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エルフとガイノイドの百合劇場  作者: B・T
ナーシサス編
156/343

殺す者、従う物 中編

 ドレイク達が戦闘を繰り広げている頃。

 ラベルクとイベリスは、お互いに隙を伺い合っていた。

 だが、ラベルクとしては、そんな事よりも、気になる事が有りすぎた。


「……しかし、幾らエーテル貯蔵量を上げる為とは言え、そのように破廉恥な義体は、マスターへの侮辱と捉えますよ」

「あら、わたくしにとっては、ヒューリーの思惑など、蚊帳の外の事、それに、年がら年中メイド服のお姉さまには、言われたくありませんわ」


 二人共笑顔を浮かべているが、その目は決して笑っていない。

 と言うか、二人が人間だったら、青筋の一つや二つ浮かべていたところだ。

 一応は清楚感を大事にしている身同士として、戦い以外は極力笑みを絶やさない。

 そんな二人でも、自分の容姿やこだわりをいじられるのは、我慢ならないらしい。


「メイドとして、有るべき姿をしているのみでございます、貴女も、その無意味にだらしのないお体にせずとも、エーテル・ギア、あるいは、そちらの砲に、エーテル・ドライヴをセットするなり、色々有ったでしょうに」

「有るべき姿?オタクの夢見るコスチュームで着飾っておきながら、そのような発言をするとは、貴女の方が余程破廉恥なのでは?それに、わたくしは単純に、エーテル貯蔵量を上げ、相手の装甲を破壊する事も視野にいれているのですよ、決して、無意味でなくてよ」


 今にでも、殴り合いに発展しそうな雰囲気。

 ラベルクは、バスターソードの刃を丁寧に磨きだしている。

 イベリスも、メイスの柄を握り潰しそうに成っている。

 そんな中でも、ラベルクは、イベリスの発言で、聞き捨て成らない部分が有った。


「おやおや、随分、決して、を強調しておりますね、何か、裏のご事情でもおありで?」

「ッ、ですから、無意味でないことを強調したかったのですよ」

「今、完全に挙動が不審でしたよ」

「で~す~か~ら~、物理攻撃能力を上げる為でしてよ!!」

「おや~?もっと怪しいですね~」


 イベリスの挙動不審を見たラベルクは、絶対にいいカードを手に入れたと、確信した。

 どう考えても、イベリスには何か有る。

 そう思っただけで、何時になくいい笑みを浮かべてしまう。


「そう言えば、私の義妹たるシルフィ様も、何やら大きくて柔らかい物がお好みだとか」

「如何してシルフィの名前が出て来るのですか!!?」

「おや?照れ隠しでしょうか?」

「軽蔑ですわ!」

「おやおや、そのような表情を成されても、説得力は無くてよ、ツンデレお嬢様」

「……」


 シルフィの名前を出した途端、イベリスの言動はあからさまな物になった。

 いくらいじっても、ブレなかったお嬢様表情は、完全にブレだしてしまった。

 仕草に至っては、清楚感の欠片も無い。

 だが、ラベルクの調子に乗ったあだ名は、逆にイベリスの逆鱗に触れてしまう。


「そうでしたか、では此方からも言わせていただきますわよ、おばあさん」

「……」

「……」


 この一言で、お互いの堪忍袋の緒が切れる。


「死ねぇぇ!!」

「死ねぇぇ!!」


 初手で、二人の重装備がぶつかり合う。

 もう清楚の【せ】の字も無い。

 ラベルクは、できればドレイク達の援護を行いたかったが、イベリスの戦闘力は予想以上に高い。

 大盾に大型メイスと、超重量装備でありながら、ラベルクの動きに引けを取らない。


「流石103型、破廉恥な姿と成っても、それほどの性能を出せるとは、流石はマスターです」

「そちらこそ、旧式だというのに、今のわたくしに追従する性能とは、恐れ入りましたわ」


 無駄口を叩き終えた二人は、戦闘を再開。

 イベリスの操るメイスと、ラベルクのバスターソードはぶつかり合う。

 瞬間的に敵を粉砕する事を前提とした、イベリスのメイス。

 対して、ラベルクのバスターソードは、頑丈なだけで、ただの大剣。

 パワーだけでは、ラベルクに勝ち目はない。


「パワーだけを上げた所で!」


 ラベルクは、イベリスのメイスをかいくぐりつつ、懐へと入る。

 姿勢を低くし、イベリスの腹部を狙う。


「ッ!」


 だが、瞬時に反応したイベリスは、バックステップで回避。

 その隙に、ラベルクは肩部の二連装機銃で牽制。

 盾によって防御するイベリスへ向け、ランチャーによる砲撃を繰りだす。

 一般歩兵にも支給されるランチャー。

 ラベルク向けに改良を加えられていても、イベリスの盾を破壊する火力は無かった。


「流石に頑丈ですね」

「ええ、折角お姉さまが相手なのですから、お返しして差し上げますわ!」


 そう言うと、イベリスは盾をラベルクに向ける。

 すると、盾は展開し、中から砲門が出現。

 瞬時にどうなるか把握したラベルクは、空中へ退避。


「逃がしませんわ!!」


 逃げたラベルクへ向けて、イベリスは砲撃を行う。

 先の砲撃ほど、威力は無いが、今の装備では防ぎきれないような威力。

 幸い、弾速は遅く、ラベルクは空中で回避。


「ならば」


 イベリスは、ラベルクを追って、空中へと飛び上がる。

 シールドのキャノンで、ラベルクを狙いつつ接近。

 ラベルクをメイスの射程内に捉え、一気に振り抜く。


「しまっ!」

「背面からであれば!」


 ラベルクは、寸前の所でメイスをかわし、イベリスの背面へと回り込む。

 バスターソードを、イベリスのスラスター目掛け、一気につき出す。

 その時だった。


「な!?」

「想定内ですわ」


 背面にマウントされていたイベリスのバズーカ。

 その砲門は、ラベルクへ向けられ、低出力の砲撃を繰りだされる。

 サブアームを介し、砲撃を行ったのだ。

 この攻撃は、流石に予想外であったラベルクは、砲撃をバスターソードで受け止める。


「ッ!」


 受け止めた砲撃は、低出力だというのに、ラベルクを吹き飛ばす。

 その砲撃で、完全に姿勢を崩したラベルクへ向けて、イベリスは攻撃を続ける。

 シールドのキャノン砲による追撃。

 ラベルクは、バスターソードを盾代わりに受け止め続けながら、地面へ叩きつけられる。


「……信じられませんわ、まさか、この攻撃に耐えきるとは」


 イベリスは、空中からラベルクの状態をスキャン。

 使用しているバスターソードは、かなりの損傷を受けている。

 だが、本体はあまりダメージを受けていない。


「(あの剣、何と言う強度、シールドキャノンは、バズーカ程火力は有りませんが、それでも、相応に火力はありますわ)」


 少し見くびっていたイベリスは、メイスをしまう。

 代わりに、背中のバズーカを取りだし、狙いを定める。

 義体のダメージは僅かであっても、衝撃で動きはかんまんと成っている。

 その内に、エーテルをチャージ。


「今度こそ、終わりですわ!」


 地上のラベルクへ向けて、バズーカによる砲撃を放つ。

 町へ放ったものより、火力は劣るが、シールドキャノンよりも、各段に威力は上。

 着弾した砲撃は、地面へクレーターを形成する。


「……」


 爆炎の舞う中で、イベリスは様子をうかがう。

 慎重に索敵をおこない、ラベルクの安否を確認。


「居ない?まさか!」


 ラベルクの姿を確認できなかったイベリスは、瞬時に後方へ下がる。

 それと同時に、保持していたバズーカは両断される。


「ッ!?オーバー・ドライヴ・システム!」

「ええ、その通りです!」


 イベリスのバズーカを切断したのは、オーバー・ドライヴを使用したラベルク。

 砲撃を超スピードで回避し、イベリスへ奇襲を行ったのだ。

 それを見たイベリスは、再度メイスを装備する。


「ならばこちらも!!」


 メイスを構え直し、オーバー・ドライヴを使用。

 全体はピンク色に発光し、ラベルクと高速戦闘を開始する。

 大型兵器特有のかんまんさは無くなり、更に早い動きの戦いが始まる。


「流石ですわお姉さま!そのような急造品で、わたくしと張り合うとは!」

「機体の性能だけで、戦力の差は決まりません!!」


 一撃の破壊力に長ける武器同士のぶつかり合い。

 互いの一撃が交差しあうたびに、強烈な金属音が響き渡る。

 なにより、ラベルクは自らの言葉を証明するかのように、イベリスに肉薄する。

 ラベルクは、ただ単にヒューリーの元で給仕をしていたわけでは無い。

 多くの戦場で、ジャック達との闘いを繰り広げて来た。

 そのノウハウを用いて、性能的には上であるイベリスを押し始める。


「ッ!?(何故ですの?わたくしが、おされている?)」

「(103型とて、ロールアウトしたばかり、経験ではこちらが上!!)」


 押されていくイベリスに向けて、ラベルクは渾身の一撃を繰りだす。

 イベリスは、とっさに盾をつき出す。

 重々しい金属音が響き渡り、イベリスの盾にヒビが入る。


「そんな!」

「これで!!」


 衝撃で吹き飛んだイベリスへ向けて、ラベルクは砲撃を行う。

 今度は最大出力によって攻撃を行った。

 段違いの威力を叩き出した砲撃によって、イベリスの盾は今度こそ破壊される。


「キャアア!!」

「斬り捨て、御免!!」


 ラベルクは、バスターソードを大きく振り上げる。

 姿勢を崩すイベリスに、反撃を行う余裕はない。

 刃はイベリスへと迫る。


「ッ!!?」


 バスターソードは、イベリスの右腕を切断。

 重装甲のエーテル・ギアに加え、イベリスの身体その物。

 これらを一気に切り裂く。


「これで、終わりです……ッ!!?」


 ラベルクが二の太刀を繰りだそうとした時。

 彼女の身体は、爆炎に包まれる。


「何ですの?友軍機?」


 ラベルクは爆炎に包まれた事で、動きを阻まれてしまう。

 イベリスは、その隙にラベルクから距離を取る。

 それと同時に、救援に来た友軍を確認する。


「あれは……お気の毒ですわね」


 イベリスの危機を救ったのは、複数機のエーテル・アームズ。

 左肩からの出血を止めながら、イベリスは後退する。

 流石に、もう戦える状態ではない。


「逃がしてしまいましたか……ですが、これで中尉達の援護へ回れますね」


 イベリスを逃がしてしまったラベルクは、地上から接近してくるエーテル・アームズに狙いをつける。

 彼らの援護の為に、魔物も複数混ざっている。

 オーバー・ドライヴを解除し、バスターソードを構える。


「申し訳ありませんが、排除させていただきます」


 地上に降り立ったラベルクは、迫りくる魔物と、エーテル・アームズを一気に斬る。

 攻撃の際、ふとした疑問も浮かんだ。

 だが、今は目の前の任務を遂行するべく、戦いを続けた。

 援護に来た部隊は、一個小隊程度の規模。

 ラベルクにとっては、少ない方だ。


「……(しかし、このエーテル・アームズ、パイロットは一体)」


 殲滅の完了と共に、ラベルクは疑問に引っ張られる。

 襲い掛かって来た機体は、ナーダの使用する物。

 アンドロイドや魔物が、動かせない訳ではないが、戦っている時に疑問が生まれた。

 何しろ、動きに人間に近いものを感じた。

 機械によって操られる魔物。

 アンドロイドの操縦、そのどちらでもない。


「少し、失礼いたしますね」


 気になったラベルクは、コックピットのハッチをこじ開ける。

 その中を見たラベルクは、目を見開いてしまう。


「こ、これは」


 思わずハッチを閉じたラベルクは、カルド達の居る本拠の方角を睨みつける。


「これが、貴方の言う平和と言う物なのですか?カルド」


 ラベルクが目にしたのは人間。

 それも、この基地に勤めていたスタッフ達だ。

 彼らは、四肢を切断されたうえで、エーテル・アームズの操縦系に、直接接続されていたのだ。

 意識をアンドロイドのAIと繋げた状態で。


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