第二話
「なぁ俺らはその水の里に向かってたんだよな?道も分かってたんだよな?」
と、俺の傍らにいる変な死神モドキに聞くと
「はい、そのはずだったんだけど・・・」
妙に歯切れ悪く答える死神モドキに向かって俺はありったけの殺意をこめて、
「じゃあ、どうして迷ってるんだよーーーーー!!!!!!!」
と、叫んだ。そう、俺らはなんやかんやで、森で道に迷ってしまったのです。
「何してくれとるんじゃーーーー!!!てめー、こっちの世界の人間なんじゃないのかよ!」
「ええ、そうですが何か?」
「あ、てめー開き直りやがったな!どうしてくれるんだよ!異世界で遭難して死ぬのはいやだぞ!」
「まぁまぁ、、大声出すと消耗が早いよ」
「何悟ったような顔してんだよ!元はといえばお前のせいだろ」
そう、俺がこの世界に叩き込まれたときに下りた場所からこいつが案内すると言うから付いてきてみればなぜか森の中で迷ってしまったのだ。
「いやー、そういえば僕極度の方向音痴だったんだよねー」
「そういうことはもっと早く言えよ!」
俺は、怒鳴りながらとにかく、この森から出る方法を必死に考えていた。すると、死神モドキが、
「それより、ここの森は気をつけたほうがいいよー。魔物が出るから」
なんてことを、のたまった。
「ぶっ!そういうことは早く言えよ!襲われたらどうするんだよ!」
「大丈夫大丈夫、ここの魔物はあんまり人を襲わないから。それに、いざとなったら英雄に倒してもらえばいいし」
最後の方は聞こえるか聞こえないかの声だったので、あまり分からなかったが、なぜか俺はこいつを殴りたくなった。
「あまり襲わないんなら大丈夫か」
「そうですよ。まあとりあえずご飯にでもしましょう」
死神モドキがそんなことを言いつつ荷物をゴソゴソとあさっていると、近くの茂みからガサガサっとなにやらいやな予感しかしない音が聞こえてきました。
「お、おい。なんか聞こえなかったか?」
「え?」
どうも、死神モドキは荷物を探っている音のせいで聞いていなかったらしい。
「い、いや。そこの茂みから何か音がしたから・・・」
と、俺が言うと死神モドキが、なにやら引きつった笑いを浮かべながら、
「ははは・・・、変な冗談はやめてくださいよ」
と、言っていると、茂みから、よくゲームで出てくるゴブリンみたいな生物が出てきた。
「・・・ぎゃーーーーーー!!!!」
俺たちは同時に叫んで脱兎のごとく逃げた。しかし、そのゴブリンのような生物が追ってきた。その走る速度がはやいはやい、100メートル何秒で走るんだよってぐらい早く、俺達はたちまち、追いつかれそうになった。
「ここの魔物は人を襲わないんじゃなかったのか!?」
「そのはずだったんですけどね」
俺は走りながら一つのいい作戦を思いついた。それは・・・この死神モドキを犠牲にして1人だけ逃げるという血も涙もない極悪非道の作戦だった。
「おらー!てめー俺を逃がす為に犠牲になりやがれ!」
と、俺は言いながら死神モドキに足払いを掛けようとした。しかし、どうも、相手も同じことを考えていたらしく向こうも足払いを、俺に掛けてきていた。結果的に、どちらも転ぶことになってしまった。
「てめー、何やってくれてんだよ!」
「そっちこそなにやってんだよ!」
と、俺たちはゴブリンもどきほったらかしで、取っ組み合いを始めた。それを終わらしたのはゴブリンもどきの咆哮だった。
「ぎゃーーー!しまったーー!」
と、いまさらな感じの後悔をしつつ、俺は死神モドキに、
「おい!何か武器は無いのかよ!」
と、聞いてみた。すると、
「剣なら1本ありますよ」
という死神モドキにの手に、剣が握られていた。俺はそれをひったくるような勢いで受け取り、ゴブリンモドキに、突っ込んでいった。初めて剣に触れてみて、ゲームとは違うリアルな感触を体感しながら、それを振りかぶった。もちろん俺は剣など握ったことは無いので不恰好な構えだった。
「えーい!」
と、叫びながら振り下ろした剣は当然外れて、俺は剣の重量に振り回されるように前のめりになった。そこに、ゴブリンモドキからの攻撃が来た。
「うわわわわ」
情けない声を上げながら必死に俺はよけようとしたが、状況が状況だけに避けれなかった。思わず目を瞑りそうになった視界の端から火の玉が飛んできてゴブリンモドキを吹っ飛ばした。その火の玉が飛んできた方向に目を向けると死神モドキが杖を握って立っていた。
「今です。早くあれを斬っちゃってください!」
俺はその言葉で我に返り言うとおりに、ゴブリンモドキに止めを刺そうと近ずき、その、ゴブリンモドキを近くで見て、俺は愕然とした。これも一応生き物なのだという意識が俺の胸のうちに芽生えてしまったからだ。俺は振り下ろそうとした剣を振り下ろせずにいた。そのとき、死神モドキが、
「早くしてください!そいつが、仲間を呼んでしまいますよ!」
と、言い終わらないうちに、ゴブリンモドキが、咆哮した。その声に反応するように、周囲の茂みから次々とゴブリンモドキが出現した。俺と、死神モドキは目を合わせた、その後に、どちらもが同じ方向に逃げ出した。
「おい、こら!お前は逆に逃げろよ!」
「そういう英雄様こそ逆に逃げてくださいよ!そもそも早くとどめを刺せば良かったんですよ!」
「出来るわけ無いだろ!」
などと言い合いながら逃げているといつの間にか森の出口についていた。
「ココから森の外にいけるのか?」
「はいそうです。早く出ないと追いつかれますよ」
と、死神モドキが言うので、出ようとすると、その出口がゴブリンモドキに封鎖されてしまった。
「くそー。後ちょっとだったのに!」
そういう俺に向かって、ゴブリンモドキ達が襲い掛かってきた。俺は必死に逃げ回ったが剣を使うことは出来なかった。なぜなら俺はさっきの一件で殺すことを怖いと思ってしまったからだ。そのせいで、俺は剣を触れずただ逃げ回ることしか出来なかった。そのとき、背後からいきなり、ゴブリンモドキが襲い掛かってきた。俺は反応できず、目を見開くことしか出来なかった。だが、そのとき、いきなり死神モドキが、俺と、ゴブリンモドキの間に割り込んできた。当然俺に当たるはずだった攻撃が、死神モドキにあたって、その小さい体を吹き飛ばした。そのとき、俺の中で何かがぶち切れた。
「てめーら。なにしてくれとんじゃー!」
俺は殺す恐怖を怒りで押し流しゴブリンの群れに突っ込んでいった。それから後はとにかく無我夢中で剣を振り、いつの間にかゴブリンの姿はなくなっていた。俺は急いで死神モドキに駆け寄り、ゆすってみた。
「おい、大丈夫か?」
しかし、返事は返ってこず、沈黙がつづいた。
さてこれからどうなる