マドラスの森・2
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一通り話を聞き終えたディアナたち一行は、声を合わせてお礼を言い、村長の家を後にした。
「さ、じゃ、行こうか、薬草採取」
「その前に食堂に頼んでたお弁当取ってこようよ。行こう、ロック君」
「え? ああ、うん」
「ブレイドくんとディアナは、村門のとこで待っててよ。 取ってきたら行くから」
「う、うん」
サラが強引にロックをひっぱっていく。
「なんか、サラ。最近すごくロックに構うよね」
「……」
ブレイドに向けて放った言葉だったが、返事は返ってこなかった。見上げると、何か考えているように一点を見詰めてる。
「どうしたの?」
「え? ああ」
「ぼーっとしてる」
見上げると、ブレイドは少し困ったような顔をした。
「母さんさ」
「え?」
「マドラスの森に行くって言った時、すげー慌ててたじゃんか」
「ああ、そう……だね」
確かに、あの時のセリカはいつもとは違っていた。焦っていた……と言うよりは怯えていたといった方がいいかも知れない。
「あの森にはいい思い出がないって親父は言ってたけど、なんか随分……大事にされてたように見えるんだよな。あの村長の話聞いてたら」
「そう言えば、そうだね」
おばさんの事を話していた時の村長の目は、優しそうで、まるで本当の子供の事を話してるような顔だった。
「母さんが、あんなに慌ててたのは、やっぱり……」
「え?」
「いや、考えても仕方ないな。行くか」
「うん」
森の空気を含んだ、生暖かい風が吹いた。まとわりつくようなその空気を振り払うように、ブレイドが腕を振った。
森の中に入ると、空気が少し湿っていた。
季節は秋。暑いと感じる程の気温では無いのに、なんとなく肌がじとっとする。ブレイドは、すでに額に汗をにじませていた。
アイクや村長から話を聞いていたおかげで、薬草が群生する場所はすぐに見つかった。手分けして丁寧に掘り起こしていると、小さな魔物たちがキーキー言いながらやってくる。
「こいつらやっつけちゃっていいのかぁ」
ブレイドが、剣を振りながら威嚇する。
「いいけど、……こう数が多く来るんじゃキリないよねぇ」
同じく剣を手に取ってディアナが答えた。
「そうだね。僕がしばらく詠って眠らせとくから、その間に皆で掘ってよ。ちゃんと根まで掘り起こしてよね」
ロックが、言うが早いか《眠りの唄》を詠唱し始めた。
「そりゃいいんだけど、……その唄、俺も眠くなんだよな」
「ブレイドくん、それだめよう。しっかりして!」
サラがサザリの花を丁寧に掘り起こしながら言った。ロックが詠う《眠りの唄》は通常魔物にしか効かないはずなのに、それが効いてくるなんてどれだけ野生化しているのか。
「サラ、上手ね」
ディアナが覗き込むと、サラは嬉しそうに笑った。
「さっきの、村長さんの話を聞いたら、ちょっと薬草に興味でちゃって。学園に戻ったら色々調べてみようかなぁ」
「それにしても、ただ森の中にいりゃ魔物も手を出してこないのに、薬草を取ろうとすると、途端にかみついてくるな」
ブレイドが頭を振りながら言う。どうやら本当に眠たくなっているようだ。
「魔物にとっても必要なものなんだろうね。もしかしたら食料の一つなのかも知れないし」
「そうだよね。住んでもいない人間がさ、勝手に入ってきて取ってくんだもんね。そう考えると、人間って傲慢かもね」
サラが、立ち上がって次の薬草を探し始めた。
「ねぇ、これが夜光草かな」
今いるポイントよりさらに奥に行ったところに、白い花が群生している。
「ああ、そうかな。村長さんが言ってた特徴とそっくりだし……」
ディアナが覗き込んだ時、自分たちがきた方角とは別の方から甲高い声がした。
「そうだよ。これが夜光草」
驚いて顔をあげると、木の影から金髪の小さな頭が見える。
「……あなた」
「また会ったね、お姉ちゃん」
その少年、レオはこれまでとは対照的に好意的な笑みをのぞかせた。




