第一話
西暦2040年ラオス 自衛隊基地
熱帯独特の暑さが肌に感じる。熱風というほかない扇風機の風が兵舎に吹きわたり空は澄み切った青色だが、人工生物兵器が空を飛び基地からの着陸許可を伺っているようだ。ベットで寝ながら見るラオスの景色は今のところ自衛隊基地なのでテントしか見えない。ごもっとも外に何かあるかと言ったらジャングルだが。
「三浦真樹一士おきろ!」
巨大な声に驚き声のするほうを見る。そこには背が高くスキンヘッドで顔は目がとても優しそうな整った顔をしてる戦闘服を着た青年がいた。
「おい、休憩はもう終わってるはずだが?」
あわててベットからはね起き気をつけの姿勢をする。
「すいません!すぐ行きます雁也{かりや}二等陸佐!」
「もういい、活動は終わったからな。」
その言葉を聞いて瞬間冷や汗が止まらない。小隊の同僚になんと言ったらいいんだろう、飯ぶんどられるかもしれん。想像の連鎖は止まらずひたすら不安になる。
そんな中雁也二佐は悟ったようにため息をつき目頭を指で押していた。
「隊員には、発熱と言ってやるから安心しろ」
ぱぁぁと希望がわいた効果音がした瞬間。二佐はニヤッと笑い。
「ただし、貴様は[白虎]の着陸のために手旗信号をしろ尚、拒否権はないぞ」
最悪だ、だが断ったら三日間は飯にありつけず、仲間からは軽蔑の目で見られるだろう。ここまで来るとそもそも何で自衛隊に居るんだと後悔にする。入隊の原因はさかのぼること大学生の時だ。当時の自分はおたくな中二病と言う最強の組み合わせを持つ学生だった。友人達らしきものはいた・・・はずだ、うん。そうに違いない。そんな自分はある日の食事中で母に
「ねえ真樹、就職は考えてる?」
と言われ。
「ふ、何も心配することはない俺は奴を殺すまでは死なない、その証拠に個々に刻印がある」
そうして出した腕には明らかに油性マジックで書いた魔法陣らしきものがある。
「またそんなこと言って、じゃあいつになったら{奴}は来るの?」
「近くではないが遠くもないその時はこの世界という壇上で血に染まった宴がはじまる。それこそが魔王サティウスと我の血で塗られた戦いが始まるのだよ母よ。」
「あら、近くじゃないならよかった。」
と母は言い自分の方になにやら書いてあるパット型の携帯端末を渡された。それには「自衛官募集!」の文字があり
「奴が来る前に国家権力を駆使してしっかりと体力、精神力、戦闘能力をつけて迎え撃ってやろー!」
片腕を上にあげて母は「おー!」と続けて言う。俺はそれに対し
「いやいや、聞いてた?聖龍騎士の力を持ってる時点で戦う用意は出来ている、それに数々の仲間達の死と困難を乗り越えて手に入れた経験と報酬には余りにも満足いくものではないが手に入れた聖剣がここにある」
そういうとベルトに修めておいた聖剣を抜く、その剣はどこからどう見ても模擬刀であったが当時の俺には光のような眩しいオーラを放つのが脳内で確認出来た。
「それを持ってるとしても体力は必要よ、それにその・・・おなか何とかした方が」
母はそういうと自分の腹を見てくる。言うまでもないが腹筋、背筋共に鍛えたことなどない俺の腹は見事に堕落していた。
「いくら剣を握れたってこれじゃあ走ったりは出来ないと思うの、だ・か・ら、短期間でびしばし訓練してくれる自衛隊に入隊するべきだと思うわ」
「いや母よだから・・・」
そこまで言おうとしたところで母の表情が変わる。
あれは間違いない、顔に入隊しろと書いてある。
「真樹、今の自衛隊はなにしてる?」
母の腹黒な顔はまさに魔王サティウスそのものだった。妄想ではなかろうかと思うほどた。
「・・・PKO活動ッス」
「そうね、今年どれくらい派遣された?」
「・・過去最大の三万デス」
「そうよね、最近人工生物が兵器化して世界に進出したわよね?それでも三万よ?ゲリラに生物兵器わたるかもしれないのによ?魔王攻略より短期間で出来て人の役に立つのよ?いいと思わない?」
母は追いこみ漁をする漁師の如く荒波を裂いていった。
「・・・いやでも魔王倒さないと世界が・・」
「世界なんてそれこそ国連軍に任せればいいのよ。それよりも飢えてる民や困ってる人を助けないでどうするの?聖龍騎士」
あ、詰んだわ。俺はそう思った。
「あとお母さん思うに生物兵器は何とかした方が良いと思うの、そこで聖龍騎士の出番ってわけ。」
母がさっきから言ってる生物兵器とはクローン兵器のことだ。最近の急激な科学技術発達で代理母無しで生産可能になり。今や、家庭の台所に一体はいる存在となった。だが我が家では「私の料理・家事こそ天下一」と母が言い。一体もない。それが近年兵器化し世界が量産開始。クローン兵は皆女性型で、何でもGに耐えやすいからだそうだ。
「お母さん、外国のドキュメンタリーで見たんだけど余り良い物じゃないわ、だから潰さないと」
理不尽な発言に聞こえるかもしれないが俺もテレビで見たが何でも指揮官の言うとおりに動くと説明され、無表情でやってのけるあの顔を見ればそうおもってもしかたない。
「と、いうわけで志願書もかいといたから、いってらっしゃーい!」
「へ?ちょ、さいご強引な気が」
「若さとはそんな物よ!がんばれ!!」
そんなことがあり届け出を出したのに行かない訳にもいかず教育部隊でたたかれ見事駐屯地に配属される、そこまでは良かった。正直自衛隊には興味あったし堕落した体は見事鍛え上げられおまけに建設隊なので普通科よりも楽だった。
だがある日、建設隊は普通科の雁也二佐に「PKO活動に参加する事が決まった」と言われる。そこまでも良かったなぜなら建設隊だから建ててりゃ良いと思ったからだ。だが現地のラオスの武装組織の反政府運動はとても過激な物でPKO活動に来た自衛隊を良いものと思わず。元々は町にあった基地は攻撃され半壊し自衛隊の基地施設は急遽、ラオスの密林の陸軍基地になった。何故日本政府は撤退させ得ないかというとなかなかラオス政府から許可が下りず関係悪化を避けるため先延ばしとなり今に至るわけだ。
「しかし、よりによって「白虎」か」
白虎は日本が開発したクローン兵器で、今月反政府組織への威嚇として投入された。どんな物か見たことないのだが見た隊員からは、「死神」としかいわれずとても見たくない。
「じゃあ、もうすぐ来るからヘリポートでやってくれ」薄情者!と言いたかったが相手は上官。何ともいえない感情を抑えヘリポートへ向かった。
夕方になって空は紅くなり暑さは引かないが夜へのの静けさと太陽からの解放で体中が歓喜を上げていた。自分はべた付く戦闘服と蒸れたヘルメットをはずし、兵舎に戻りたい気分だったがそれが出来ない事にひたすら自分に腹が立つ、だがそれとはまたべつで心細くもなった、何せ自衛隊基地と言ってもジャングルのなかにあるので何かにおそわれそうだ。それに現実からしてもおそわれるケースはいくらでもある。特に有力なのはゲリラからの攻撃だ。実はこのジャングルの陸軍基地は元はゲリラへの牽制として建てられた物でゲリラはまだ居るのだ。それも外国勢力をよくおもっていないそうで時々、密林に行って侵攻中のゲリラに会うことがあるので鎮圧作戦が進行中だ。何故そんなこと自衛隊がやるのか疑問に思う人も居るだろう、なぜならそれが「平和維持活動」に繋がるという大義名分だからだ。正直、そんなことやりたくないし、まず戦いたくないのが現状だ。正直泣きたくなる。
そんなことを考えていると空から轟音がして我に返る、生まれて初めて白虎を・・・生物兵器を見ることになる。白虎はやがて夕方の太陽をかすめやがて、反射しなくなり全体が分かるようになた。みたところ10機ぐらいなのが確認できたが、それを確認したと同時に悪寒が走った。その見た目は全裸で毛がない真っ白な体。首と腕がなく腕は代わりに羽になっていた。その翼はとても鳥の翼ににていてふもふしていそうだった。だが、その全体を見るからには、「羽にうずくまっていいすか?」ときやすくいえそうにない。
我に返った自分は急ぎ手旗信号で着陸させるよう誘導した。そうすると白虎は、空中で規律正しく縦一列になり垂直にヘリポートに着陸した。と、途端に白虎が、
「陸上自衛隊第14旅団第50普通科連隊連隊付属[クローン特務戦闘科]の[第三白虎隊]です。ラオスPKO活動に参加し、自衛隊のゲリラ牽制を、援助せよと言われ派遣されました。よろしくお願いします」
活きよい良くクローンに言われ頭が混乱した。何?顔もないのにどこから声が?だがよく見たら一番前の奴だけ銀髪の生えた頭があり顔もありて戦闘服も着ていた。腕も生えていて羽は背中にある奴がいた。
「あぁよろしく・・・第十四旅団第50連隊と言うと、四国防衛の連隊か、良く飛んできたな」
「はい!ひとっ飛びなので大丈夫です!」
「そうか・・とりあえず基地司令に報告しに行くぞ。」
「あの、こんな時にすみません、初めてこの基地であった人なので記念って言ったら変ですが名前教えてくれませんか?」
「何でそんなことを?必要ないから良いよ」
それに、正直こいつ等とは余り関わりたくない。兵器としゃべってる感覚は新鮮だが、同時に恐怖もあるからだ。それを強調するように奴は鉄のような堅い手で握手を求めてきた。
「そうですか・・分かりました私は神平聡子[さとね]
と言います以後よろしくお願いします」
「おぉ、兵器にも名前があるんだな・・・言い名前だしたいせつにしなよ」
「・・・!、初めて言われましたありがとうございます!以後大切にします!」
そういうと純粋な笑顔を向けてくる、それを見てると人間そっくりだ。それから俺は、この聡子をつれ、基地指令に報告し、兵舎で寝ることにした。
翌日 、自分はひたすら緊張と焦りにあった。なぜなら今日はゲリラに鎮圧作戦をするのだからだ。PKOの中にはこれが含まれており基地防衛のためにやるそうだ。小隊ごとに区切って基地内で並んでいるのだが周りの人間は皆殺気だっていた。その中にいる自分はとても不満に思いながらそこにいた。何故建設隊が銃を持って戦わなければならない?それだけがかなり不満だった。だがそれを上官に言うとかなり淡泊な返答が帰ってくる。
「兵員不足」
なるほどなんてわかりやすい。よけい怒りに換算されるだけだ。
「三浦しっかり装備確認しました?」
そこには肌荒れや切り傷のない顔にロングヘアーの女が居た。
「気分悪くないですか?」
「・・・かなり最悪です核[さね]陸曹長」
「そうですか・・・」
そういうとこちらに支給品のチョコを差し出された。
「さぁ、食べなさい」
「大丈夫です。今直りました。」
子供扱いされた気がして回避した。
「いやそれはないでしょうが・・・無理しなくて良いんですよ?」
急に心配そうに顔を近づけ首を少しかしげてこちらの状態を探ろうとしている。
「いや無理でしょ実際」
「いいえ、基地の防衛として残ることができるよ?いく?」
子供に話すように話しかけてくるこの人は自分の上官であり自分の建設隊のなかの小隊長だ。
「いいえ大丈夫なので行きます」
「そう、まぁ今回は掃討するとか、言ってるけど実際は威嚇が出来ればいいから大丈夫ですしね、それに白虎も援護するっていってたし」
そういうと小隊長は自分の武器を確認し列に戻る。
ラオスの熱風が吹く午前3時作戦が開始した。今回の作戦は鎮圧ではなく威嚇が目的だ。だから敵を撤退させればいい。そこで、大きく四つの部隊に分かれ攻撃する。まずは今回が初めての戦闘になる白虎だ、まず川沿いにあるゲリラの基地を上空から奇襲し混乱させる。白虎はピンポイント爆撃、、、というよりは攻撃
が可能なそうなのでそれを使いゲリラを基地から離れさせる。そしたら残りの三部隊がゲリラ戦をすると言う何とも簡易的な作戦だ。しかしゲリラにゲリラ戦法など聞くんだろうか?