赴任地へ
フィクションです。導入。尻切れ感あり。適時修正検討中。
謎の女の子と出会って間もなくして、俺はサヴァイバーの能力に目覚めた。理由はよく分からない。能力が目覚めた直後は、誰もその事実を誰も信じてはくれなかった。その為、俺は、あの時彼女に促されたように、サヴァイバーに関する知識の勉強を始めたのだった。勉強嫌いの俺だったが、不思議とこのことに関しては、自分の身に関わる事もあってか知識を吸収するスピードも凄まじかった。
そして10年の年月が流れた。俺は国が運営する、SS級サヴァイバー能力者育成機関である「ユニオン」に能力者育成のために教導官として抜擢される。元々しがない非正規社員でしかなかった俺が、なぜそんなモノになれたのか?サヴァイバー能力のお陰?半分正解で半分不正解である。サヴァイバー能力は無論必要不可欠だったが、背景には世界全体の激動状況が大きく影響していたといっても過言ではない。サヴァイバー能力発見以前から、経済、人権、秩序といったあらゆる概念が格差へと繋がり、世界では揺るぎつつあった(まぁ人類史なんてずっとそうだが)。そうした中でサヴァイバー能力の台頭は新たな格差を生み出した。過去の創作でいう魔術や超能力にも等しいこの力の定義は、既存宗教の定義では当て嵌める事すら難しく、多くの宗教の根幹を破壊した。そして大半の既存宗教組織の崩壊、もしくは壊滅へと導いたのだ。ここだけ書けば評価するべき者も出るかもしれないが、実際の所は、旧世代の思想体系の崩壊をもたらしただけに過ぎず、同時に新しい思想体系の発生をゆるしてしまうこととなったのである。
「エンジェル」と呼ばれる女性を教祖とし、サヴァイバー能力者を「神の力を盗みし忌み子」として地球上の能力者全てを抹殺せんとする宗教団体「アースピース」が、サヴァイバー能力者の活躍とほぼ時を同じくして台頭する。元々は地味なカルトブログでの個人活動に過ぎなかったそれは、少しずつSNSの海へと広がり波及。あらゆる問題によって人生を打ち破られながらも、サヴァイバーの定義によって目的を失っていた者たちへの一つの受け皿へと変貌を遂げたのである。加えて大国同士の貿易摩擦とそこから波及して起こった経済不況、異常ともいえる自然災害の多発がその急進的かつ、平時であれば受け入れるハズの無い過激思想を世界全体に受け入れさせてしまったのである。その結果サヴァイバー能力者やその能力の研究を行う企業、出資者、果ては何ら関係ないが富裕層を中心に狙ったテロが以前以上に多発したのである。
そして皮肉にもそのテロが一番最初に行われたのが、俺たちの暮らす平和とされていた国、大ニッポンだったのだ。エンジェルはトウキョーに住んでいるとされ「アースピース」の急進派たちは瞬く間にトウキョーを聖地であると定めた。同時にトウキョーには当時、サヴァイバー研究の機関や、企業がひしめき合っていた。彼らは「聖地奪還」を名目に都内の関連施設や、そこに通じる公共機関などに無差別テロを敢行したのである。トウキョーは瞬く間に戦場と化した。程なくして多くの国々で同様のテロが多発。世界は新たな社会不安へと陥ったのだ。トウキョー大事変と呼ばれる一連の出来事をキッカケに、政府は首都を暫定的にナゴヤに変更。トウキョーそのものを完全に放置するという判断を下す。前代未聞の大混乱が生じたが、アースピースの急進派を含めた勢力は、政府や当時の自衛隊の一部、更には味方であるはずの在日米軍などにも波及しており、時同じくして混乱に生じたクーデターが多発。反乱軍としてアースピースの活動に加担したのである。こうして二ホン政府(寝返らなかった自衛隊及び、米軍主体の国連勢力)とクーデター勢力を含めたアースピースの勢力との内戦が国内で現在も尚続いているのである。俺はこの時、政府側につき、一定の戦果を挙げると共に、能力者として認められたのだ。同時に20代以降で能力に目覚めたイレギュラーとして要研究対象にしてトップシークエンスとして扱われたのである。立場は一気に一変したといってもいい。
アースピースとの戦闘は常に劣勢だった。というのもそもそも能力者自体が、全人口の2割程度にしか発現しないとされていてその発現可能な未成年までの間に限られるという理不尽な条件があった。さらに言ってしまえば能力者は絶対少数であり、非能力者の方が圧倒的に世界では多いのである。その為、アースピース及びそれに準じた思想に興じる人間と、サヴァイバーへの味方勢力との戦力差は7対3とされていた程。サヴァイバー能力者に味方している政府や企業といった組織もその力の能力の生み出す営利的要素に肩入れしているだけに過ぎず、個人として能力者に肩入れしている存在がどれだけいるかは中々難しいものだった。状況によって味方とされた存在すら幾らでも敵になり得たのである。これまでであればこうした多数派と少数派の争いは人類史においては常に少数派を限りなく全滅に近い形で潰す形で進んできた。しかし少数派が多数派より圧倒的な力を有しているという点で、この問題はこれまでの事象とは訳が違ったのである。多数派の絶対的弾圧が通り一辺倒に通じないのだ。
そんな状況の中、俺は今日ユニオンへと着任する。施設は山奥且つ、フェンスと堀に囲われている。聞くところによれば防壁も展開できるらしい。中で暮らす者たちは施設でのカリキュラムを完全に終了するまで外に出る事すら許されない。これは能力者の保護という部分が大きいそうだが、大いなる力を手に入れて、結局自由を奪われるという点は最高に皮肉だと俺は思った・・・。
傲慢と多数派と少数派、格差というのを幼稚な文章と思考で考えていきたい。作中テーマとしては「輪廻にも等しい人間同士の争い」である。適時修正しつつ、改善できる点は改善したい所。