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エルフとガイノイドの百合劇場  作者: B・T
ナーシサス編
155/343

殺す者、従う物 前編

 イベリスの砲撃により、ドレイクの指揮する部隊は、痛手をこうむる事となった。

 だが、ドレイクは何とか部隊の収拾をつける。

 そのおかげで、危うい状態である事に変わり無くとも、応戦を開始する。


「ルプス隊!揚陸艇の防御を固めつつ、敵の進行を食い止める!サーバル5・6!そのまま牽制しつつ下がれ!」


 ドレイクの支持の元、ルプス隊は大型のシールドを構え、揚陸艇を囲う。

 周囲を固めつつ、装備のロケットランチャーで、後退してくるサーバル隊の援護を行う。

 一方から迫る大群。

 この状況であっても、何とか対処できる方法が有る。

 何しろ、ここをどれだけ壊しても、降格も賠償も無いのだ。


「……まだだ、まだ、ギリギリまで引き寄せろ」


 後退してくるサーバル隊。

 彼らは、後ろに下がりつつ、装備のライフル等によって牽制。

 搭載されているホバーユニットのおかげで、速度は出せている。

 だが、相手は重装備でありながら、その強靭な脚力で、自動車並みに早く走れる。

 ルプス隊の後方支援が有っても、追いつかれるのも時間の問題。

 そんな相手達であるが、指定のポイントを、サーバル隊が通り過ぎる。


「発破!!」|


 その瞬間、ドレイクは目を見開き、部下に指示を下す。

 魔物達の両サイドに並ぶビルへ向けて、砲撃を開始。

 自重を支えられなくなったビルは、一気に崩れ落ちる。

 爆音と共に、ビル群は、崩れ落ちる轟音を響かせながら、魔物達を押しつぶす。


「よっしゃあ!」

「はは!見たか化け物共!!」

「図に乗るな!これ位で終わる戦いではない!!」


 瓦礫の下敷きになる魔物達を見て、一瞬だけ安堵する隊員達を、ドレイクは一蹴。

 全員の前に立ち、高周波ブレードを抜いたドレイクは、瓦礫を睨みつける。

 彼の予感は当たり、瓦礫から強力な魔物達のみ、這い上がって来る。

 それだけではない、ビルの倒壊から逃れた魔物達も、続々と瓦礫を踏みこえて来る。


「……タンク、近づいてくる魔物は、手あたり次第砲撃しろ!ルプス5とサーバル5は、防御陣形を維持し、揚陸艇を守れ!残りは私と共に進め!」

『ウオオオオ!!』


 ドレイクがブレードを掲げると、他の隊員達も、それに同調する。

 相手は理性無く攻めて来るデク。

 もう作戦無しに、正面から戦う他ない。

 本来であれば、こんな方法は得策とは言えない。

 だが、彼らもストレンジャーズとして、数々の死線を潜り抜けて来た。


「ゲームの勇者にでも成った気分だぜ!!」

「コイツはゲームじゃねぇ!マジの殺し合いだ!気を抜くな!!」

「散るな!必ず二人以上で行動しろ!!」


 隊員達の持つ武器。

 ブレード、大剣、メイス、斧と言った原始的な物。

 それら全て、隊員一人一人の技量に依存する武器。

 エーテル・ギアを着用していなければ、本当に中世の戦争に近い。


「ルプス隊!頼りにしているぞ!!」

「おう!デカいのは任せておけ!!」


 そう言い、ルプスは保持しているバトルアックスを構え、先行する。

 この作戦では、ルプスは三機ずつの編成。

 先ほど一機やられ、残りは五機。

 その内三機は前線へ出ており、一機だけ更に前へと出る。

 狙うのは、同様に斧を構えるミノタウロス。

 情報によれば、着用しているアーマーは、重層型のエーテル・アームズと同等。

 だが、その下の皮膚は、更に固いという。


「チェオラアアア!」

「グヲオオ!」


 同格の巨体を持つ二人。

 両者の攻撃は交差する。

 ルプスのパイロットは、交通事故にでも遭ったかのような衝撃を、身体に受ける。

 スーツを着用していても、こういった衝撃にだけは慣れない。


「ッ!このぉ!!」


 ミノタウロスの装甲に、斧の刃が突き立てられる。

 人工筋肉の出力、斧の高周波。

 これらの恩恵をもってしても、ミノタウロスの装甲をはだけさせる事で精いっぱいだ。


「ウソだろ!?マジで硬てぇ!!」

「打ち砕けないなら!!」

「ッ!?」


 よろけるミノタウロスに対し、もう一機のルプスが接近するのを確認。

 彼の攻撃を確かな物とするべく、先行したルプスは道を開ける。


「コイツで、如何だっ!!?」


 もう一機のルプスが装備するのは槍。

 本来は装甲の隙間を狙い、弱点を突く武器。

 だが、今回はホバー移動の推力を利用し、質量兵器として使用した。

 そのおかげで、ミノタウロスの胸部は貫かれる。


「た、助かったぜ」

「こいつ等の強度は予想以上だ、一撃一撃に手を抜くな!」

「了解!!」


 ミノタウロスから槍を抜き、ルプス隊は、引き続きミノタウロス級の大型の敵を相手取る。

 そして、その足元では、小型の魔物達を相手に、サーバル隊が泥沼の戦いを繰り広げる。

 今回派遣されてきたのは、ゴブリンの上位種、ホブゴブリン。

 先ほどまでのゴブリンとは比較に成らない戦闘力を持つ。

 他にも、コボルトやスケルトンと言った魔物もいる。

 いずれも、近代装備によって武装する。


「現実で戦うと、気味の悪い連中だ!」

「しかも銃何か持ちやがって、セオリー無視してんじゃねぇぞ!!」


 ミノタウロスと比べ、比較的弱い方であるが、近代兵装のせいで、異質にも程が有る。

 だが、おかげで、見慣れた敵ともとれる。

 そのおかげもあり、サーバル隊は何とか交戦する。

 しかし、何より危険なのは、その数。

 数は十倍以上。

 体力的な疲れよりも、精神的に疲れる危険性が有る。


 ――――――


「味方に当てるな!化け物だけを狙え!」

「まさか、こんな泥沼試合になるとはな!」

「無駄口を叩くな!少しでも気を抜けば、揚陸艇を破壊されるぞ!」


 次々と迫りくる魔物達。

 その対処に当たる前方の部隊。

 彼らの戦いを遠くから眺めつつ、狙撃によって支援を行う。

 彼らの守る大型揚陸艇は、遠方に居る部隊との通信、周辺の情報収集を行える。

 しかも、まだ中には大量の備蓄物資が有る。

 破壊されれば、それらも失う事となる。

 故に、何としてでも守らなければならないのだ。


『揚陸艇から地上部隊へ』

「何だ!?こっちは忙しい!手短に頼む!」

『上空の部隊より伝達、敵の増援を確認しました、多方向からの攻撃に注意してください』


 無線による通達を行ったのは、揚陸艇に乗る一機のアンドロイド。

 チハルの姉妹機、チフユ。

 彼女は主に、ドレイクのオペレーターとして、任務に参加している。

 現在は、この町で活動する部隊全員のオペレーターの役割を担っている。


「まだ来るか」

『敵の位置をマーク、ディスプレイに表示します』

「……クソ、倍以上の数だ」


 チフユの手で、守備隊とドレイクに、増援の位置を伝えられる。

 上空でハーピーとの戦闘を行う、コンドル達が認識した物。

 前方の道路は勿論、その左右の道からも、次々魔物がやって来る。


「揚陸艇!そっちの状況はどうだ!?」

『迎撃準備完了、地上部隊、空中部隊の支援を開始します』

「ありがたい」


 チフユの言葉と共に、揚陸艇の各部位から、アンドロイド兵や、エーテル・アームズが出現。

 ロケットランチャーや、スナイパーライフルと言った、遠距離武器を主に持つ。

 他にも、揚陸艇に搭載される兵装も起動、迫りくる魔物達に照準を合わせる。

 降下したばかりという事も有り、たった今迎撃態勢が整ったところだ。


「各員、多方向から来る魔物に対し、制圧射撃を行え!火力を惜しむな!!」

「了解!」


 再度陣形を組み直し、地上部隊は増援としてやってきた魔物達へ、射撃を開始。

 揚陸艇に搭載される兵器は、高火力な物が多い。

 大口径のレールガン、ミサイル、バルカン砲等。

 前線司令部として運用するべく、ほとんど動く要塞と言えるような武装だ。

 以前ジャック達が使用した物と違い、エーテル・ドライヴを複数搭載。

 その恩恵で、強力な砲撃を惜しみなく行える。


「まるで演習だぜ!こんなにバカスカ撃てるなんてな!!」

「全くだ!目を瞑っても当たるぜ!!」

「気を抜くな!アイツらは恐怖を感じない!撃つのを止めれば、一瞬で飲み込まれるぞ!」


 揚陸艇からの砲撃支援。

 コストを度外視した、兵器の運用方。

 これらを持って、魔物の大群へエーテル弾や弾丸を打ち込む。

 だが、進行を先送りにするのみで、効果的な攻撃とは言えない。


「何が演習だ!これじゃゾンビ映画のモブキャラみたいになんぞ!!」

「怯むな!アイツらを市街地に送られたら、途方もない被害が出るぞ!」

「被害どころか、町が無くなる!!」


 前方の部隊も、増援の魔物達を相手する。

 三方向から襲い掛かる魔物の大群。

 小隊規模の歩兵に、エーテル・アームズと、タンクが少し加わった程度の戦力。

 数的にいって、あまりにも差が有りすぎる。

 二方向の敵を抑えられても、もう一方はおろそかに成っている。


「マズイ、押されてるぞ!」

「歩兵は下がれ!俺達がやる!」


 遂に防衛線を突破した魔物を相手するべく、ルプス隊は前へでる。

 近接装備に切り替えたルプス隊は、魔物へと迫る。

 接近戦を行おうとした時、後方部隊は、謎の雨に打たれる。


「な、何だ?」

「天気雨か?」


 等という話が有った途端。

 彼らに襲い掛かってきた魔物達は、突如発生した風と水に襲われる。

 暴風と水でできた刃。

 それらに襲われた魔物達は、一瞬にして討伐される。


「無事か?」

「ちゅ、中尉」

「こっちから来る奴らは、私がやる、お前たちは向こうの奴らの支援にまわれ」

「りょ、了解」


 新たな支持を下したドレイクは、高周波ブレードを握り直す。

 すると、ブレードに風と水がまとわりつき始める。

 そして、ドレイクは一気に前方へと踏み出し、魔物の群れへと突っ込む。

 同時に、水と風の刃が同時に吹き荒れた。

 ドレイクは、一瞬にして大半の魔物を殲滅した。


「桜我流剣術・晴嵐(せいらん)


 この光景を見て、隊員達は思い出した。

 今のドレイクは、ジャックに迫る戦闘能力を持っているという事を。


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