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エルフとガイノイドの百合劇場  作者: B・T
ナーシサス編
150/343

降下作戦 中編

 ムラサメより出撃した部隊は、予定通り成層圏を突破。

 徐々に高度を下げ、気休め程度に敵の対空警戒網をくぐる。


「こちらジャック、全機無事成層圏を突破、此れより敵基地へ向かう」

『了解、敵の対空攻撃に警戒しつつ、孤島へと侵入してください』

「了解」


 等と話すジャックを見て、シルフィは更に緊張する。

 何しろ、向かっている場所から、何時攻撃が来るのか解らないのだ。

 そんなに遠くから攻撃された事も無いので、緊張はぬぐえない。


『安心しろ、そう簡単に当たったりはしない、ま、お前の言う射撃特化型のアリサシリーズの腕にもよるな』

「そんなこと考える余裕ないんだけど」


 高速で飛行する中、ジャックはシルフィの緊張に気付いたのか、無線を入れて来る。

 さっこんでは、エーテル兵器の発展で、精密な攻撃は難しく成っている。

 実際、敵の拠点までかなりの距離が有るので、余程の射撃精度が無ければ、当たる事は無い。

 当たるとすれば、まぐれか、当たった奴の運が相当悪かったかのどちらかだ。

 だが、最も警戒すべきは、シルフィの言っていた射撃特化型のアリサシリーズ。

 彼女がどれ程の腕を持った機体かで、かなり違ってくる。


『まぁ無理はするな、先ずは実戦の空気を覚えろ、あんまりイキると、貧乏くじひk』

「……」


 完全に慢心しているかのような話しぶりで、シルフィを落ち着かせようとしていると、ジャックは緑色の光に包まれる。

 それは、敵の放ったと思われる長距離ビーム攻撃。

 他の機体はジャックから距離を取る形で避ける。

 代わりに、ジャックは直撃をくらい、火だるまになりながら海へと落ちていく。

 当然、シルフィはその様を、唖然としながら見ていた。


「ジャックゥゥゥ!アイツ何やってんの!?前回までさんざん恰好つけといて真っ先に撃墜されたんだけど!?」


 出撃前にさんざん恰好つけていた筈のジャックは、無念にも撃墜されてしまった。

 一応、規定によって、参加メンバーの中で最も階級の高いドレイクに隊長任務が継承される。

 なので、シルフィは慌ててドレイクへと無線を入れる。


「ちょ、ちょっとドレイクさん!ジャック落とされた!真っ先に落とされた!」

『うろたえるな!!』

「うろたえるわ!!」

『たかが大尉を落とされただけだ!各機、気にせず、予定通り防御陣形を維持しろ!!』

『Sir,Yes,Sir!!』

「おい!スレイヤー愛されてんの!?軽んじられてんの!?どっち!!?」


 ドレイクの言葉は、全員に通達され、皆揃って気持ちの良い返事をする。

 ついさっきまで、指導者的な存在感を出していたジャックに対しての反応には、とても思えなかった。

 だが、今はチームで動いている。

 ネロからも教わったが、こういった場合、上官の命令は絶対、シルフィは渋々防御陣形を維持する。


『ルプス隊、前方に展開!エーテル・フィールドによって、敵対空砲を防ぎ止めろ!!』


 ドレイクの指示通り、ルプス隊の五機は部隊の全面へと移動。

 持っているシールドにより、協力して巨大なシールドを形成する。

 先鋒部隊の編成は、ドレイク率いる空中機動型エーテル・アームズ、コンドルを中心に編成されている。

 今前面に出ているルプスは、補給物資を積んだ揚陸艇を中心に、防御を固めている。

 エーテル・ギアのハヤブサと、エーテル・アームズのコンドルは、敵の空中戦力への備えでもある。


「(凄い、もう陣形が完成した)」


 ジャックの撃墜を期に、目標地点からは次々砲撃の雨が降り注いでくる。

 先ほどの長距離ビームだけでなく、実弾による砲撃により、弾幕を形成。

 それに対抗するべく、ドレイクの指示によって、ルプス隊は前方展開し、防御フィールドを展開。

 続いて、コンドルを外周に配置し、ハヤブサは内側へと配置。

 おかげで、敵の長距離砲撃は完全に防ぎ止めている。


「(でも、敵のプランAを妨害しているだけ、すぐにプランBが来る)」


 シルフィの予想通り、こうなると読んでいたかのように、敵の増援部隊が正面からやって来る。

 少佐からは、鍛えた視力を用いて、索敵を行って欲しいと頼まれていた。

 なので、すぐにドレイクへと無線を繋げる。


「ドレイクさん!敵が来てる!」

『数は!?』

「えっと、ハーピーが二十五!正面からくる!」

『了解!』


 シルフィの言葉通り、ハーピーが、正面より飛来してくる。

 だが、通常の個体ではなく、サイボーグ化しているハーピー。

 表面の装甲化だけでなく、スラスターや機銃と言った武装も施されている。

 これらを迎撃するべく、周囲の隊員達は戦闘態勢をとる。

 幸い、ルプス五機のおかげで、巨大な防御フィールドが張られているので、正面からの攻撃を気にする事は無い。


「迎撃しろ!」

「輸送機とルプス隊を守れ!絶対に落とさせるな!」

「そうしたいが、敵が早すぎる!!」


 フィールドでカバーできるのは前面だけ。

 戦列を維持しながら、長距離を狙撃できるだけの出力の砲撃を防ぐためには、致し方ない。

 なので、コンドル隊もハヤブサ隊も、死にもの狂いで迎撃を始める。

 装備のライフルやバルカンを用いて、弾幕を形成し、接近を防ぐ。

 しかも、相手は航空機よりも小回りの利きやすい鳥型の魔物。

 機銃による牽制を行いつつ、内部へと侵入、輸送機へと食らいつこうとする。


「クソ!誰かコイツを排除してくれ!」

「待ってろ!すぐに行く!」


 輸送機に取りついたハーピーを引きはがすべく、コンドル3は輸送機へ接近。

 上部の装甲を、機械化されている足で引っ掻くハーピーを、コンドル3は引きはがす。


「このクソ鳥が!」


 コンドル3は、輸送機から剥がしたハーピーの首をへし折り、そのまま海へ捨てる。

 そして、輸送機の損傷状態を確認する。


「コンドル3より輸送機へ、安心しろ、損傷は軽微だ!」

「助かった!」

「後ろから来てるぞ!」

「ッ!?しま!」


 コンドル3の確認終了と同時に、ハーピーの接近を許してしまう。

 ハヤブサ隊の一人の忠告で気づいても、既に遅く、取りつかれた勢いで、姿勢を崩してしまう。

 一羽だけでなく、次々と取りつかれ、戦列から離れて行ってしまう。


「畜生、離れろ!!」

「マズイ、それ以上は!」


 周りの機体達は、コンドル3を助けようとするが、他のハーピーに邪魔される。

 コンドル3はフィールドの外へ出されてしまい、狙い撃たれてしまう。

 しかも、取りついているハーピー三体を道ずれに。


『グアアア!!』


 彼の断末魔を最後に、無線は完全に通じなくなってしまう。

 爆散するコンドルを目撃した仲間は、苦い表情を浮かべ、進軍と迎撃を続ける。


「コンドル3ロスト」

「(何?今何か、気持ちが悪く)」


 ドレイクは、通信により、仲間一人がロストした事を通達する。

 それと同時に、シルフィは頭痛と吐き気を覚える。

 だが、それはすぐに収まり、他の隊員と共に、目的地へ進む。


「焼き鳥にしてやら!」


 仲間の死を惜しむ間もなく、次々ハーピーは襲い掛かり、進路を妨害してくる。

 そんなハーピーに対し、迎撃を続ける。

 しかし、高速で動き、しかもサイズは人間程度の目標を、簡単に撃ち落とせる訳も無い。

 再度ハーピーの侵入を許してしまい、今度はシールドを持つルプスへと迫る。

 現在のルプスは、巨大なフィールドを張る事に、エーテルを集中しており、迎撃の余裕はない。


「マズイ!ルプス4に取りつこうとしている!」

「任せろ!!」


 ルプスを一機でも失えば、砲撃とハーピーの攻撃で、全滅しかねない。

 それだけは阻止するべく、ハヤブサ隊の一人がナイフを手にし、ハーピーへ接近。

 取りつきかけていたハーピーを捕まえ、喉をかき切った。


「た、助かった」

「良いって事よ!って、おい!前!!」」

「前?ぬおわ!!?」


 救出されたルプス4の目前に、ハーピーが迫る。

 完全に特攻してきており、フィールドに激突。

 その衝撃によって、フィールドの一部に隙間を形成してしまう。

 それほど大きくは無く、すぐに修復できるサイズだ。


「お、驚かせやがって」


 安心もつかの間。

 形成された穴に、先ほどから撃ち続けられている緑色のビームが打ち込まれる。


「う、ウソだろ!!?」

「なんつぅ狙撃能力だよ!!」


 正に針に糸を通すが如く技。

 フィールドの穴を通り抜けたビームは、三名のハヤブサ隊に直撃。

 ルプス4は小破、輸送機一機も、軽微の損傷を受ける。


「……クソ、各隊!前方からの特攻にも気を配れ!狙い撃ちにされるぞ!!」


 ――――――


「……エーテル、圧縮完了」


 その頃、シルフィ達の目的地である島の沿岸部。

 其処には数門の長距離砲が取り付けられている。

 一機のアリサシリーズは、砲台にエーテルを充填、狙いを定め続ける。

 その際、高精度のスコープが、シルフィの姿を捉える。


「……シルフィ、やはり、来てしまった」


 少し微妙な気持ちになりながらも、狙撃を続ける。

 砲撃によって、牽制を行いつつ、ハーピーの部隊でかく乱。

 その隙に狙撃を行う。

 相手が降下部隊を覆う程のフィールドを張ることは、想定内。

 だが、フィールドは、あまりにも大きい場合、高い質量の実弾兵器で、穴をあけられる。

 空いた部分を狙えば、容易に撃墜できる。


「……敵機急速接近」


 狙撃を行っていると、近くにある海辺から、水柱が上がる。

 海中に仕掛けられている、機雷の爆発だろう。

 だが、無数の機雷何てものともせず、少女の元へと近づく。

 こんな無茶苦茶な攻め方をしてくる人物には、心当たりが有る。

 いや、完全に察しはつく。


「ジャック・スレイヤー」

「大大大正解ぃぃ!!」


 そんな叫びと共に、先ほど撃ち落とされた筈のジャックが水面より現れる。

 空中へ上がると同時に、ジャックは新調したドローンを繰り出す。


「行け!サイコ・ドローンⅡ!」


 腰下部分に取り付けられたラックより、ドローンは発進する。

 以前使用された剣型の物とは違い、羽に近い物。

 完全に金属の塊にしか見えないが、以前より、打突武器としての性能を上げてある。

 ジャックによって操作されるドローンは、砲台へと突進し、一時的に機能を停止させる。


「……非常事態発生、増援の要請、及び、迎撃を開始、目標を排除する」


 砲台から降りた少女は、二丁のハンドガンを引き抜き、銃口をジャックへ向ける。

 リリィに比べ、体格は大きく、スレンダーな物。

 一目見ただけで、イケメンと呼べるほど、顔は整っており、特徴的な蒼い髪で、右目を隠している。

 緑を中心にしたエーテル・ギアは、守りよりも、回避に専念しているかのような物に成っている。


「さて、仲間の為にも、足止めさせてもらうぜ!!」

「……AS―103―04ヘリアントス、目標を排除する」


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