青臭台詞
一応ちゃんと終幕に向かっている行事回なのですが。
この行事回、長くダラダラ続いちゃってる感あるので、削除してしまおうかと考えています。
でも完全に抹消する訳にもいかないので、このお楽しみ会回は本編から削除して、番外編みたいな形として、本編以外のところで掲載しようかなと思っています。
(ちゃんとお楽しみ会の話も完結させます。あともう少しなので。)
本編を読んでいる方に、これ以上この回に付き合わせるのがなんだか申し訳ないので、このような処置を取りたく思います。
それに対して、皆様の意見も頂戴出来たらと思います。
気軽に書き込んでくれるとありがたいです。
自分とは違う。すごい。君にはなれない。
一見すればよくある褒め言葉。俺も他人からそういうことを言われれば気分が良くなる。
まあ生まれてこの方そんなことを言われたことがあるような、優れた人間ではないが想像でそう思う。
……けど、なんでだろう。
田島くんにそう言われた時、俺はふつふつ湧き上がった苛立ちを抑えられなかった。
発生理由不明な苛立ちが俺の中を渦巻く。
疑問と苛立ちが俺の中で競合している現状に、自身の事ながら困惑していた。
あーもう! すっげぇモヤモヤするし、すっげぇイライラする!
とにかく胸の中が気持ち悪い。でもそれを発散するわけにはいかない。
今それを田島くんに発散したら、俺はただ理不尽に小学生へ怒りを向けることになる。それは人としてNGだ。
それに、理由もわからず怒ったら、イライラは解消できてもモヤモヤは解消できない。
——しっかしなぁ。どうしてこんなにイライラするかな俺ぇ……。
なんかまるで——。
……まる……で。——……あっ。
頭の中に浮かんだ比喩が、あまりに合致してしまった。
パズルのピースが綺麗にハマったように、欠けていた疑問が解消された。
ああ、そっか。そういうことか。
だから俺、こんなに苛ついてたんだな。
田島くんと出会ってからずっと苛ついていた理由に、ようやく合点がいった。
この俺以外は、絶対にこんな風に苛つかない。
俺だから、こんなに苛ついちまったんだ。
ホント、相性悪いなぁ。俺ら。
腹立たしい巡り会わせに、最早溜め息しか出ない。
しかし、不運、不幸、と決めつけるのもいただけないような巡り会わせでもある。
俺にとっても、彼にとっても、この小さな行事の小さなペア決めでの巡り会わせには意味があるものかもしれない。
「田島さん」
でもこのままじゃ無意味に終わる。
ただ田島くんがこの一時、俺に憧れるだけ。
俺は「尊敬する人」の欄に名前を書いてもらえるほど優れた人間では決してないからな。
一年もすれば田島くんは俺のことを忘れ、俺も彼との思い出など朧気になる。
きっとこの巡り会わせに対して、記憶に留めさせるだけのモノにできるのは——、意味を見出せるのは——、俺だろう。
「ん? な、何かな?」
「少し、しゃがんでもらえますか」
「え? しゃ、しゃがむ? ……な、なんで?」
「まあまあ、騙されたと思って従ってください」
「ダマされるのが普通にイヤなんだけど……。……い、痛いこととかしないよね?」
「…………」
「なんで黙るの!?」
往生際が悪いな……。
俺への憧れが本当にあるなら、少しは従順に従ってみて欲しいものだ。
まったく、めんどくさい。
「あ、ちょ、ちょっと!?」
俺は強引に田島くんの上着の裾を引き、跪かせる。
これではまだ目線が対等になったくらいなので、もう少し高さを調節してもらおうと、彼の肩を押して俺より目線を下にしてもらった。
うん、この高さくらいならちょうどいいかな。
「じゃっ、いきますよぉ」
「な、なにを!? なにがくるの!?」
俺は頭をぐぐぐっと限界まで後ろに反らして、助走距離を作る。
そして——。
「せー……っのッ!」
思いっきり頭を振りかぶり、田島くんの頭向けて振り下ろした。
ゴッ、と額と額がぶつかる鈍い音が脳に直接響き渡る。
その衝撃の直後、俺の頭はジーンと痛む。
「ぎゃッ!?!?」
田島くんの短い悲鳴が聞こえる。
痛みがあるのは田島くんも例外ではない。
心の準備ができていた俺とは違い、ほぼ不意打ちでやってきた鈍痛に、彼は赤くなった額を抑えて若干涙目になる。
「な、な、なんでぶったのぉ!?」
痛みと驚きで感情がごちゃ混ぜになりながらも、田島くんは言葉を投げかけた。
「まあその、……苛ついたんで」
包み隠さず本音で言う。
「ひどすぎるよ!!」
全く以て同感だ。
いや自分でやっといて同感なのはおかしいと思うけど、でもやはり自分も同じ気持ちだ。
だが、どうしても先に手が出てしまった。
一発お見舞いしないと、なんとなく気が晴れなかったから。
——こういうところ見ると、やっぱり俺は姉貴の弟なんだなぁ、とつくづく思う。思いたくないけど。
でもあの理不尽姉貴とは違って、罪悪感や申し訳なさみたいなのはちゃんとある。
本当に悪いと思っている。いやホントマジで申し訳ないと思っている。
「本当に申し訳ないと思っていますよ。——でも謝りたくはありません」
「なんで!?」
「なんか負けた気がするんで」
「一体君は何と戦っているっていうの!?」
「そうですね。強いて言うなら〝自分〟ですかね」
決め顔もドヤ顔もせず、真顔で青臭い決め台詞を、小学六年生相手に暴力を振るう中身が二十八歳のおっさんが言い放つ。
思いっきり事案だ。いや、何なら事件だ。暴力事件だ。
俺の見た目が小学一年生でなければ警察沙汰だ。
「そ、そんなジョーダンが聞きたくて聞いたわけじゃないんだけど」
田島くんは自身の赤くなった額を優しくさすりながら言う。
まあ確かに、冗談に聞こえるよね。
俺もこんな青臭い台詞、冗談以外で言う機会などあるはずないと思っていた。
けど、俺のふざけた様なこの台詞は、少なからず俺の真意を汲んでいた。




