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エルフとガイノイドの百合劇場  作者: B・T
ナーシサス編
151/343

降下作戦 後編

 ジャックは先鋒部隊よりも、一足早く上陸を達成。

 海中に仕掛けられていた機雷群を力づくでかい潜り、砲撃を行っていた部隊と対面する。

 敵側の戦力は、アリサシリーズのヘリアンと、通常の高機動型アンドロイド四機。

 対空砲を破壊し、五機のアンドロイドを引っ張り出したジャックは、戦闘を開始する。


「酔狂なものだ!接近戦でチャンバラやるご時世に、射撃特化とはな!!」

「別に、私が望んだわけじゃない、単純に他の連中より、射撃が上手いだけ」

「そうかよ!」


 何時ものように、炎をまとった刀で戦うジャック。

 彼女に対し、ヘリアンは大型のエーテル・ガン二丁で戦闘を行う。

 エーテル・ガンの下部には、通常のアダマント合金で制作された銃剣を装備しており、接近戦にも対応している。

 銃剣による刺突、払い。

 それらと同時に、ヘリアンは発砲する。

 アニメかゲーム位でしか、見る事の無いような戦い方に、ジャックは思わず笑ってしまう。


「おもしれぇ戦い方だ!俺でもそんな奇抜なやり方しねぇぜ!」

「アタッチメント無しの銃で、殴ったりするアンタに、言われたくない」

「(喋り方、もっさりしてんのが地味に気になる!)」


 刃同士のぶつかり合いで生じる火花と共に、射出されたエーテル弾も周囲にまかれる。

 他のアンドロイド達は、ヘリアンの邪魔に成らないよう、遠方から銃撃を加える。

 むしろ、それは余計な行為。

 ジャックの駆るドローンで、簡単に撃破されてしまう。


「(コイツも厄介だが、先鋒部隊の連中の負担も、軽減してやらねぇとな!)」


 ヘリアンとの接近戦。

 それと同時に、ジャックは次々と出撃するハーピー達を、ドローンによって撃破。

 以前の物のように、エーテル・ガンは外付けではなく、装甲で完全に覆っている。

 上下の開閉によって、銃口を出現させ、内部の加速器により、威力と弾速を向上させている。

 その恩恵により、高速で動くハーピーも、刺突だけでなく、射撃も有効打となる。


「(器用な奴、私と戦いながら、ドローン操作で、ハーピーを落としてる、でも、それは慢心でもある)」


 ヘリアンは、ジャックを更に鋭い眼で睨む。

 ドローン操作と接近戦の同時展開。

 それは簡単な事ではない。

 スポーツをしながら、ゲームをプレイしている事と同じ。

 神業に近いが、そんな事をすれば、僅かな瞬間に明確な隙を生じさせる事に成る。


「そこ」

「ッ!?」


 ジャックのわずかな隙を付き、ヘリアンは腹部へ刺突。

 刃はアーマーを貫き、ジャックの腹部を裂く。

 更に容赦なく、ヘリアンはゼロ距離から射撃を行う。

 遠距離からの効果は薄くとも、ほぼ接着している状態であれば、相応のダメージは受ける。


「アガガガガ!!」

「フン!」


 ゼロ距離でエーテル弾を撃ち込まれ、アーマーは損傷。

 体にも容赦なく撃ち込まれ、内部を抉られる。

 自然に抜けるまで撃ち込まれると、ジャックの顔面にヘリアンの蹴りが炸裂する。


「や、やりやがったな」

「成程、やっぱりこの程度じゃ、ダメなんだ」


 蹴りによって吹き飛ばされたジャックは、すぐに持ち直し、傷を再生させる。

 同時にアーマーも修復され、すぐに万全の状態となる。

 それを見たヘリアンも、俄然やる気を出す。


「……それじゃ、準備運動は、この辺でやめよう」

「賛成、こっからは本気で行くか」


 ヘリアンの提案に賛同したジャックは、刀を構え直す。

 それを見たヘリアンも、銃をしまい、腰に差してあるナイフに手を当てる。

 同時に、右目を覆っている前髪にも、手を置く。


「……」

「……」


 二人は硬直する。

 互いににらみ合い、隙を伺う。

 正に一触即発の空気が流れる中で、ジャックはとある音を拾う。


「来たか」

「こっちも来た」

「チ」


 ヘリアンの言葉に、ジャックは舌打ちをする。

 彼女の言う通り、島の奥の方からも何かの音が聞こえて来る。

 海の方からも、先鋒部隊は接近している事は解るが、早速厄介な事になりそうだ。

 そんな警戒をするジャックだが、目の前のヘリアンは武装を解除する。


「それじゃ」

「な、逃げんのかよ!?」

「うん、どうせ、迎撃任務は失敗してる、アイツは、万全のあんた等との、闘いを望んでる、むしろウエルカム」

「あ、待ちやがれ!」


 色々と言い残したヘリアンは、島の奥へと飛び去ってしまう。

 残されたジャックは、後続の部隊と同時に、迫りくる脅威に対し警戒を強める。

 刀をしまい、愛用のハンドガンと、支給されたライフルを構える。


「さて、何が来やがる?」


 すると、上空から複数のコンテナが投下。

 地面に突き刺さり、コンテナは開放される。

 出てきた中身を見て、ジャックは驚く。


「ッ!ゴブリンか!?それにオークまで」


 中から出てきたのは、乱雑に詰められたゴブリンとオーク。

 しかも全員もれなく機械化済み。

 装甲化された表面に、右腕には射撃武器。

 左腕には、シールドとブレードの複合兵装を持っている。

 そんな連中が、ジャックへ向けて、猛進してくる。


「OK、やってやんよ!!」


 迫りくる魔物の群れに、ジャックは制圧射撃を実行。

 一人で応戦していると、先鋒部隊はようやく到着。

 ジャックを援護するべく、戦闘を開始する。


 ――――――


 十数分後。

 到着した先鋒部隊の協力によって、沿岸の制圧に成功。

 キャンプを設置し、状況の整理を始める。


「はぁ、死ぬかと思った」

「お疲れさん、まぁこっからが本番だ、頑張ろうや」


 その前に、初めての実戦に、お疲れのシルフィを、ジャックはなだめる。

 初めての高速移動状態での戦闘、疲れない方がどうかしている。

 それに、ヘリアン達の対空砲、ハーピーの襲撃。

 そのせいで、コンドル一機とハヤブサ隊三名を喪った。

 そう言った部分の気苦労も有る。

 なだめ終えたジャックは、敷設されたテントへ入り、状況を確認する。


「しかし、一機だけとはいえ、コンドルを失ったのは痛手ですね」

「ああ、だがこのままの戦力でやるしかない、連中の対空警戒網に穴を開けないとな」

「はい、こちらの沿岸部分だけでなく、この近辺に有る市街地に、対空用の設備がございます」


 ジャック、ラベルク、ドレイク。

 この三人は、島の全体図を眺め、今後の方針をまとめようとする。

 そこで生まれる疑問は、何故この無人島に市街地が複数あるのか。

 理由は簡単、様々な地域での訓練を行う為。

 それに関しては、ブリーフィングの資料にまとめてあった。

 ジャック達は、深堀せずに話を続ける。


「我々の居るポイントはこちら、本隊の誘導を行うには、この三か所を制圧する必要がございます」

「成程、なら、先ずは部隊を四班に分けるか」

「しかし、それでは戦力を分散する事に成りますよ」

「ああ、だが、シルフィの話では、アリサシリーズには、砲撃支援モデルもいる、下手をすれば、一網打尽にされかねない」

「それに、こうする事は敵も予想している筈、増援にアリサシリーズを導入してくる危険性も有る、全員で同じポイントを制圧するとなれば、話に出ていた五機すべてを相手にする可能性も高くなる」


 ラベルクの疑問に、ジャックとドレイクはスラスラと答える。

 二人にとっては、当たり前の事なのだろう。

 そう思えるやり取りに、ラベルクは少し笑みをこぼす。


「先ず、このポイントを制圧するA班、こっちはB班、三つ目にC班、そして、この沿岸警備にD班だな」

「アリサシリーズが来るとすれば、対空警戒網の生きているABC班のポイントか」

「ああ、警戒網の穴を塞ぎに来る可能性が有る」

「そうなると、俺とシルフィ、ラベルクを筆頭に、お前ら三人も連れ出すか、それと、ラベルク、一ついいか?」

「何でしょうか?」

「沿岸の対空砲、あれ、使えそうか?」


 ある程度考えがまとまると、ジャックはテントの外にある対空砲を指さす。

 ドローンで破壊したとはいえ、そこまで修復には時間はかからない。

 だが、セーフティに生体認証の類を使っている場合を考慮すると、使えない可能性も有る。

 ラベルクは、ジャックの質問に答えるべく、対空砲をスキャンする。


「……スキャン完了、小破しておりますが、修復後、プログラムを変更いたせば、皆さまにもお使いいただけるかと」

「そいつは良かった、俺達が行っちまうと、戦力が四分の一未満になるからな、少しでも火力を保持しておきたい」

「左様でございますか、では、修復とセッティングは、こちらで致します、大尉と中尉は、皆さまに作戦概要を」

「ああ、頼んだぜ」


 ――――――


 ジャック達が、作戦を纏めている頃。

 シルフィは海に向かって、祈りを捧げていた。


「(まさか、もう死んじゃう何て……これが、戦争)」


 部隊の面々は、少し苦い顔をする程度だった。

 慣れている、というよりは、割り切らなければ、やっていられない。

 そんな感じの表情がほとんどだった。

 幸い、上陸してすぐの戦闘では、目立った犠牲は無くとも、それなりに被害は出た。


「(負傷者十名、ここの人たちは、回復魔法が使いえないから、治療による自然治癒を待つ事が一般的)」


 この事実に、シルフィは自分の無力さを思い知る。

 ヘレルスが居れば、少しは違った。

 そういう考えが出てきてしまう。

 千里眼を覚えられても、まだ天の方は不十分。

 回復は行えず、むしろ患者を苦しめる事に成ってしまう。


「(……悩んでちゃダメ!今は私も兵士何だから!)」


 両頬を叩き、気合を入れなおしたシルフィは、ジャックの招集命令を耳にする。

 遅れてはならないと、急いでみんなと一緒に集合する。


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