イディオは巨大なブレードを振るう。
刃だけで、センペルビレンスの全長を遥かにしのぐ質量との衝突。
本来ならば、イベリス程度の大きさでは、その重量を受けただけで、粉々になってもおかしくはなかった。
それでも、イベリスは通常の状態で、その一撃を受け止めた。
「ほう!こいつを受け止めるか!」
「ガラクタ……そんな軽口、二度と叩けないようにして差し上げますわ!」
怒りを乗せたイベリスの力によって、ホエールのブレードは弾き飛ばされた。
イディオから見て、イベリスは正に豆粒程度にしか見えない。
だというのに、パワーで押し負けたのだ。
「バカな!?」
ブレードを弾いた事によって、コアユニットとなっているルプスクリーガが向き出しになる。
設計ミスとしか思えない構造に微笑みながら、イベリスは照準を合わせる。
「その見え透いた弱点、焼き払って差し上げます!」
「チィ!」
迎撃のために放たれる攻撃に、イベリスは怯む事はない。
被弾を気にせず、距離を詰めていき、ゼロ距離からの射撃を行おうとする。
「この!落ちろ!!」
「落ちるのは、貴方でしてよ!」
適切な距離に入ったイベリスは、引き金を引く。
ブラスターとシールドキャノン、計四門の砲撃が、イディオへと襲い掛かる。
「イッ!」
迫りくるエーテルを前に、イディオは一瞬硬直してしまった。
だが、そのエーテルは、もう片方のブレードによって阻まれてしまう。
直撃した事で、ブレードは焼失してしまうが、それでも、イベリスの砲撃は防がれてしまった。
「そんな!?うッ!!?」
予想外の行動に驚く間もなく、赤い閃光により、センペルビレンスのブラスターの左側が破損。
砲身を失ったブラスターは、すぐに切り離し、光源の方に視線を送る。
「……あの光、あれは、ドローン兵器!?」
イベリスの視界に映ったのは、戦車砲並に大きなドローン。
しかも、ただのドローンではなく、エーテル・ドライヴが搭載されている贅沢な仕様だ。
一度の砲撃で、イベリスの重装甲を破壊する威力を叩き出していた。
その脅威は、嫌でも理解してしまう。
「(……今の、勝手に?いや、違う、我が反射的に、この攻撃を行ったのだ、この反射こそ、我が天才たるゆえん!!)ふ、ふふ、ゆけ!ドローンども!!」
「ッ!」
出撃したドローンは、合計で三十機。
その一つ一つにドライヴが搭載されており、大きさの割に素早い動きを見せる。
そして、ホエールに搭載されている砲による攻撃が、同時に行われる。
「(あのボンボンに、何故あのような芸当が!?)」
迫りくる弾幕を前に、スラスターの推力任せに回避行動を取る。
その中で、イベリスは疑問を強めた。
三年前のイディオは、完全に軍人とは思えないような行動を取り、重要な転移装置を破壊。
それだけでなく、ランチャーは完全に的外れな場所に命中させていた。
兵士達の会話からしても、一般兵程の技量が有るとは思えない。
「けど、今はこの弾幕をかい潜らなくては!」
しかし、そんな事を考えている余裕はない。
まるで艦隊からの砲撃かのような飽和攻撃にくわえ、全方位からのドローンの砲撃。
考え事に思考を裂いていられない。
隙を見てミサイルを放っても、その弾幕に阻まれてしまう。
「フハハハ!ガラクタごときでは、この弾幕をくぐれまい!」
調子づくイディオは、次々と砲撃を行っていく。
まるでエーテルが無尽蔵にあるかのような、無茶苦茶な攻撃量。
隙を見つけようにも、回避する事が精いっぱいだった。
動き続けていると、ホエールから爆炎が昇る。
「ッ!何だ!?」
イベリスの方ばかりに気を取られるイディオに、爆発の衝撃が襲い、機体は何度も爆発する。
「イベリス!無事か!?」
「カルロスさん!?」
カルロスが部隊を引き連れ、死角から攻撃を行ってくれた。
ルプス隊の持つミサイルや、エーテル兵器の攻撃によって、一部の砲台が破壊された。
だが、砲台以外の装甲は、とてつもなく頑強で、傷一つ付いていない。
「この武器じゃダメか……各機!砲台を攻撃!イベリスを援護しろ!」
「チ、グズ共が!!」
砲台の破壊に専念し始めるカルロス達であったが、ホエールの砲門は、彼らへと向く。
それを見越したカルロス達は、既にホエールの周囲に散らばっていた。
そのおかげで、全ての砲台は違う方に向けられ、攻撃が開始される。
「い、いけません!逃げてくださいませ!」
「安心しろ!分散した弾幕なら、かい潜れる!」
「そうではありませんわ!」
カルロス達の操縦テクニックのおおかげで、分散された弾幕を潜り抜けられている。
もちろん、デタラメに撃たれる砲撃に、カルロスが撃墜されるとは思っていない。
問題なのは、周辺にまかれている兵器だ。
「た、隊長!ドローン兵器がっ」
「ッ!バカな、あれは!」
ドローンの攻撃によって、カルロスの部下の一機が撃墜されてしまった。
戦車砲並に大きなドローンには、ドライヴを搭載されている。
それこそ、一撃でルプスを破壊する威力が叩き出されている。
「ドローン兵器か!?」
「はい!援護には感謝いたしますが、三十機ものドローンが配置されていますわ!貴方方ではッ!」
逃げる事を推奨したかったが、そう言っていられる状況ではなくなった。
しかも、ドローン達は、既にイベリス達を取り囲むように展開されている。
その内の一機からの砲撃で、イベリスは、もう一つのブラスターを失ってしまう。
「ブラスターが無くとも、これで!」
もう片方のブラスターを破棄したイベリスは、備え付けのメイスを取りだす。
「(せめて、彼らが切り抜けられる程、ドローンを破壊できれば!)」
バックパックのブースターを吹かせ、イベリスはドローンを叩き潰す。
弾幕をくぐり抜け、何とか一個を破壊できたが、それでは焼け石に水。
ホエールからの弾幕に、強力なドローン兵器。
イベリスだけならいいが、カルロスのような一般の兵士では、とても回避しきれない。
「チクショウ!回避が、追いつかない!」
「俺達じゃ無理だ!」
「何とか離脱しろ!このままじゃ全滅だ!」
ギリギリのところで、回避を続けるカルロス達だったが、とうとう限界が来てしまう。
カルロス以外の機体は、全て撃墜される。
「た、隊長!」
「う、ウワアアア!」
「クソ!」
次々と破壊される部下達を前に、カルロスは激高。
装備のバルカン砲と、ミサイルポッドを向ける。
「な!」
「どけ!雑魚に用はない!!」
だが、イディオの眼中に、カルロスの姿は無かった。
移動するホエールに衝突し、機体を大破させながら吹き飛ばされてしまう。
彼の目に映るのは、イベリスしかない。
しかし、味方の撃墜によって、イベリスの精神は限界を迎えようとしていた。
「あ、ああ……また、アイツのせいで」
「貴様を倒し、我らの夢見る、人類の崇高なる世界を、実現する!」
「ッ!貴方達が創る世界なんて、まっぴらごめんでしてよ!!」
向かってくるイディオに対して、イベリスはオーバー・ドライヴを発動。
正面から迎え撃とうと、突っ込んで行く。
「よくも、よくも!!」
メイスを振りかぶり、ホエールへと振り下ろす。
対するイディオも、破壊されていない方のブレードを向ける。
「スクラップになるがいい!」
「ちょっと退けや!!」
「何ッ!?」
二人の武器がぶつかり合う寸前。
オーバー・ドライヴを発動したデュラウスが、割って入った。
アカツキの異常な加速能力と推力。
直線的な速さで、質量をカバーした突進で放たれた蹴りで、ホエールの横腹を突いた。
その直後、デュラウスはイベリスを睨む。
「デュラウス!?」
「テメェもだ」
「ッ!」
遠くへ飛んで行ったホエールを無視し、イベリスへと距離を詰め、彼女の顔に拳を入れる。
「歯ぁ、食いしばれ!!」
「ブ!」
顔面に一撃をいれられたイベリスは、通常の状態に戻り、デュラウスの胸倉をつかむ。
今の打撃のせいで、奥歯が欠けた恨みもある。
そもそも彼女達はヘルメットをしていないので、直撃を受ける事と成ってしまった。
「何をするのですか!?」
「……ちょっとは頭冷えたか?」
「……何が」
胸倉をつかむイベリスの手を払い、デュラウスは曲がったアーマーを修復させる。
ついでに、デュラウスの冷たい視線が、イベリスに刺さる。
「テメェは精神的に来すぎている、おかげで、二人も失った」
「ッ、そ、そうでしてよ、わたくしの、せいで……だからこそ!玉砕を覚悟して!」
「フン!」
「グ!」
イベリスの発言に、デュラウスはもう一発顔に拳を入れた。
そして、今度はデュラウスが彼女の胸倉を掴んだ。
今のイベリスは、この三年のストレスでおかしくなっているとしか思えない。
「……厄介な物だよな、人間の思考、精神ってやつは」
「……ええ、悪い事ばかりでしてよ」
「そうやって悪い事ばかり考えてっからそうなる……良い事も有っただろ?」
「ですが、それでも、どんなに良い事が有っても、結局は、裏目に」
「……ああ、そうだな、その腕を見てると、俺も実感しちまうよ」
捨てられ、どん底から這い上がった筈が、今も泥水をすする思いをしている。
しかも、同胞と言える者達も、彼女達は失ってしまっていた。
今イベリスの肩に装備されているサブアームに、目をやったデュラウスは、何時になく悲しい眼を向けた。
その瞳のまま、左手でアームをさする。
「……もし俺が、あの時、そこ居たら、守れたかもな、チナツ」
その言葉に、イベリスは息を飲んだ。
デュラウスのさする、イベリスのサブアームのフレームは、チナツの腕を改良した物。
各種の性能を上げているとは言え、七割以上彼女の腕だ。
必ず助けようと握りしめ、生きたいと握られていた、チナツの腕。
だが、本体は取り残され、助けられたのは、今付けられている両腕だけだ。
当時を思い出したイベリスは、涙を流し初めてしまう。
「う……うぅ、わたくしが、不甲斐ないばかりに」
「……アイツにやられたんだろ?だったら、一緒にやらせろや、ライラックはシルフィに任せて来た、心配すんな」
肩に手を置き、笑みを浮かべたデュラウスを前に、イベリスは涙をぬぐう。
アリサシリーズとして目覚め、出会ったデュラウス。
彼女とは何度も衝突し、喧嘩してきた。
今や姉妹の契りを交わし、共に戦う仲だ。
「……貴女の血生臭い闘争心には、毎度、迷惑でしてよ」
「何時もなら食いかかるが、今回は、本当に喧嘩は無しだ」
イベリスはメイスを、デュラウスは大剣を構えた。
横に並ぶ二人が睨むのは、再度向かってくるホエール。
今回ばかりは、本気で協力するべき敵。
以前のように喧嘩ばかりでは、勝てる見込みはない。
「……で、イベリス、戦ってみてどうだった?」
「……とても、あのパイロットの技量でどうにかできる範囲には無いかと」
「なら、余程高性能な支援AIが積まれてるみたいだな」
先ほどまでイベリスが戦っていた時に感じたのは、人間一人で扱いきれる代物ではないという事だ。
数人がかりで動かすか、かなり優秀なAIが積まれていなければ、先ほどまでの動きは無理だ。
「その図体じゃ、接近は無理だろ?なら、お前が注意を引いてくれ」
「承知しましたわ、で?貴女は?」
「あのデカブツ後方の機関部を狙う、航行能力を失えば、二人でタコ殴りに出来る」
「……フフ、それは、良いご提案ですわ」
「何機で来ようと、我を倒す事はできん!!」
「行くぞぉぉぉ!!」
デュラウスの作戦を実行するべく、二人はホエールへと攻め行く。




