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エルフとガイノイドの百合劇場  作者: B・T
モミジガサ編
281/343

リング制圧作戦 前編

 リリィとルシーラはリングへ到達後、すぐに戦闘を開始。

 多少の取りこぼしは有ったが、次々と敵の機体や艦を落としていく。


『艦隊が次々と突破されていきます!』

『何なんだ!?片方は生命反応が有る、ミアナという奴でもない……一体何者だ!?』

『解りませんが、アリサシリーズと同等の戦闘力です!』


 二人の力を前に、艦隊は混乱を極めた。

 リリィの情報は有ったが、ルシーラに関する情報は、彼らに無い。

 情報の無い相手に対して、彼らは非常に弱い。

 そのせいで、二人を捉える事は困難を極めた。


『弾幕を張り、全機出撃させろ!何としてでも落とせ!』

「……やれやれ、向こうは大変のようだな」


 黄金に塗装されたエーテル・ギアを着込んだ、金髪の青年イディオは、コックピット内で腕を組みながら、無線に耳を傾けていた。

 混乱する彼らに、すました笑みを浮かべるが、彼は内心イライラしていた。

 何しろ、部隊の花形であると自負していたというのに、待機を言い渡され、無理矢理ここに押し込まれた。

 自尊心の強い彼にとっては、この扱いは不服極まりない。


「……だが、ほとんど貴様の言った通りだな……良いだろう、貴様を俺の女として認めよう、この戦いが終わったら、俺の部屋に来い」


 多少不服ではあったが、今の状況は、無線相手の想定した通りの物。

 その無線相手は、いつの間にか宇宙に移動していたリアマ。

 彼女はこの戦いが始まる前に、彼を伏兵として潜めさせていた。


『それに関してはご遠慮しておきます……それに、この新型を扱いきれるのは、貴方だけ、これを使えば、敵の艦隊を潰す事は、造作も有りません』

「フ、そうだろうな、貴様の目利き、相当な物だな」


 腕を組みながら笑みを浮かべるイディオは、自分の任務を思い出す。

 リリィとルシーラが、最前線へ出て、艦隊は後方から援護する。

 この構図となった後で、艦隊をイディオが潰す。

 それが彼の役目だ。


「ヘビー・エーテル・アームズ『ホエール』ルプスクリーガの上に、更に重装備を重ねた機体……確かに、扱えるのは我だけだ」

『ええ、ご武運をお祈りしております』

「ああ……そろそろ頃合いか……ホエール!出撃する!!」


 ――――――


 リリィ達がリングを潜り抜けた後。

 月面より、黄金のクジラと呼べるような物が出現し、敵味方双方戦いを止めてしまう。


「な、何だ、あれは!?」

「新型か!?」


 三十メートルは有る金色のクジラは、その勇士を戦場の全員に見せつける。

 その正体は、金を用いた合金でできた、巨大な艦船。

 姿を見せた途端に、ヴァーベナへ向けて飛び立つ。


「クソ、だが、ヴァーベナにはアイツが居る、俺達は、リングの制圧を行うぞ!」

「そうだな、俺達雑兵は、雑兵なりにできる事をやるぞ!」


 見るからに異彩を放ち、強力そうなホエールを見送ったストレンジャーズ。

 彼らは、自分たちの無力さを味わう。

 練度が通常の連邦兵たちより高いとは言え、戦闘力は一般の兵より優れているだけ。

 ジャックや七美のような、異常な戦闘力は持ち合わせていない。

 それでも、任務遂行のために、彼らは戦いを続ける。


 ――――――


 ヴァーベナの付近にて、イベリスはセンペルビレンスを駆る。

 その戦いぶりは、以前のお試しとは訳が違う。

 まるで、小さな艦船と呼べるような弾幕だ。

 向かってくる全てを排除し、決してヴァーベナに近寄らせようとしていない。


「絶対に近寄らせませんわ!!」


 増設されたミサイルポッドやエーテル兵器により、攻撃を雨のように降り注がせる。

 雑兵である敵の兵器は勿論、敵艦さえ彼女が落としている。

 だが、その頑張りに、歴戦の戦士であるネロは、危機感を覚えていた。


『イベリス!熱くなりすぎるな!』

「解っております!ですが、わたくしがやらなければ、わたくしが!」

『(マズイな……)カルロス!お前の部隊で彼女を援護しろ!』

『りょ、了解!』


 アリサシリーズ特有の、人間らしい思考。

 それが生むのは、愛憎や喜怒哀楽だけではない。

 緊張や焦りのような物さえ、生み出してしまう。

 今の彼女は、極度のストレスから、異常なまでの焦りが生まれてしまっている。

 基本的にワンマンアーミーのイベリス達にとって、それは致命的な欠陥だ。


「ッ、え、援護なんて、必要有りませんわ!」

『黙れ!貴様は下がって補給をしろ!一旦頭を冷やせ!』

『そうだ!今のお前は、頭に血が上っている!深呼吸でもして、気を落ち着かせろ!……い、息ってするよな!?』


 カルロスの部隊は、ルプスを駆ってイベリスの援護に入る。

 彼を除き、三機のルプスが弾幕を張り、カルロス本人はイベリスを下がらせようと、彼女のエーテル・ギアを掴む。

 だが、イベリスは補給を拒んでしまう。


「は、離してくださいませ!ッ!?」

「な、なんだ?この感じ?」


 止まってしまったイベリスは、妙な気配を感じ取った。

 それは、イベリスに触れていたカルロスも同じ。

 感じた事のある、懐かしい気配を孕んだ敵意。

 そこに交じる、全てを見下しているかのような、冷たい気配だ。

 なんとも違和感のある思考が、物凄い勢いで近づいてくる。

 明らかに普通ではない気配に、イベリスはカルロスを下げようとする。


「……カルロスさん!貴方は下がってくださいませ!」

「な、何だよ!?」

「来ますわ!」

「ッ!」


 イベリスの睨む方を、カルロスは振り向く。

 遠くてわかり辛いが、金色の何かが接近している。

 戦闘中の部隊を、敵味方問わず突き飛ばしながら移動してきている。

 距離からして、見かけよりも巨大な兵器が接近しており、完全にヴァーベナを潰しに来ている。


「フ、反政府勢力なんぞ、もう一度我が捻り潰してくれる!」

「……ッ」


 ヴァーベナを射程圏内に捕らえたのか、黄金のクジラ、ホエールは変形を開始。

 装甲に守られる形で乗り込むルプスクリーガが現れ、大量の砲台やミサイルポッド等が展開される。

 イベリスのセンペルビレンと、同様のコンセプトの兵器。

 予算を全て消化して良そうな物量の砲台を前に、イベリスは目を鋭くする。


「死ね!」

「やらせませんわ!!」


 イディオは、ホエールより大量のミサイルを斉射。

 そのミサイルに対し、イベリスはエーテル・ブラスターで迎撃。

 放たれた極太のエーテルは、発生された紫電等でミサイルが焼かれ、爆発する。

 その爆炎を、イベリスは一気に駆け抜ける。


「ッ!?この感じ、あの時の!!」

「あのボディ、そうか、あの時の鉄くずか!」


 すれ違いざまに、互いは互いの存在を認識した。

 三年前、イベリスはイディオに辛酸を飲まされた。

 その時の事を思い出したイベリスは、表情を険しくしながら急旋回。

 エーテル・ブラスターの周辺に、フィールドを展開させ、ホエールへと急接近する。


「あの時の雪辱、晴らさせていただきますわ!」

「フ、もう一度破壊させてもらうぞ!!」


 センペルビレンスの異常な推力に乗せ、ブラスターを鈍器として振り下ろす。

 数倍以上の体格を持つエーテル・アームズさえ、一撃で破壊できる攻撃を前に、イディオも近接武器を起動させる。


「あのガラクタのように、貴様もゴミ捨て場送りにしてやろう!!」

「ッ!」


 チナツを守れなかった事を思い出すイベリスへ、イディオは巨大なブレードを振るう。

 刃だけで、センペルビレンスの全長を遥かにしのぐ質量との衝突。

 本来ならば、イベリス程度の大きさでは、その重量を受けただけで、粉々になってもおかしくはなかった。

 それでも、イベリスは通常の状態で、その一撃を受け止めた。


「ほう!こいつを受け止めるか!」

「ガラクタ……そんな軽口、二度と叩けないようにして差し上げますわ!」


 怒りを乗せたイベリスの力によって、ホエールのブレードは弾き飛ばされた。

 イディオから見て、イベリスは正に豆粒程度にしか見えない。

 だというのに、パワーで押し負けたのだ。


「バカな!?」


 ブレードを弾いた事によって、コアユニットとなっているルプスクリーガが向き出しになる。

 設計ミスとしか思えない構造に微笑みながら、イベリスは照準を合わせる。


「その見え透いた弱点、焼き払って差し上げます!」

「チィ!」


 迎撃のために放たれる攻撃に、イベリスは怯む事はない。

 被弾を気にせず、距離を詰めていき、ゼロ距離からの射撃を行おうとする。


「この!落ちろ!!」

「落ちるのは、貴方でしてよ!」


 適切な距離に入ったイベリスは、引き金を引く。

 ブラスターとシールドキャノン、計四門の砲撃が、イディオへと襲い掛かる。


「イッ!」


 迫りくるエーテルを前に、イディオは一瞬硬直してしまった。

 だが、そのエーテルは、もう片方のブレードによって阻まれてしまう。

 直撃した事で、ブレードは焼失してしまうが、それでも、イベリスの砲撃は防がれてしまった。


「そんな!?うッ!!?」


 予想外の行動に驚く間もなく、赤い閃光により、センペルビレンスのブラスターの左側が破損。

 砲身を失ったブラスターは、すぐに切り離し、光源の方に視線を送る。


「……あの光、あれは、ドローン兵器!?」


 イベリスの視界に映ったのは、戦車砲並に大きなドローン。

 しかも、ただのドローンではなく、エーテル・ドライヴが搭載されている贅沢な仕様だ。

 一度の砲撃で、イベリスの重装甲を破壊する威力を叩き出していた。

 その脅威は、嫌でも理解してしまう。


「(……今の、勝手に?いや、違う、我が反射的に、この攻撃を行ったのだ、この反射こそ、我が天才たるゆえん!!)ふ、ふふ、ゆけ!ドローンども!!」

「ッ!」


 出撃したドローンは、合計で三十機。

 その一つ一つにドライヴが搭載されており、大きさの割に素早い動きを見せる。

 そして、ホエールに搭載されている砲による攻撃が、同時に行われる。


「(あのボンボンに、何故あのような芸当が!?)」


 迫りくる弾幕を前に、スラスターの推力任せに回避行動を取る。

 その中で、イベリスは疑問を強めた。

 三年前のイディオは、完全に軍人とは思えないような行動を取り、重要な転移装置を破壊。

 それだけでなく、ランチャーは完全に的外れな場所に命中させていた。

 兵士達の会話からしても、一般兵程の技量が有るとは思えない。


「けど、今はこの弾幕をかい潜らなくては!」


 しかし、そんな事を考えている余裕はない。

 まるで艦隊からの砲撃かのような飽和攻撃にくわえ、全方位からのドローンの砲撃。

 考え事に思考を裂いていられない。

 隙を見てミサイルを放っても、その弾幕に阻まれてしまう。


「フハハハ!ガラクタごときでは、この弾幕をくぐれまい!」


 調子づくイディオは、次々と砲撃を行っていく。

 まるでエーテルが無尽蔵にあるかのような、無茶苦茶な攻撃量。

 隙を見つけようにも、回避する事が精いっぱいだった。

 動き続けていると、ホエールから爆炎が昇る。


「ッ!何だ!?」


 イベリスの方ばかりに気を取られるイディオに、爆発の衝撃が襲い、機体は何度も爆発する。


「イベリス!無事か!?」

「カルロスさん!?」


 カルロスが部隊を引き連れ、死角から攻撃を行ってくれた。

 ルプス隊の持つミサイルや、エーテル兵器の攻撃によって、一部の砲台が破壊された。

 だが、砲台以外の装甲は、とてつもなく頑強で、傷一つ付いていない。


「この武器じゃダメか……各機!砲台を攻撃!イベリスを援護しろ!」

「チ、グズ共が!!」


 砲台の破壊に専念し始めるカルロス達であったが、ホエールの砲門は、彼らへと向く。

 それを見越したカルロス達は、既にホエールの周囲に散らばっていた。

 そのおかげで、全ての砲台は違う方に向けられ、攻撃が開始される。


「い、いけません!逃げてくださいませ!」

「安心しろ!分散した弾幕なら、かい潜れる!」

「そうではありませんわ!」


 カルロス達の操縦テクニックのおおかげで、分散された弾幕を潜り抜けられている。

 もちろん、デタラメに撃たれる砲撃に、カルロスが撃墜されるとは思っていない。

 問題なのは、周辺にまかれている兵器だ。


「た、隊長!ドローン兵器がっ」

「ッ!バカな、あれは!」


 ドローンの攻撃によって、カルロスの部下の一機が撃墜されてしまった。

 戦車砲並に大きなドローンには、ドライヴを搭載されている。

 それこそ、一撃でルプスを破壊する威力が叩き出されている。


「ドローン兵器か!?」

「はい!援護には感謝いたしますが、三十機ものドローンが配置されていますわ!貴方方ではッ!」


 逃げる事を推奨したかったが、そう言っていられる状況ではなくなった。

 しかも、ドローン達は、既にイベリス達を取り囲むように展開されている。

 その内の一機からの砲撃で、イベリスは、もう一つのブラスターを失ってしまう。


「ブラスターが無くとも、これで!」


 もう片方のブラスターを破棄したイベリスは、備え付けのメイスを取りだす。


「(せめて、彼らが切り抜けられる程、ドローンを破壊できれば!)」


 バックパックのブースターを吹かせ、イベリスはドローンを叩き潰す。

 弾幕をくぐり抜け、何とか一個を破壊できたが、それでは焼け石に水。

 ホエールからの弾幕に、強力なドローン兵器。

 イベリスだけならいいが、カルロスのような一般の兵士では、とても回避しきれない。


「チクショウ!回避が、追いつかない!」

「俺達じゃ無理だ!」

「何とか離脱しろ!このままじゃ全滅だ!」


 ギリギリのところで、回避を続けるカルロス達だったが、とうとう限界が来てしまう。

 カルロス以外の機体は、全て撃墜される。


「た、隊長!」

「う、ウワアアア!」

「クソ!」


 次々と破壊される部下達を前に、カルロスは激高。

 装備のバルカン砲と、ミサイルポッドを向ける。


「な!」

「どけ!雑魚に用はない!!」


 だが、イディオの眼中に、カルロスの姿は無かった。

 移動するホエールに衝突し、機体を大破させながら吹き飛ばされてしまう。

 彼の目に映るのは、イベリスしかない。

 しかし、味方の撃墜によって、イベリスの精神は限界を迎えようとしていた。


「あ、ああ……また、アイツのせいで」

「貴様を倒し、我らの夢見る、人類の崇高なる世界を、実現する!」

「ッ!貴方達が創る世界なんて、まっぴらごめんでしてよ!!」


 向かってくるイディオに対して、イベリスはオーバー・ドライヴを発動。

 正面から迎え撃とうと、突っ込んで行く。


「よくも、よくも!!」


 メイスを振りかぶり、ホエールへと振り下ろす。

 対するイディオも、破壊されていない方のブレードを向ける。


「スクラップになるがいい!」

「ちょっと退けや!!」

「何ッ!?」


 二人の武器がぶつかり合う寸前。

 オーバー・ドライヴを発動したデュラウスが、割って入った。

 アカツキの異常な加速能力と推力。

 直線的な速さで、質量をカバーした突進で放たれた蹴りで、ホエールの横腹を突いた。

 その直後、デュラウスはイベリスを睨む。


「デュラウス!?」

「テメェもだ」

「ッ!」


 遠くへ飛んで行ったホエールを無視し、イベリスへと距離を詰め、彼女の顔に拳を入れる。


「歯ぁ、食いしばれ!!」

「ブ!」


 顔面に一撃をいれられたイベリスは、通常の状態に戻り、デュラウスの胸倉をつかむ。

 今の打撃のせいで、奥歯が欠けた恨みもある。

 そもそも彼女達はヘルメットをしていないので、直撃を受ける事と成ってしまった。


「何をするのですか!?」

「……ちょっとは頭冷えたか?」

「……何が」


 胸倉をつかむイベリスの手を払い、デュラウスは曲がったアーマーを修復させる。

 ついでに、デュラウスの冷たい視線が、イベリスに刺さる。


「テメェは精神的に来すぎている、おかげで、二人も失った」

「ッ、そ、そうでしてよ、わたくしの、せいで……だからこそ!玉砕を覚悟して!」

「フン!」

「グ!」


 イベリスの発言に、デュラウスはもう一発顔に拳を入れた。

 そして、今度はデュラウスが彼女の胸倉を掴んだ。

 今のイベリスは、この三年のストレスでおかしくなっているとしか思えない。


「……厄介な物だよな、人間の思考、精神ってやつは」

「……ええ、悪い事ばかりでしてよ」

「そうやって悪い事ばかり考えてっからそうなる……良い事も有っただろ?」

「ですが、それでも、どんなに良い事が有っても、結局は、裏目に」

「……ああ、そうだな、その腕を見てると、俺も実感しちまうよ」


 捨てられ、どん底から這い上がった筈が、今も泥水をすする思いをしている。

 しかも、同胞と言える者達も、彼女達は失ってしまっていた。

 今イベリスの肩に装備されているサブアームに、目をやったデュラウスは、何時になく悲しい眼を向けた。

 その瞳のまま、左手でアームをさする。


「……もし俺が、あの時、そこ居たら、守れたかもな、チナツ」


 その言葉に、イベリスは息を飲んだ。

 デュラウスのさする、イベリスのサブアームのフレームは、チナツの腕を改良した物。

 各種の性能を上げているとは言え、七割以上彼女の腕だ。

 必ず助けようと握りしめ、生きたいと握られていた、チナツの腕。

 だが、本体は取り残され、助けられたのは、今付けられている両腕だけだ。

 当時を思い出したイベリスは、涙を流し初めてしまう。


「う……うぅ、わたくしが、不甲斐ないばかりに」

「……アイツにやられたんだろ?だったら、一緒にやらせろや、ライラックはシルフィに任せて来た、心配すんな」


 肩に手を置き、笑みを浮かべたデュラウスを前に、イベリスは涙をぬぐう。

 アリサシリーズとして目覚め、出会ったデュラウス。

 彼女とは何度も衝突し、喧嘩してきた。

 今や姉妹の契りを交わし、共に戦う仲だ。


「……貴女の血生臭い闘争心には、毎度、迷惑でしてよ」

「何時もなら食いかかるが、今回は、本当に喧嘩は無しだ」


 イベリスはメイスを、デュラウスは大剣を構えた。

 横に並ぶ二人が睨むのは、再度向かってくるホエール。

 今回ばかりは、本気で協力するべき敵。

 以前のように喧嘩ばかりでは、勝てる見込みはない。


「……で、イベリス、戦ってみてどうだった?」

「……とても、あのパイロットの技量でどうにかできる範囲には無いかと」

「なら、余程高性能な支援AIが積まれてるみたいだな」


 先ほどまでイベリスが戦っていた時に感じたのは、人間一人で扱いきれる代物ではないという事だ。

 数人がかりで動かすか、かなり優秀なAIが積まれていなければ、先ほどまでの動きは無理だ。


「その図体じゃ、接近は無理だろ?なら、お前が注意を引いてくれ」

「承知しましたわ、で?貴女は?」

「あのデカブツ後方の機関部を狙う、航行能力を失えば、二人でタコ殴りに出来る」

「……フフ、それは、良いご提案ですわ」

「何機で来ようと、我を倒す事はできん!!」

「行くぞぉぉぉ!!」


 デュラウスの作戦を実行するべく、二人はホエールへと攻め行く。




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