悩む男
その男は悩んでいた。
自分がなぜこんなにも「不幸」なのかと。
その男は来る日も来る日も悩んでいた。
朝起きても、通勤時も食事をしてても、自分はなぜこんなにも「不幸」なのかと悩んでいた。
ある時、学生時代の友人に飲みの席に誘われた。
学生時代の友人たちの中に、親が死んだため、家族を養うために大学を中退した友人がいた。男は酒に酔った勢いで聞いた。
「君も「なぜ自分はこんなにも不幸なのか」と悩んでいるだろう?
友人は答えた。
「生きるのに必死であまり考えたことはないよ」
その時、男は初めて気がついた。
悩んでいられる幸せに。
仕事があり、食事をし、たまに酒を飲み、生活しながらも「悩んでいられる」幸せに。
それを「幸せ」と呼ぶことに。
類似作品があれば教えてください。