永久落葉―トコシエラクヨウ―
××は、モミジが散ったらいなくなるんだって。
いなくなる、って言うのがどういう意味か、中学一年の××には理解できていた。親と医者は酷な宣告を優しく、遠回しに言ってくれただけなのだ。
モミジが散ってしまったら、××は雪は見えない。もう一度見たかったなぁ、なんて呟いたりしたけど、そんなんで雪が降るわけないよね。
「じゃあさ、俺が雪を降らそうか?」
君は、そんなことを簡単に言った。
雪なんて簡単に降らせれないんだよ、って言ったら……
「やってみなきゃわかんないだろ?」
とっても、君らしい返答だったよ。
××は、クスクス笑ってしまって、君を余計怒らせてしまったけれど、嬉しかった。雪を見せてくれる、そう言ってくれた事が何より嬉しかった。
「楽しみにしてるよ」
見ることは出来ないと知りつつ、君のために嘘をつく。
君に、嘘をつくのはいつものことだから。
「任せとけ!!」
自信満々に言う君。
でも、もうお家に帰らなきゃいけない時間だよ?
「もうこんな時間かぁ…。帰りたくないなぁ〜」
心底嫌そうに、君は言う。
でも帰らないと、明日から会えなくなるかも知れないよ? って言うと
「それは嫌だなぁ。明日も遊びたいし」
素直な君は嫌いじゃない、笑いながら君が消えた扉に投げかける。
また、明日遊ぼう。××が生きてたら。
「じゃあ、また明日な!」
また明日、それが毎日聞けたらいいのに。モミジなんて、ずっと散らなければいいのに。
君と、さよならなんてしたくない。
この病室から出れなくても一向にかまわない。でも、さよならだけはイヤだ。
「やぁ、死に半歩近づいた、深く濃い、強い欲望を持った子。私なら、君の願いを叶えてあげられる」
君が去ってしまった静かな病室に、誰かわからない女の人の声が響いた。
おかあさんよりずっと若いし、いつも来てくれる看護婦さんの声よりは低い。
「そこまで警戒しなくてもいいよ」
警戒するな、と言われても無自覚にしてしまうだろう。
何せ今は看護婦さんは来ない時間だし、知らない人についていってはいけないと教わっている。
「私が君に出来ることは、1つだけ」
シャッ、と病室のカーテンを開け、そこから見える赤く赤く紅葉したモミジを見る。
モミジはまだあまり散っていない。
それを確認するかのようにまじまじと見た女の人は
「君の願いを叶えることだけ」
××の…願い?
叶えて、くれるの…?
「勿論だとも。その為に、私は君の元に現れた」
でも…本当に叶うの?
代金として、魂とか大事なものを取られちゃったり…
「代償なんて必用ない。ただ――――――に気をつけて」
口は動いているのに、声は聞こえない。
腹話術? と思ったが、どうやら違うようだ。
「時間か…。さぁ、君の願いは?」
「じゃあ、――――――」
深く考えず、目の前に釣られたエサに食いついた。
どうせ、モミジが散ったらいなくなる身だ。何が怒っても怖くないさ。
「確と聞いたぞ――――――」
さぁ、何をしようか?