次回行事
水井さんに告白された。
勘違いではなく、まぎれもない事実としてそのような事象が起きた。
成績優秀スポーツ万能であり、才色兼備と言って差し支えない彼女が俺のような冴えない男に好意を持つなんて、それこそフィクションじゃないとあり得ない話だ。
しかし実際告白された。俺の妄想ではなく、現実で。
普通なら喜ぶべきことだ。
いや俺が喜んでないというわけではない。
なんでもできる完璧超人みたいな水井さんに好意を持たれることはこの上なく光栄なことだし、嬉しくもある。それにこれは水井さんに限ったことではないが、誰かに好意を持たれるというのはすべからく喜ばしいことだ。
実際告白を受けた時、俺の心の中には少なからずそのような感情があった。
だがしかし、だ。
告白を受けたことよりも、俺が受けた告白を喜んでいるか否かよりも、問題にするべきことがある。
それは、水井ヒメの本性だ。
いや、本性というといささか語弊がある。
意外な一面、と言うのが適切であろう。そんな可愛いらしいものではないかもしれないが、だがまあこの表現が一番しっくりくる。
完全無欠のような水井さんからは到底考えられないようなその一面は、意外の一言に尽きる。
勿体ぶらずにそのことを告げるならば、——水井さんは電波少女だ。
妄言妄動妄想の三拍子が揃った電波少女である。
水井さんの好意に薄々勘づいていた俺でも、流石にそのことを言い当てられるほど鋭くはない。正直どうあってもそのことを言い当てられる自信はない。
水井さん曰く、俺は王子様で彼女がお姫様であり、俺たち二人は結ばれる運命にあるとか何とか。
王子とか姫とかそんな現代では空想でしか存在しなさそうな者を出されても、俺は困惑するしかない。
そんなドラ●エみたいに突然勇者に選ばれる、みたいなことにはならない。
第一、民主制のここ日本で王子がいるはずないのだ。もちろん姫も。
彼女の発言が全くの事実無根であるということは保証できるが、保証できたとしてもの意味もない。
問題は彼女がそのことを信じて疑わないということだ。
俺が王子で、水井さんが姫であり、将来的に結ばれると彼女は当然のことと認識してしまっているのだ。
いやまあ、だからと言って俺と水井さんの関係が変わったということはない。現状は。
彼女に告白され半強制的に「好きだ」と言ってしまったが、だからと言って恋人同士になるわけではなかった。
まあまだ小学一年生だし好き同士だからといってカレシカノジョの関係になるわけでもないのだろう。と、思ったのだがそういうわけでもなく。
水井さんの、正確には水井さんと俺の人生設計上、小学生の内での交際は時期尚早とのことだ。
友達以上恋人未満という関係も味わってみたい、というのが彼女の意見だそうだ。正直俺にはよくわからない。
——水井さんが電波少女であると知り、俺が彼女と距離を置いて関係が変わるということもない。
彼女が電波的発言や行動をすると知ったことについて、確かに驚きはしたがそれは俺と彼女の関係を揺るがすほどの衝撃ではなかった。
俺にとって水井さんは大切な友達だ。水井さんが電波だろうが何だろうが避けたりするようなことはしない。多少彼女を見る目が変わったかもしれないが……。
兎にも角にも、俺と水井さんの関係は何ら変わらなかった。そのことに間違いはない。将来的なことを考えれば違うのかもしれないが、あくまでこれは現状での話だ。
進展もなければ後退もない。
俺と水井さんの関係は幸か不幸か一切の変化なく、遠足が終了した。
そうして、それから一週間ほどが過ぎたある日のホームルーム。
小学一年生という学校行事で盛りだくさんの時期には、間髪入れず立て続けに行事がとり行われる。
遠足の余韻がまだ残っているであろうこの時期に、次の学校行事の知らせが舞い込んでくるのだ。
「来週からは全学年合同でのお楽しみ会があります」
教卓に立った実里先生が明るいトーンでそう告げる。
また新たな学校行事が始まろうとしている。




