5.追放
クラスメイトたちは次々と水晶に手を翳し、王女の祝福を受けていく。佐藤委員長に続いて、体育会系の田中が「うおお、剣術スキルだってよ!」と叫び、女子の半分が魔法系のチートを引いて大騒ぎ。興奮の渦の中で、誰も「従属」という異様な状態に気づいていない。ステータス画面をチラ見した他の生徒たちも、平均的な凡庸さ――俺の数値とは雲泥の差だと思いながら、修は順番が近づくのを冷ややかに見つめていた。
(このままじゃまずい。回避方法を考えねえと……)
修の脳裏に閃いたのは、水晶の仕組みを逆手に取るアイデア。鑑定スキルでステータスが見えるなら、逆に「見せたくない情報を隠す」こともできるんじゃないか。試しに心の中で「ステータス偽装」と呟いてみる――すると、視界にぼんやりした警告が浮かぶ。「スキル:隠蔽(自動発動可能)」。おっと、チート装備のオマケ機能か。
順番が最後、クラス全員の鑑定が終わり、修だけが残った。騎士に促され、水晶に手を翳す。周囲の視線が集まる中、意図的に「低ステータスモード」をオン。映し出されたのは、惨めな数字ばかり。
オキヤマ・シュウ (17)
人族 Lv.1
体力 10
魔力 5
力 15
素早さ 20
知力 30
スキル:なし
「な、なんだこのザコは……」誰かが失笑を漏らす。王女アリシアの眉がわずかに動き、優雅な微笑が一瞬凍りつく。クラスメイトたちはすでに従属済み――彼女の本性が、表面下でちらりと牙を覗かせる。
「ステータスが低いようですね。みなさんと並ぶまでは、特別特訓をおこなってもらい、成長後に祝福を授けましょう」
穏やかな声でそう告げながら、王女の瞳には冷徹な嘲りが宿っていた。(本当は大樹海送りで魔物の餌よ)――心の声が聞こえるわけもないが、修にはその本意が透けて見えた。王の頷きで騎士たちが動き、クラスメイトたちは「修、がんばれよ!」「特訓で強くなって戻ってこい!」と無邪気にエールを送る。従属の呪縛が、彼らの疑念を完全に封じていた。
騎士に引きずられ広間の奥へ。地下牢で鎖をかけられ、血生臭い死刑囚用の転移魔方陣に放り込まれる。世界が歪み、吐き気を催す浮遊感の果てに――目を開けると、そこは森の中だった。
陽光を遮る巨木の天蓋、霧に濡れた苔むした地面。遠くで魔物の咆哮が響き、湿った空気が肌を刺す。修は土を払い、隠蔽を解除して本来のチートステータスを確認した。
(これで俺だけ自由だ。奴らの偽善、必ず暴いてやる)
大樹海の闇の中で、まずは生き延びる術を探りながら、復讐の計画を練り始めた。




