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エルフとガイノイドの百合劇場  作者: B・T
ナーシサス編
153/343

嫌な思い出はなかなか忘れられない 中編

 シルフィ達が町の制圧を完了した頃。

 カルドは、マザーを介し、現在の戦況を把握していた。

 ヘリアンの狙撃をかい潜り、上陸に成功。

 その後、戦力を分散させ、上空の本隊との連絡手段の構築を開始。

 ここまでは想定内だ。


「ふ~む、どうやら、予定通りに進軍してくれているようだね」


 ジャックの方は、到着と同時に、ドローンと本人の剣によって、瞬時に制圧を完了。

 ラベルクの方も、保持するキャノンによる砲撃、ドレイクの活躍によって、制圧を完了した。

 何とも早い進軍だが、驚きはしない。

 むしろ、ここまで来てくれなければ、肩透かしもいい所。


「なぁ、何時に成ったら俺らの出番なんだ?」

「いい加減待ちくたびれましたわ」


 戦況の把握を行っている所に、デュラウスとイベリスが話しかけてくる。

 二人共、かなり落ち着きが無さそうにしている。

 現在動員したアリサシリーズは、ヘリアンのみ。

 撤退してきた彼女は、ジャックとの再戦に燃えており、銃器をぎんみしている所だ。


「安心していいよ、もうじき彼らの本隊が到着する、君達には、彼らを相手取って」

「おっしゃ!んで、何時だ!今か!?」

「焦らないで、今彼らは陣を形成している所、折角だ、明日にでもしよう」

「ちぇ」


 カルドの提案に、ウキウキしていたデュラウスは、少しふてくされる。

 何しろ、義体を新調してから、実戦はまだ。

 エーテル・ギアも、新しく制作したばかり。

 まるで、新しいおもちゃを買ってもらった子供のように、はしゃいでいた。

 なので、彼女としては、もっと早く戦いたいと思う所だった。


「そんじゃ、仕方ねぇから、俺はアブクマの整備でもしてくるわ」

「あ、それも良いけど、誰が何処に攻めに行くか、三人で決めておいて」

「うい~っす」


 カルドの言葉に、デュラウスは不愛想でガサツな感じに、ヘリアンの元へ行く。

 イベリスと共に、またクソ長い通路を歩く。

 人間はもういないので、なんとも寂しい通路と成ってしまっている。


「しかし、あのような態度はいかがな物かと思いますわよ」

「何がだ?」

「彼は仮にもわたくし達のマスター、もう少し敬意を払われては?」

「はぁ、乳だけじゃなくて、態度もデカく成ってないか?お前」

「う、うるさいですわ、こうしなければ、エーテル貯蔵量が、わたくしの思い通りに成らないのですよ」


 隣を歩くイベリスを、デュラウスは細めた目で見つめる。

 今のイベリスは、義体をカスタムしたことで、身長は他の姉妹の誰よりも高い。

 とはいえ、ヘリアンとは、並べないと解らない位の差だ。

 それだけでは、彼女の思い通りにいかなかったようだ。

 なので、何故か胸部を少し大きめに設計したらしい。


「ま、良いか、さっさとヘリアンの所行こうぜ」

「はい、彼女の事ですから、あそこに居ますわね」

「十中八九そうだろうな」


 適当に話ながら進み、ヘリアンのいる可能性の高い場所へと足を運ぶ。

 それは、ヘリアンの部屋の近くにある空き部屋。

 その地下には(ヘリアンが勝手に作った)地下室が有る。

 そこには、ヘリアンが(許可なく、趣味で)制作した銃器を置いてある。


「やっぱりここか」

「ですわね」


 思った通り、地下室に通じる扉が開きっぱなし。

 二人は、下へと降りていき、大量の銃器を飾ってある部屋にたどり着く。

 銃器だけでなく、実弾や色々な装備を制作するための機材もそろっている。


「おーい、ヘリア~ン」

「……」


 部屋の中央で、ヘリアンを見つける。

 だが、何かブツブツと呟きながら、銃を選んでいる。

 二人の存在にも気づいていない。


「あ」

「しばらく無理そうですわね」


 ヘリアンは、銃を選ぶとき、何故か自分の世界に入ってしまう。

 いつも通りのような無口ならば、特に問題ない。

 しかし、今のようにブツブツと呟いている時は、マジで人の話を聞かない。


「バックアップのハンドガン、銃剣仕様は効果的だったけど、やっぱりジャック相手には、威力が不足してる、彼女と戦うなら、銃剣はいらない、そうなると、メインアームが重要……ライフル系今回パス、ランチャーは……当たらなきゃ意味がない、こっちもパス……いや、案外使えるかも、でも、メインはやっぱりショットガン系に成る」


 等と独り言をつぶやきながら、ヘリアンはショットガン系の銃を取る。

 手に取った複数種のショットガンは、目の前のテーブルに並べられる。

 かなりの数を選別され、更にそこから選出を開始する。


「ダブルバレル式、セミート、ポンプアクション、各種エーテル式と実弾式、その他諸々、アイツと戦うなら、やっぱりエーテル系が良い……けど汎用性が有るこっち?でも、重量がかさばる、こっちにするか?いや、扱いやすさ重視のこっち、いや、最終的には接近戦をすることになるか」

「この感じ、なんか身に覚えが」

「奇遇ですわね、わたくしも、何か……」


 独り言をつぶやきながら、大量に有る何かを独りで選ぶ。

 この様子に、二人は何となく身に覚えを感じる。

 とはいえ、もう少しで終わりそうな感じは出ている。

 メインの選択が終われば、後はサブアームを十五分以上悩みだす。

 その後は、結局は何時もの二丁拳銃に落ち着く。

 そういった事は、何度か見てきたので、二人はわかっている。


「あ、あのオッサンが一人で飯食うドラマ」

「あ~、確かにあれですわね」

「……やっぱりこの二丁は外せない、でも、あえてソードオフのダブルバレルを……いや、ショットガンはもういい、やっぱりこっちを……いや……う~ん、私のイオスには、やっぱりこっち……」

「後何分だ?」

「後五分か、十分程ですわ」

「うどんでも作るかな~」


 折角なので、カップのうどんと、ヤカン、カセットコンロを用意し始めるデュラウスであった。

 しかし、先にヘリアンの銃の選択が終了。

 選び終えたショットガンを持ちながら、ヘリアンは二人の存在に気付く。


「……ここで何してる?」

「あ、終わっちまったか」

「貴女もお食べになりますか?」


 今まさにお湯を注ごうとしている所を、ヘリアンは目撃。

 折角なので、イベリスの提案にのったヘリアンだったが、少し考えてしまう。

 二人は、赤いカップうどんを持っている。

 しかし、ヘリアンは、緑のソバ派。


「……緑有る?」

「おう、有るぜ」

「じゃぁ、それ」


 ヘリアンの好みを知っていたデュラウスは、ヘリアンに緑のソバを渡す。

 予め沸かしておいたお湯を注ぎ、数分後。

 ちょっとしたおやつ感覚で、三人は麺をすすりだす。

 その際に、カルドから言い伝えられていた事の話を始める。


「あ、そう言えば、ヘリアン、お前は、ジャックとシルフィ、ラベルク、この三人の誰と戦いたいんだ?」

「急に何?」

「カルド様のご命令により、明日、わたくし共で三手に分かれた彼女らの襲撃を行います」

「そう、なら、ジャックの方に行かせて欲しい」


 ヘリアンの発言に、デュラウスは少し驚く。

 てっきり、シルフィの方に行くと言い出すかと思った。

 だが、考えてもみれば、リリィを除き、この中でジャックと戦闘経験が有るのは、彼女だけ。

 少し、ライバル意識じみた物を覚えたのだろう。


「うし、じゃ俺がシルフィだな」

「お待ちを、わたくしに行かせてもらます?」

「そうか、やっぱりお前もか」


 イベリスの発言に、デュラウスは彼女を睨みつける。

 何しろ、二人は是非ともシルフィと戦いと考えていた。

 二人共個人的な感情とはいえ、二人にはシルフィと戦う理由がある。

 出来れば、譲りたくはない所だ。

 うどんのツユまで飲み干したデュラウスは、勢いよくカップを置く。


「しかたねぇ、やるか」

「ええ、そうですわね」


 お互いに殺気を込め、右手を振り上げる。

 相手の手の内を読みつつ、どのように手を打つか、二人の思考は高速で回転する。

 そして、二人は掛け声と共に、手を出す。


「最初はグー!!」


 という掛け声と共に、普通にジャンケンを始める。

 だが、二人の出した手はパー。

 そのせいで、お互いに睨み合ってしまう。

 横でヘリアンは、目を細めながら観戦する。


「……なぁ、お姉ちゃんは確か、最初はグーって言った筈だが?」

「わたくしの地元では、これはグーですわ」

「見苦しいぜ」

「普通にやって」


 ヘリアンの言葉で、二人は改めてジャンケンを再開。

 あいこが続くとかではなく、勝負は長引く事に成る。

 お互いに負けては、三本勝負、五本勝負と、どんどん勝負回数が増えてしまう。

 最終的に百本勝負まで膨れ上がり、デュラウスが勝利した。

 その際、喧嘩ざたになりかけ、部屋を荒らされないように、ヘリアンが静止させたのが大きい。


 ――――――


 三バカがジャンケンに明け暮れている頃。

 暗い部屋でただ一人、リリィは送られてきたデータに目を通していた。


「……」

「如何したの?辛気臭い顔して」

「貴女には関係有りません」


 外で行われている戦闘のデータファイルを読むリリィに、カルミアは話しかける。

 その表情は、何処と無くゆかいさを感じる。

 だが、今のリリィには、そんな事を気にする余裕はない。

 データの中に、シルフィの姿を捉えたのだ。


「……如何して、どうして来たのですか?貴女まで」

「良いじゃん、感動的だね~、昔の恋人同士が再開する、それも、お互いが敵同士に成る戦場で」

「……貴女の歪んだ思考に、付き合う暇は有りません」

「ははは、ま、どうせアンタ等とアタシが戦うのはもっと後、その前に、アタシがケリつけるかもだけどね」


 カルミアの言葉に、リリィは軽く舌打ちをする。

 どう転ぼうと、シルフィが危険に成る事に変わりは無い。

 虎の子として残されている今。

 何とももどかしい気持ちになる。

 今すぐにでも会いに行きたくても、行く事は許されない。

 そして、彼女を殺さなければ成らない。


「如何して、何故こんな事に」



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