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エルフとガイノイドの百合劇場  作者: B・T
ナーシサス編
152/343

嫌な思い出はなかなか忘れられない 前編

 上陸に成功した先鋒部隊達。

 彼らは、装備のチェックを行った後、四つの指定された班に分かれ行動を開始。

 B班として動く事に成ったシルフィは、ネロと共に、指定ポイントを目指す。

 装甲車に搭乗し、歩兵数名と、同人数のアンドロイド兵と共に移動。

 他のビークルは、多脚型の戦車一両、ルプスとコンドルの一機ずつを支給された。

 シルフィは装甲車の銃座に座り、偵察を行っている。


「シルフィ、敵の布陣は解るか?」

「えっと……ゴブリン、ハーピー、オーク、みんな、あの機械っぽい装備着けてる」

「そうか、数はどれほどだ?」

「……見た感じだと、ゴブリン三十四、ハーピー二十六、オーク十二」


 千里眼のおかげで、シルフィは目の前に広がる市街地全体を見渡せる。

 町並みは、シルフィも見慣れた木組みと石畳でできた物。

 因みに、ジャックの向かったポイントは、木造の多い町。

 ラベルクの向かったのは、所謂高層ビルの立ち並ぶ町だ。

 比較的見慣れた町に群がる魔物達。

 近代兵器で武装していなければ、かなり親しみが有る。


「(何時もは食材とか、アイテムの素材みたいな感じだけど、あんな事されてると、何か可哀そう)」


 機械化されている魔物達。

 解析の結果、彼らは洗脳によって、強制的に戦わされている事が判明した。

 それだけならいいが、武装はかなり酷い。

 右手のライフル、左手のシールド、全身の鎧。

 これら全て、身体強化効果のある金属フレームに繋がっている。

 そのフレームは、骨にボルトを直接打ち付けられ、固定されているようだ。

 ラベルク曰く、こうすると、操作のラグを最小限にできるとの事だった。


「……はぁ」

「如何かしたか?」

「あ、ごめんなさい、ちょっと、魔物達がかわいそうで」

「かわいそう、か、今は、そう言った感情は捨てた方が良い、お前だって、狩りをするとき、イチイチ生殺与奪を気にしたりしないだろ」

「う、そうだよね」


 ネロの発言に、シルフィは言い返せなくなる。

 今は戦争中、相手に同情している場合ではない。

 いつもと同じだ。

 仲間と一緒に、魔物を倒す。

 それだけの事。


「ところで、他に何か特徴的な物は有るか?我々の一番の目的は、町の制圧ではなく、後続の道を開ける事にある」

「あ、そうだった」


 ネロの言葉に、シルフィは最優先任務を思いだす。

 今この島は、高濃度のエーテルに包まれている。

 それだけでも厄介だが、ジャミングもされているようだ。

 その影響で、宇宙にいる本隊への連絡を、満足に行えない状態。

 今下手に増援を呼べば、まだ残っている対空砲の攻撃にさらされる。

 無用な犠牲を出す事になるのは、承知できない。


「えっと……あ、何体か屋根に上ってる、両手に、何か大きい武器持ってるし、背中に何か背負ってる」

「巨大な武器、恐らく、対空砲の類か、背部は、エネルギー供給用の装備か、あるいは通信妨害装置、というところか」


 シルフィの報告をもとに、ネロも双眼鏡を覗き、敵を認識し、思考を巡らせる。

 現在の戦力は、二個分隊程度しかない。

 下手に攻撃をしかければ、増援部隊を呼ばれて壊滅しかねない。

 しかも、相手は機械仕掛けの敵。

 心理攻撃や、催涙弾なども通じない以上は、このまま奇襲による殲滅を続行するしかない。


「よし、各機に通達、このまま直進せよ、我々には土地勘が無い、正面からの攻撃を行う、優先目標は、背部に大型のバックパック背負う個体だ、恐らく、通信妨害を行う個体と推測される」


 装甲車内の無線を使い、ネロは部隊へ指示を下す。

 無線の内容を聞いた隊員達は、より引き締まった表情へ変わり、武器の準備を開始。

 シルフィは、銃座の席を正規の隊員と変わり、車内へ戻る。


「コンドル2、ハヤブサ隊と共に先行!敵の気をそらせ!」

「了解!先行する!」


 ネロの指示により、コンドル2はハヤブサ隊三名と共に先行していく。

 町の上空へと移動し、コンドル2は、地上にいる魔物をサーチ。

 装備するエーテル・ライフルを構え、上空から射撃を開始。

 共に先行したハヤブサ隊も、装備のエーテル・ライフルを使用し、狙い撃つ。


「こっちに気付いた!」

「散開しろ!地上部隊が町に入れればいい!」

「鳥やろう共もでてきたぞ!」


 上空の部隊の存在に気付いた魔物達は、上空へ射撃を開始。

 それに伴い、ハーピー達も飛翔し、コンドル2達へと接近。

 空中の部隊達は、飛来してくるハーピーを中心に狙い、次々撃ち落としていく。

 対空砲火を避けつつ、空中の敵を撃破する。

 危険にも程が有るが、彼らも伊達に死線を潜り抜けてきた訳ではない。


「はは!動きが単純すぎるぜ!」

「戦友の仇だ!容赦しないぞ!」


 上陸時に相手取った時は、射撃の難しい状況であったが、今の状況は、通常の戦闘でしかない。

 ハヤブサの性能の恩恵により、重力下であっても、縦横無尽の動きを可能としている。

 おかげで、ハーピー達は勿論、地上の魔物達も、彼らを捉える事に難航している。


「ブヲオオ!!」


 オークたちには、両手にガトリング砲と、両肩の対空砲を装備している。

 ガトリング砲は、純粋なエーテル兵器。

 両肩の対空砲は、エーテル技術を用いていても、実弾を使用している。

 火薬ではなく、圧縮したエーテルを使用し、砲弾を打ちだす。

 そのおかげで、対空砲は、サイズに似合わず、長距離の砲撃を可能としている。

 上空の部隊に対し、オークたちは雄叫びを上げながら砲撃を行う。

 だが、それは命取りとなる。


「こっちがお留守だぜ!」

「ッ!?」


 オークの身体は、二つに引き裂かれる。

 到着した地上部隊、ルプスの使用するバスターソードによって、両断されたのだ。

 着用するアーマーは、ソードの質量によって砕かれ、体は容易く切断された。


「よし、サーバル隊、ゴブリンを中心に排除!タンクとルプス2は、オークを狙え!」


 装甲車から降りたネロは、巨大な斧を携え、サーバル隊と共にゴブリンを相手取る。

 多脚戦車と装甲車は、機関砲や主砲によって、歩兵部隊の支援を開始。


「オッシャァ!覚悟しやがれよ!」


 地上戦闘用に調整されたエーテル・ギア、サーバル。

 腰部には、ハヤブサの物と違い、地上戦闘用にカスタムされた物を使用し、装甲も強化されている。

 射撃装備は、エーテル・ライフル。

 接近戦装備は、種類が安定しておらず、各々が好きな武器を携行している。

 背後からのアンドロイド兵の射撃支援により、安心して接近していく。


「ウオラァ!」

「ヌン!!」


 ホバー走行による高速移動。

 そこから生まれる運動エネルギーを利用し、ゴブリンを一撃でほうむる。

 だが、体格差の有るオーク相手には、十分距離を取りつつ、ライフルで牽制。

 歩兵に気を取られた所で、戦車砲によって貫かれる。


「レールガンの味は如何だ!?豚野郎!」

「今日はポークソテーにでもするか!?」


 元々、血の気の荒い戦車部隊。

 口を悪くしながら、搭載されているレールガンを打ち出す。

 その威力は、シルフィのストレリチアには及ばない。

 それでも、目標を貫くには十分すぎる火力を持っている。


「次はどいつだ!」


 意気揚々と、敵を排除していくB班。

 だが、機械化しているゴブリン達の長所は、しぶとさでもある。

 倒したつもりでも、また動き出してくる事も稀にあった。


「へ!今回は楽勝だな!」

「おい!そいつ頭潰れてないぞ!」

「え、ヌお!?」


 サーバル隊の一人は、完全に油断していたところを、殺しきれていなかったゴブリンに襲われる。

 現在の魔物達は、機械化の影響により、生命力が上がっている。

 頭を完全に潰さなければ、たとえ上半身だけに成ろうと、襲い掛かってくる程だ。

 完全に不意打ちを受け、食いつかれそうになってしまう。


「……あれ、て、怖!」

「ギャギギギ!!」


 だが、襲われる寸前で、一枚の板により、ゴブリンの攻撃は阻まれる。

 それでも、隊員に食い掛かるので、軽い恐怖を覚えた。

 驚いて腰を抜かす彼の代わりに、ゴブリンの頭に攻撃が打ち込まれる。


「……弓矢、はぁ、助かったぜ!」


 立ち上がると、少し高めの建物に居るシルフィへと、グッドサインを送る。

 シルフィは、後方へとさげ、全体の把握と、狙撃を頼んである。

 ストレリチアのおかげで、更に長距離の精密狙撃を可能としているだけあり、狙いは正確だ。

 ついでに、プロテクト・ドローンによって、歩兵たちを守る事も役目だ。


「……良かった、当たって」


 狙撃に成功したシルフィは、少し気を緩める。

 何しろ、隣には護衛として、高機動型のアンドロイド兵を付けられているのだ。

 モデルは、リリィと最初に有った日に戦った物と同じ。


「(ヤバい、思ったらダメだけど、トラウマが……)」


 何しろ、シルフィは一度、彼らに殺されかけている。

 今は味方とはいえ、先入観のせいで、謎の恐怖心を抱いていた。

 失礼だと思って、ずっと考えずにいたが、銃口を向けられないかと、ヒヤヒヤしてしまう。

 しかも、何の因果かと思える事が起こり、ちょっと変な気分にも成ってしまう。


「グギャギャギャ!」

「ゴブリン」


 シルフィの狙撃位地に上がって来たゴブリンは、二人よりも早く射撃を開始。

 銃弾が来る前に、シルフィはアンドロイド兵を下げ、ドローンで防御する。

 全ての銃弾を弾いた事を確認し、シルフィはドローンを解放。

 背後のアンドロイド兵と共に、射撃を行い、ゴブリンを蜂の巣にする。


「……」


 この光景に、シルフィは軽いデジャブを覚え、過去を思い出す。

 リリィと初めて出会ったあの日。


「ゴメン、リリィ、居たわ、銃撃してくるゴブリン」


 何とも奇妙な気分に成った。



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