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幼少期 獅子の牙 6

ライオネルは街道を歩きながら考えた。


シンが特別なのかはわからないが、少なくとも同じぐらいの連中が領都の学院に入っている。それが皇王や辺境伯の差し金なのは間違いない。


ゴレ、いやゴールドーは「現状を変えたいと皇王や辺境伯は思っている。」と言っていた。

だが、最終の着地点は何なのだろうか。


騎士団や宮廷魔術師の解体なのか、それとも傭兵団を解体するのだろうか?

もしくは、傭兵団と騎士団や傭兵団と宮廷魔術師を組ませて新たな戦力とするのだろうか?

この皇国も戦乱の世にあるのだ。今は周りの国々とは戦争にはなっていないが、一度何か問題が起きればすぐにでも周囲の国々と緊張状態に陥るはず。

その時のための戦力と考えているのか?

それにしては、人数が少なすぎる。


もしや、他の領地でも同じような連中が騎士団や宮廷魔術師になっているのか?


だが、そうだとしたら、どうしてそんな回りくどいことをするのだ?

皇王が一声いえば、解体だろうが再編成だろうができるはずなのだ。

それをどうしてしない?





材料が少なすぎる。




今朝方はゴールドーにこれ以上言うなと言ったが、気になるものは気になる。

だが、あの場でこれ以上の情報をもらったとしたら、何を要求されるかわかったもんじゃない。商人というのが自分から先に商品を出してくる時はたいてい碌なことがない。


けつの毛まで抜かれたらたまったもんじゃない。


俺たちに話したということは依頼したい仕事があるか、何かしら手伝えということなのだろう。


どこまでを対価としていくらかかるのか、金子ならわかりやすいが、今回のように『貸し・借り』の状態になるとどうやって返すのかは先に仕掛けたほうの言い分になってしまう。

だからこそ、情報のさわりだけで聞くのをやめたのだ。


なんにせよ、領都で裏を取らなきゃな。


ふと、馬車の幌を見やる。


シンがどんな奴だろうと今回の護衛対象だ。

領都まで送り届けて終了だが、ライオネルはカートの秘密を探る以上は何かしらのつながりは必要だと感じていた。

12歳の子供に何を期待しているのかわからないが、ライオネルの勘はつながっておくべきだと告げていた。

『獅子の牙』がここまで大きくなれたのはライオネルの勘によるところが大きい。

傭兵団なのだから戦場に駆り出されることもあるし、討伐などを依頼されることもある。

そんな依頼の中でも大きなものは受けるか受けないか決めるのはライオネルだ。

下手を打てば傭兵団の戦力や勢力はすぐに縮小する。

現に、新進気鋭の傭兵団が一つの失敗から内部崩壊に陥ったり、多数の死傷者を出して存続できなくなったりしているのだ。


『獅子の牙』を今以上にしていくためにも、名声を得るにも、今の三大傭兵団という立場からそろそろ抜け出さなければならない。


街道を歩きながら、取り留めのないことを考えていた。


ふと前を見ると、領都の城壁が見え隠れしている。


ま、シンも田舎から出てきた世間知らずなガキだと思わなければやってられないわな。

そう思うと、馬車に向かって「・・・領都が見えたぞ。」と声をかけた。



シンは馬車の幌から体を乗り出し、領都を見て

「おおおおおおおおお!!!」

と感動している。その様子をみて、他の3人も笑っている。


シンも田舎者丸出しだったと思い、バツが悪そうにうつむいた。


「今まで村にいたんだ、いきなり町をすっ飛ばして領都のでかさを見りゃ、そりゃ興奮するだろ。」

そう言って、シンの頭をガシガシと撫でた。


「夕方までに城門に着かなきゃ、中に入れてくれねぇからな。まぁ、この調子でいけば、日が暮れる前には中に入れるだろう。」


そう言ってゴレとムタに目配せをして、少しだけ馬車の速度を速めた。


シンがどうなっていくのかを見るのも面白いか。


馬車から降り、たったったっと馬車の前まで走っていくシンを見ながら、ライオネルはもしかするとこの出会いが傭兵団『獅子の牙』の行方を決めるのではないかという思いを抱いていた。




これにて 幼少期 獅子の牙 終了です。

次回から領都ケーグルでの学院生活に入っていきます。


お読みいただきありがとうございます。

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