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少女とトンネルと木材

作者: メルト

山に木が生えていた。木は細く小さい若木だった。木の生えてる近くに人かやってきて山に穴をあけていった。木は沈黙してその様子を見た。



山トンネルができた。近くには少し成長した若木があった。木の近くに道ができて人が来るようになった。少女はトンネルを抜けて自分の背丈ほどの若木を見ていた。



少女は小学校に入学した。トンネルを歩いて登校していた。木の近くを歩きながら雨の日も雪の日も少女は学校に通った。若木はそんな姿を静かに眺めていた。



少女は中学校に入学した。トンネルを自転車で抜けるようになった。少女は今までの半分近い時間でトンネルを通るようになった。どんな天気でも若木は少女を見守った。



少女は高校生になった。トンネルを他の男子と通うこともあった。夜明け近くにトンネルを通り夜遅く帰ってくることもあった。されども若木は少女を見ていた。



少女が来ない。



木は悲しんだ。いくら待ってもトンネルから少女は出てこなかった。ひたすらにわ木は待った。近くの他の木が枯れていったりもした。わか木は少女を見るために意地でも枯れようとしなかった。



木が少女の顔を忘れかけた時少女によく顔の似た女がトンネルを通った。いつかの少女と同じように。五年近く見ないうちに若木も少女も成長していた。



少女は女性と呼ばれる見た目になったし若木も若いという字をとってもよいほど成長した。近かった身長は木が圧倒的に抜かした。



女性は美しくなり、男とトンネルを通るようになった。1年近く経つといつの間にか子供を抱いて家族三人でトンネルを抜けるようになった。



女性に三人目の子供が産まれた時ごろから風が慌ただしくなってきた。冬に近づくにつれ空には飛行機が飛びトンネルの向こうのさらに向こう側へ飛んでいった。



女性が泣いていた。一人きりで。手には男からの指輪を握って。もう二度と帰ってくることはないらしい。トンネルを冷たい風が通り抜ける。木は小さく泣く女性の近くにただいることしか出来なかった。



女性は美しくどこか儚く子供を養うためにトンネルを抜けて働きに出掛けた。三十年近く女性を見てきた木は知っていた。彼女は追い詰められていることを。毎夜一人トンネルをとおっては木の近くで泣いてることを。



ある日、木は空が静かなことに気づいた。トンネルも静かに佇んでいた。近くを通る人もいなかった。風が止んだ。



女性がトンネルを抜けて自分の近くによってきた。今日は涙を堪えている。戦争は終わったらしい。彼女は首から指輪を下げて一言、感謝を木に伝えていった。



それからの毎日もまた彼女はトンネルを通って街に働きに出掛けた。更に四十年近くたつとついに彼女はトンネルの向こうからやってくる回数が減った。



女性は年老いて老婆になってしまった。木もまた年を取り老木になっていた。ある日トンネルの向こうから老婆の孫たちがやって来た。どうやら自分の死期も近いらしい。



老木は少し心残りがあった。老婆を見守ることができなくなることだ。いよいよトンネルの向こうから大きなトラックがやってきて木を切り老婆の近くのトンネルの向こうに連れていった。



老木は不思議な感覚に陥っていた。いままでトンネルの近くから動けずに様々な物を見つめていたがトンネルの向こうは知らない世界だった。短く長いトンネルを抜けるとなぜか懐かしい気がした。老婆の存在を近くに感じたからか気のせいかは老木にはわからなかった。



老木はたくさんの角材に加工された。一部は薪にもされるらしい。トンネルを望むことはもうないだろう。老婆は

どうしているのだろうか、自分のいた近くを今もたまに散歩しているのか、と。



数ヶ月たち老木は安楽椅子と棺桶に加工された。トンネルの向こうに戻れないが老木は幸せだった。老婆をまだ近くで見守ることができるからだ。



更に安楽椅子として数年ついにその時が来た。老婆は一足先に息を引き取った。棺桶に眠る老婆は数十年来の友と過ごしているかのように穏やかな顔をしていた。棺桶の中には指輪も入れられ他にも老婆所縁の品が入れられた。トンネルの向こうへ棺桶は持っていかれた。自分のいた場所の近くには新しい若木が生えていた。



小高い丘の上で老婆の葬儀と死体の焼却は行われた。トンネルの向こうの町の人はほぼ全員参加するほどに盛大な葬儀となった。この葬儀のすべてを老婆が望んだように準備されて催されているらしい。ついに棺桶に火がつけられた。薪と棺桶では足りないので他にも安楽椅子をばらしたものを燃やした。最初は穏やかに途中で激しく炎は赤々と燃えた。また少し経ってから落ち着いてきた。老婆の一生涯を讃えるように薪はパチパチとはぜた。



木はとても幸せだった。一人の人間を見守り続けることができたからか、老婆を一人だけで逝かせないことができたからかわからなかったがどちらも事実だと思った。



人は死ぬとき天に昇るというが他の生物も同じである。元若木は元少女を包んで天に昇った。途中トンネルを見下ろした。

初投稿で至らぬ所やおかしな点があるかもしれませんが優しい目で見守って下さい。感想、意見などなにかあればいつでもお願いします。


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