4.従属
王女――自らをエステリア王国の第一王女、アリシアと名乗った美女の言葉は、周囲の混乱をよそに淀みなく進んでいった。クラスメイトたちの悲鳴や疑問の声が飛び交う中、騎士たちが静かに整列し、広間の空気を引き締める。
「さて、勇者様方。一人ひとりの力を確認させていただきます。この『鑑識水晶』に手を触れるだけで、ステータスが映し出されます。これが、この世界で唯一の確認方法でございます」
アリシア王女は、絨毯の中央に据えられた巨大な水晶球を指し示した。青白く輝くその表面は、まるで生きているかのように脈打っている。王の隣で頷きながら、彼女は優雅に微笑んだ。
「さらに、私が聖女としての祝福を授けます。この祝福により、異世界人様特有の強大なステータスとスキルが顕現いたします。どうか、ご安心を」
修は内心で舌打ちした。(怪しい……俺は念じるだけでステータスが見えた。祝福なんかなくてもスキルは最初からあったぞ)
その疑念を確かめるべく、修はそっとスキルを発動させる。「鑑定」。視界に、委員長の佐藤開の情報が浮かび上がった。祝福前だ。
佐藤 開 (17)
人族 Lv.1
体力 50
魔力 30
力 80
素早さ 30
知力 80
スキル:火属性魔法
(あれ、だいぶ俺とは差が……俺だけチートか?)
佐藤は水晶に手を翳し、平凡なステータスが映し出されるのを確認したのも束の間、王女が掌を翳して祝福の光を放った。柔らかな金色の輝きが彼を包み、手の甲に複雑な紋章のような跡が浮かび上がる。周囲から「おお!」と感嘆の声が漏れた。
修は即座に再鑑定をかける。
佐藤 開 (17)
人族 Lv.1
体力 50
魔力 30
力 80
素早さ 30
知力 80
スキル:火属性魔法
状態:従属
(従属って……何だよ、それ)
修の視線が鋭くなる。王女の祝福は、ステータスを強化するどころか、何らかの支配を植え付けているのではないか。クラスメイトたちが次々と水晶に手を伸ばし、祝福を受けていく中、修は自分の手を決して出さず、静かに次の展開を見守った。




