始まり
私は椎菜。顔面普通、スタイル普通、運動神経悪め、この学校では成績も普通。滑り止めである高校に入ってそろそろ半年が経つ。
こんな普通な私でも、人の心が分かれば、愛想はずば抜ける。入学から人気急上昇の私が常に思っている事は
あぁ、人間って疲れる
好意、尊敬、羨み、妬み、悪意、そして好奇心......
まだ何も話していないのに勝手にいろいろ探ろうとする。なんとも思ってないくせに心配してるふりをする。他人のためだと言いながら、褒めて貰いたいだけで手助けする。
世の中なんてこんなもんだ、クソ。
「ねーねー、部活行くでしょ?私の鞄も持って先行ってくんない?飲み物買ってから行くから。」
「......はいはい。んじゃコーラもよろしく〜」
小学時代、転校ばかりしていたせいか、私は他人からの視線を誰よりも気にしていた。そして、向けられた感情をほぼ正確に読み取れるようになってしまった。
結果、空気を読むことに特化し、みんなからは超絶性格いい子扱い。高校に入るや否やモテ期も到来し、まさに人生の絶頂!!!
だが残念ながら中身はそんなことで喜ぶようなピュアな女子高生ではなく、15歳にして人間関係の不確かさを何度も体験してきたひねくれ者だ。
馬鹿みたいに空気読んで、自分を作り上げて、人から一歩引いたところにいるように努めた。どうせ離れるなら最初から近づかなきゃいい........
なーんてどうでもいいことを考えていたら、サラサラのロングヘアーを耳にかけながら、1人の子が私の顔を覗き込んできた。
「ねぇ聞いてる?後でお金返してよね?」
「当たり前じゃん。」
鞄を託してきた彼女は花。出席番号順で私と席が前後だったため、よく話すようになった。運動神経がよく、とてもかわいい、そしてモテる。部活は違うが、更衣室は同じで、今日は私に鞄を託してきたようだ。
花はわがままで少しぶりっ子が入っているが、周りと比べて冷めている。一緒にいて気は使わないが、深入りもしない。今は彼女の隣が一番安心できる居場所だ。