その5
「で、この状況に関して言い訳はあるのかね?」
「あるし」
「言ってみろ」
「ないし」
「どっちだよ!」
高い空が気持ち良い、秋の朝。ぐっすり寝ていた俺を珍しく一人で起こしに来たつぐみ。一緒に下へ行くと台所から妙な匂いがし、行ってみるとそこは大魔境だった
「ふみ朝からうるさい。低血圧?」
「今日から高血圧になりそうだよ!」
台所は料理の残骸らしきもので、ぐじゃぐじゃに汚れていた。まるで飢えた猪か何かが暴れ回ったかの様
「ふみに朝ごはん作ってあげたかったから……」
「え!? そ、そうか」
なら仕方ない……かな
「ないし」
「なんなんだよ!」
朝から不毛すぎる会話をし、不毛な片付け。卵やケチャップはまだ分かるが、なんでクリームやミカンの皮まで散乱してるんだ?
「ミカンは愛媛産推奨」
「お前が食っただけか!」
結局、片付けだけで朝の貴重な時間は潰れてしまい、登校の時間となる
「後は帰ってからだな。ところでめぐみは?」
「不毛な朝練」
「不毛言うな」
しかし朝練か……ん?
「めぐみは文科系の部活だったよな?」
「民俗学研究部。楽そうだから入ったけど、意外と忙しくて凹み中」
「馬鹿だなぁ。俺みたいに自然科学観察部に入れば良かったのに」
毎日の天気と気温を記録していれば、それで良い
「どっちも微妙。時代はヨット部」
「ヨット部?」
そんなものあったか?
「ヨットが無いから、予算貯まるまで休部中。ちなみにヨット買うには後五年必要」
「マジで!?」
そんな部活があったとは……盲点だった
「ふみ。早く準備しないとバスに乗り遅れ」
「あ、そうだ。ごめんごめん。直ぐ準備するからテレビでも見てな」
「らじゃ」
急いで洗面所へ行き、顔を洗って部屋に戻る。昨日めぐみがアイロンかけしてくれたシャツと制服に袖を通し、髪に軽く櫛を入れたら、いざ出発だ
「お待たせ、つぐみ」
「うん」
つぐみは居間で煎餅をポリポリ食べながら、机に頬杖ついてテレビを見ていた。普段よりも遥かにくつろいでいる
「ってこら! くつろいでないで、さっさと行くぞ!」
「ふみは理不尽」
「良いから行くぞ!」
「らじゃ」
家を出て、つぐみが鍵を閉める。そこからバス停まで早歩き
「ギリギリな所だな」
「間に合わなかったら、めぐみに怒られる」
「ああ。うるさいからなあいつ」
「ふみのせいって言う」
「ああ……って、お前のせいだろ!」
「ふみ鬼畜。いじめっ子」
「むしろ、いじめられっ子だろ俺は……」
自慢出来る事じゃないが俺は、こいつら姉妹に昔から振り回されて来た。そして、きっと今後も振り回され続けるだろう
「ふみ。バス」
「え? あ! は、走るぞつぐみ!!」
「うん」
俺達三人は、ずっと一緒だったから。多分、これからもずっと一緒だから
「ま……仕方ないよな」
諦めの溜息をつきながら、俺達をあっさり追い抜いて行ったバスを追いかける。なんかもう間に合わない気がするけどさ




