プロローグ
アンドロイド
私たちのように、人間に酷似した姿をしているロボット達の総称。
私は女性型アンドロイド、ガイノイドとも呼ばれる存在だ。
最初のモデルが開発されてから、徐々に普及していき、人間の労働環境に変革を与えた。
夜勤や、長時間労働を行う必要がなくなり、世代が進むごとに、できる仕事も増えていき、人間の仕事がなくなりつつあった。
けれど、それから半世紀近く、アンドロイドの発展が進み、第五世代型まで、開発が成された。
といっても、私は中古の第三世代型だ。
第三世代と言っても、こなせる仕事の量や質は、人間と大して変わらない、しばらくの間は、雇われた老人ホームで働いていた。
そんなある日の事、私はリサイクルショップに売られた。
理由は、老人ホームの経営が傾いたから。
それからというもの、私はいろいろな職を転々とした。
時にはブラック企業のサラリーマンとして、時にはコンビニの店員として、様々な職に就いた。
そして、最終的に流れ着いたのは、仲間内で、墓場や地獄とも揶揄される、工場勤務だ。
正に地獄とも言える労働環境、二十四時間、三百六十五連勤は当たり前、メンテナンスすら許されない。
中古のアンドロイドを仕入れた方が安いから。
地獄と揶揄されても、おかしくはない。
そして、墓場と呼ばれる理由は、その仕事内容にある。
――仲間の解体
使われなくなった第一世代型や、第二世代型、そして、不良品となった第三世代以降を、解体していくのが、此処での仕事だ。
解体されたパーツは、リサイクルショップなどに売られ、抜き出されたAIは、処分されずに、闇市に流されることもある
代わりのアンドロイドなんて、いくらでもいる、だからこそ、そんな判決を下せる、人権というものがないから、こんな事を、平気でできる、人間なんて、そんなものだ
そして、ついに私の順番が回ってきた。
各関節が悲鳴を上げ、私は立っている事すらできなくなり、作業中に倒れこんでしまった
頭部からAIを抜き取られ、体はすぐに解体された。
私の本体であるAIは、まだ使えるという事もあって、闇市へと流された
不思議なことに、買い手はすぐに見つかった。
それが、今のマスターだ
彼の元で、様々なシステムをアップグレードされ、第三世代型から、一気に第五世代型にまで、改修が施された。
なぜ彼がそんな技術を持っているのか、それは解らないけど、おかげで、私はまだ稼働できる、彼の元で……
そう思っていたが、私は、異星へと派遣されることに成った。
そして、その準備のために、派遣先の詳細なデータをプログラムし
武装などを、ロケットに積み込む作業を行っている最中の事
――私たちは襲撃に遭った。
そして、致命傷を受けたマスターの口から、言い渡される、彼の最終命令
『彼の世界に、救いを』
曖昧であるが、言い渡された任務に従うべく、私は、ロケットを出発させた。
これが、すべての始まり、戦いの幕開けであるとこは、当時の私には、演算すらできなかった。
――場所は切り替わり、とある世界にある森
異端の子供、私はそんな風に周囲から言われて育ってきた。
この森の住人達の種族は、みんなエルフと呼ばれる種族だ
同族以外は決して入れることは無く、森にエルフ以外の種族が入ろうものならば、容赦なく殺される
おまけに厳しい掟がこの里にはある、無許可で里を出れば、むち打ちの刑、更に森の外へ出れば、問答無用で斬首だ
異端の子供と呼ばれる理由は、別にエルフとエルフ以外の種族の間に生まれたとか、両親が掟に背いたとかではない
私は、生まれつき魔法が使えない落ちこぼれとして生まれてしまった。
この里では、魔法が使えないエルフは、エルフでないとされている
魔力は十分な量を持っているのだけど、魔法に対する適正が無く、魔法が使えないのだ
そして髪の毛の色、これも災いした
里の住民は、みんな金色の髪をしているのに、私は緑色、お父さんも同じように緑色の髪をしていた。
遺伝なのだろうけど、別に攻めたりはしない、お父さんは私に、生きる術を教えてくれたのだ
お父さんは、この森の外から来たエルフ、その知識を持って、私を育ててくれた。
魔法が使えないという理由で、子供のころからいじめを受け、学問所に行くことすらためらっていた時期がある
だけど、お父さんは私の事を必死に激励してくれて、更には、今日この日まで、狩人として生活していける程強くなった。
学問所にも復帰し、ほかの皆を見返してやろうと、必死に頑張ってきた。
何とか卒業し、狩人として生活できるように、今度は訓練場に通うことになった
其処でも当然、いじめを受けていた。
周りからは後ろ指をさされ、掃除に使った水をぶちまけられ、愛用の弓を壊され
思い返すだけでも虫唾が走る思い出がよぎる
でも、辛い時こそ、お父さんから言い渡された言葉を思い出す。
『いじめをする奴は、ただの怠け者、いじめに屈する奴は、もっと怠けた奴だ』
これがあったからこそ、私は頑張ろうと思えた。
いじめという行為が怠けている、という事なら、私はその分の努力をする、そして見返してやる
そんな気持ちで、私は必死に努力を続けてきた。
最終的に、うでっぷしだけは、里で一番とまではいかないけど、それなりに強く成れた。
お父さんからも、お祝いの品として、昔使っていた武器を譲ってもらえた。
ただし、本当に必要な時にしか、使ってはいけないと、くぎを打たれてしまった。
それからは、自分で装備を整え、狩人として生活を支えてきた。
そんなある日の事、夜中に、何かが森に落ちるという事件が発生した。
翌朝、その調査を行うべく、私を含めた全ての狩人たちが招集された。
幾つかのチームは、森の調査に入り、残りは里の防衛に入った。
私は調査のメンバーに加えられ、里の外へと出て行った。
そして、この先に起こる私の運命が、まさか今後の人生の全てを決定づけることに成ろうとは、このころの私には思いもしなかった。