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遠足日和

今日は俺がタイムリープして以来初めての学校行事。

遠足。


学校から少し遠くにある野外広場に足で向かう。

文字通りの遠足。誰もが想像できるような、そして誰もが胸躍らせる遠足。

前日に300円以内でお菓子を買ったり、しおりを見て持ち物確認をしたり、明日が楽しみで眠れなかったりと、そうしてようやく迎えた今日という日。

俺もクラスの児童の例に漏れず、この学校行事を楽しみにしていた児童の1人である。


そして現在、我々1年3組一同は野外広場へ向かって歩いていた。

全員が学校指定の体操服を纏い紅白帽を被り、男女別れて出席番号順に隊列を乱さずに歩いていた。

「なぁなぁカケル。おかし何買った?」

 そんな中隊列を乱す人間が一人。

 前回同様ご登場いただいた砂川林太くんである。

 本来列の中心辺りにいなくてはならないはずの彼は、俺と話したいがために前列まで遥々やってきたのだ。

 このことが先頭にいる先生にバレたら怒られるぞ、前回同様。

 前回……、思い出したくもない話だ。

 若干のトラウマを植え付けられた俺は記憶に蓋をした。


「ダメだよ、林太くん。ちゃんと列にもどらないと」

 出席番号三番の俺の真後ろを歩く出席番号四番の今井君が先生に変わって林太を注意する。

 そうだそうだ! 言ってやれ今井君。

 前回あれほどこっぴどく叱られたというのに、全く懲りていない林太に言ってやれ。

 あの日学校に侵入したせいでトラウマは植え付けられるし、先生に怒られるし、結局夜中に出かけたことがバレて母さんにも怒られるしで、散々な始末だった俺は少しだけ性格の悪い野次の中で飛ばす。

 口に出しては言えない。小心者だから。


「そうケチケチいうなよ。友達と話しながら歩いたほうが楽しいだろ?」

 ここで林太による悪魔の囁き。

 しかし生真面目そうな今井君なら惑わされることはないだろう。

「……たしかに、そうだな」

 そんなことなかった……。

 所詮は小学一年生、ツッコミどころ満載の発言にすら簡単に論破されてしまう。


「それで、なに買ったんだ?」 

林太は何故か俺のお菓子の中身に執着して、しつこく聞いていくる。

「別に普通だよ。ポテチとかテキトーに好きなの買っただけ」

隠す必要も無いので、早々に打ち明ける。

他人に話せるほど面白い買い方をしていないけど……。

俺が質素に中身を紹介すると、林太は自慢したげに鼻を鳴らす。

自慢の前段階として俺にそのようなことを聞いたのか。


「オレはなぁ、……じゃぁ〜ん!」

林太は自慢げにお菓子が入っている鞄の中身を見せびらかす。

そこには、鞄いっぱいに入った300円分のチョコレート。

何故チョコレートオンリーなのかと疑問を抱かずにはいられない。

それよりも9月といえどまだ暑さの厳しいこの時期に鞄いっぱいのチョコレートという愚かとしか言いようのない組み合わせにあきれ果てる。

もうオチが見えるわぁー。


「とくべつにあとでコーカンしてやってもいいぞ」

「あ、ああ、うん」

視線を逸らしながら、その厚意を受け取っておく。

――まあ、野外広場に着くまでにそれが原型を保てたらの話だが……。


「私も交換したいな」

「わっ!?」

「み、水井さん!?」

唐突にひょっこりと現れた水井さんに今井君含めた3人が驚く。

またしても隊列を乱す者が現れた。

まあ小学一年生の秩序なんてこんなもんだよね。

もはや諦めることにした。


「水井はどうしてここに?」

「それはもちろん……ふふふっ」

今井君の問いに対して彼女は俺の方を見て微笑む。

どんな意味合いが含まれた微笑みなのかは、なんとなくはわかるけども。

「もしかしてミズイもオレの買ったチョコ欲しいとか――」

「違うよ」

まさかの即答。

プロボクサーの右ストレート並に素早く強烈な否定に林太は見事に一撃KO。

「ガァーン!!」という効果音が背景に文字となって大々的に映し出されそうなほど彼は露骨に凹んでいる。

いつも通りの笑みがこれほどに冷酷に見えたことは無い。


「翔くんとお菓子交換したいと思って来たの。ほらっ、翔くんが好きそうなお菓子買ってきたよ」

「遠足なんだからそこは自分が好きなお菓子を買うべきでしょ」

っていうか本当に俺も好きなお菓子ばかり入っているし。一体どこから情報収集したんだ?(水井は翔母と内通しているため、基本はそこが情報源)


「お菓子交換は嫌?」

「いや……、別に嫌ってわけじゃ……」

上目遣いの問いに思わずたじろいでしまう。

――俺だって友達とお菓子交換をするのはやぶさかではない。

遠足の醍醐味の1つとも言えるお菓子交換で交流を深めたいとは思っているが、特定の一人と交換するより出来るだけ多くの人間と交換したいし、それに……今はお菓子の交換時間じゃない。野外広場までの移動時間だ。


「それならお菓子以外の物でもいいよ」

「それ以外ならいいってわけじゃ――……お菓子以外? 他に交換できるものなんてあったか?」

「うんっ、指輪とか」

「待て、一体この遠足先で何をする気なんだ?」

挙式か? 式でも挙げる気なのか?

それは俺が許しても法が許さないぞ。

というか水井さんの言う指輪は絶対遠足に持っていけるお菓子の上限金額を超えている。30万は必要だぞ。小学一年生の俺では何をしたってそんな額を稼げるわけが無い。


「ゆびわ?」

「どういういみだ?」

幸い初な小学一年生も今井君と林太には指輪の意味を悟られてはいないようだ。

これは知らない方がいい。特に林太は。


「じゃあ指輪じゃなくて苗字でもいいよ」

「それは交換と言うよりはお揃いだろ。どっちもしないからね」

ダメなものはダメだ。

だから水井さん。いくらそんな可愛いむくれ顔をしてもダメだ。


「こらっ、そこの子達。列を乱しちゃダメよ」

わちゃわちゃ騒いでいたのがバレ、先頭にいた実里先生に怒られてしまう。

遠足始まってから10分ほどで先生からの叱責を受ける。

――なんか、幸先不安な始まりだなぁ。


もしかしたら毎日投稿が途切れることがあるかもしれません。

その時は「あ、今日はあの野郎続き書けなかったんだな」と温かい目で見守ってくれると有難いです。

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新有り難う御座います。 7歳にして母と彼女が共同戦線で外堀が埋まる翔くん、運命だと諦めて18歳で成人したら入籍ですね。10年間はラブラブのバカップルで過ごすしかありません。
[良い点] 変にチートに走らない良作かと感じております。 [気になる点] 堅実に生きるというかヤンデレと生きるというかw [一言] かなり期待しております。
[一言] 無理に毎日投稿にこだわらなくても・・・。 心身の健康にご留意ください。
2021/09/21 09:36 退会済み
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