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エルフとガイノイドの百合劇場  作者: B・T
ナーシサス編
160/343

雷鳴 後編

 各地での戦闘終了後。

 三馬鹿は、戦場から離脱し、合流していた。

 イベリスとヘリアンは、先に合流し、イベリスの修復作業を開始する。


「くっつける」

「お願いします」


 合流ポイントに置かれていた補給物資を使い、ヘリアンはイベリスを修復。

 腕部を大きく切断されたので、丁度いいサイズの腕を制作し、取り付けた。

 本来、こういった整備は必要ないが、自然修復を待っていると、時間がかかる。

 なので、今回はスペアを用いて、修復を行った。


「ありがとうございます、これで何とか戦えますわ」

「気を付けて欲しい、ラベルクは旧タイプでも、私達より、戦闘力は上」

「ええ、見くびっていましたわ」

「それと、そこに代えの装備が有る」


 ヘリアンの指さした方には、三人の使用する装備の予備が置かれている。

 デュラウスに先んじて、二人は改めて装備を整えだす。

 イベリスは、先ほどと同じ物を。

 ヘリアンは、コンセプト通りにスナイパーライフルを持ち出す。


「(うん、良い状態)」

「あら?何か近づいて……」


 スナイパーライフルの点検を行うヘリアンの横で、イベリスは何かの接近を感知。

 その言葉を聞いたヘリアンは、急いで索敵を開始。

 だが、反応が友軍機で有る事を確認すると、すぐに武装を解除。


「ウワアアア!!」

「デュラウス……」

「い、一体どうしたの!?」

「うるさい!うるさい!うるさい!!」


 顔を両手で覆いながら、全力疾走してきたデュラウスは、合流してすぐに地面に突撃。

 地面でゴロゴロと転がり、恥ずかしさを全力で誤魔化している。


「如何した?そんな求愛したら、鋭いカウンター返された、みたいな感じに成って」

「てめぇ!見てやがったのか!!?」

「見てない、殺したいほど、愛してる、何て言った後、好きだよって言われて、カウンターされた場面なんて、見てない」

「ガッツリ見てんだろが!むっつりクソ女!!」

「むっつりじゃない」

「(愛してる?何の話ですの?)」


 ヘリアンの言葉に、デュラウスは食い掛る。

 尚、ヘリアンは見ていないと言っているが、思いっきり見ていた。

 シルフィに告白し、動揺する様を見ようとした結果、逆にカウンターをくらってしまった。

 一先ず、彼女の名誉を守るためにも、イベリスには話してはいない。


「そもそも、何であのタイミング?」

「別に良いだろ、恰好つけてもよぉ」

「あの、何のお話でして?」

「別に、単純にデュラウスが、シルフィにこくは」

「アアアアア!!!」

「(告白?今、告白と言いかけまして?)」


 特に何の情報も無いイベリスからしてみれば、何の話か解らず、置いて行かれてしまっていた。

 そんな彼女に、情報を開示しようとするヘリアンだったが、デュラウスはすぐに止めた。

 だが、こくは、と言いかけたせいで、イベリスは何の話をしていたか察してしまう。


「デュラウス」

「な、何だよ」

「あんな女の何処が良くって?」

「ダアア!うっせんだよ!てめぇまで!!」


 シルフィに告白。

 この事に関して、イベリスは否定的だった。

 何しろ、イベリスは内心、シルフィの事を嫌っている。

 半ばとばっちりで、廃棄されたイベリスの人間嫌いは深刻。

 特に、シルフィのように都合の良い人間は、嫌悪の対象でもあった。


「まぁそれはそれとして、告白を否定するとは、意外とヘタレですわね」

「やーい、ヘタレ女~」

「うっせぇ!!つーかヘリアン!てめぇどんだけガキっぽいおちょくり方してんだ!?」


 イベリスの放った悪口に便乗したヘリアンだったが、かなり子供っぽい物。

 語彙力は有る方だと思っていたデュラウスにとって、少し以外な印象をうける。

 しかし、ヘリアンとしては、少し腑に落ちなかったらしい。


「……えっと、へ、ヘタレ~、あ、あんぽんた~ん」

「下手か!?口喧嘩下手か!?」

「今どき、あんぽんたん何て言う方、初めて見ましたわ」


 ヘリアンの口喧嘩下手という、どうでも良い事が発覚。

 だが、そこに目を付けたデュラウスは、これ幸いと反撃に転ずる。

 それに、ヘリアンには前々から気になる部分が有った。


「つーか、ヘリアン、てめぇ実は嫉妬してんじゃねぇの?俺に先超されてよ~」

「……別に」

「そーかそーかぁ、羨ましいか~」

「うるさい」

「プ、ククク、お姉ちゃんに先超されたのが、そんなに悔しいか~」

「だから、先に告白されたからって、別に気にしてない、それに、私はあの子と友人になりたいだけ、恋人になりたいわけじゃない」


 ヘリアンの反論に、デュラウスはにやける。

 そんなデュラウスの反応を見て、ヘリアンは、はっと成る。

 悔しい事に、ヘリアンは墓穴を掘ってしまった。


「何?俺別に告白の事だなんて言ってないけど、俺が先にシルフィと戦って、嫉妬してんじゃねぇか?って聞いてるだけだぜ~」

「……」

「ちょ!ヘリアン!」


 完全に小馬鹿にしてくるデュラウスへ、ヘリアンはナイフを向ける。

 目がマジなので、イベリスはヘリアンを抑え込む。


「ステイ!ステイですわ!って、貴女意外と出力高いですわね!!」

「コロスコロスコロスコロスコロスコロス」

「怖!無表情なのがなおさら怖!!」


 襲い掛かろうとしてくるヘリアンを見て、デュラウスは完全に腰を抜かす。

 何しろ、無表情でコロスと連呼しているのだ。

 しかも、手にはナイフ、体格もヘリアンの方が高いので、余計に怖く感じる。

 ヘリアンを抑え込むイベリスも、意外と高いヘリアンの義体出力に、手を焼いてしまう。

 何とかヘリアンの気を紛らわせようと、デュラウスは思考を巡らせ、ダメ元で手もとに有った物をヘリアンに向ける。


「ほ、ほら、ヘリアン!補給物資の中にようかん有ったぞ!」

「そんな物で機嫌獲れる訳有りませんわ!!」


 デュラウスの奇行に、イベリスは思わずツッコミを入れてしまう。

 正直、デュラウス自身も、何故こんな事をしたのか解らなかった。

 ただ手元に有ったものを向けただけだ。

 そして、ようかんをつき出されたヘリアンは、イベリスの手から逃れる。


「あ、ちょ、悪かったって!!」


 デュラウスは、思わず身構える。

 だが、何時まで待っても、ヘリアンの凶刃は、デュラウスに来ることは無かった。

 恐る恐る、ヘリアンの方を向くと、そこには座り込んでいる彼女の姿が有った。


「ようかん、おいしい」

「(え~)」

「(え~)」


 完全に和みながらようかんを食べるヘリアンに、二人は呆気にとられる。

 さっきまで完全にサイコキラーの如く、無表情で襲い掛かっていたヘリアン。

 それが今や、縁側でくつろぐ老人の如く表情で、ようかんを食べている。

 感情の起伏が激しいとか、そんな感じではない。


「い、以外だな、アイツ、ようかん好きなのか」

「わ、分かっていて渡したのではなくて?」

「いや、完全に偶然」

「悪運、お強いのですね」

「そうでもねぇよ」


 心なしか、二人の目には、ヘリアンの周りだけ、日向ぼっこに最適な日の縁側に見えてしまう。

 そんな風に思えてしまう程、ヘリアンは美味しそうにようかんを食べていた。


「……とりあえず、新しいランス、使わせてもらうか」

「わ、わたくしも、装備のスペアを」


 ヘリアンの事は、とりあえず放っておき、二人は装備を整えだす。

 何とも美味しそうにようかんを食べるヘリアンを他所に。


「おいし」


 ――――――


 その頃。

 カルドとカルミアは、とある部屋へと足を運んでいた。


「経過は如何だい?」

「ばっちり、もう動かせるよ」


 二人の入った部屋。

 そこの電灯をつけた瞬間、二人の目には、複数のアンドロイド機体が目に留まる。

 綺麗に並び、マネキンのように直立不動を崩さない彼女達。

 それを見て、カルドは少し微笑む。


「AS-104『アキレア』三十機ロールアウトしたよ」

「上出来だよ、カルミア、流石と言った具合だ」


 アキレア達は、前々からカルミアが設計していた量産機。

 アリサシリーズの流れをくみ、リリィや、この島での戦闘データを反映させたモデルだ。

 カルミア達のように、豊かな感情は持ち合わせていない。

 単純に、戦う為だけのアンドロイド。

 それが彼女達だ。


「装備はそろってるかい?」

「当然、量産用にデチューンした奴を生産、主兵装はエーテル・ハルバード、副兵装は、高周波ブレード」

「エーテル・ギア」

「名称は『セリス』、汎用性、拡張性に優れた奴にカスタムしておいた」


 今の彼女達の装備を、カルミアは次々説明する。

 彼女達には、特定の外観と言う物はない。

 マネキンのように無個性な義体。

 その上に、スーツとエーテル・ギア、ヘルメットを装着している。

 全て同じ外観の為、見分けは胸部の番号位だ。

 もしくは、それぞれに割り振られた識別信号。


「さて、威力偵察はここまで、此処からは、本当の戦争だよ、ストレンジャーズ」


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